BREIMENとKroiが3年ぶりに共演 リス
ペクトを示し合った『HIGH FIVE 202
3』東京公演のオフィシャルレポート
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2023年2月23日(木・祝)にZepp DiverCityにて『HIGH FIVE 2023』東京公演が開催された。本記事では、ヘッドライナーをBREIMENが務め、ゲストとしてKroiが登場した東京公演のオフィシャルレポートをお届けする。

2組のバンドストーリーの続きが紡がれた。2月23日(木・祝)、Zepp DiverCityにて開催された『HIGH FIVE 2023』東京公演のこと。『HIGH FIVE 2023』とは全国5会場のZeppにて、次世代を担うアーティストたちがヘッドライナーに立ち、彼らが今一番共演したいアーティストをスペシャルゲストに迎えて開催される音楽イベント。この日はヘッドライナーをBREIMENが務め、ゲストとしてKroiが登場した。
BREIMENとKroiの対バンは2020年以来、約3年ぶり。前回は『BREIMEN✕DinoJr.✕Kroi〜TOHANMEI TOUR〜』と題したツアーを行い、東京は収容人数160人程度の六本木VARIT.にて開催。それが今日は2,000人以上を収容するZepp DiverCityだ。両者ともバンド活動のギアを上げたいタイミングでコロナ禍に突入したにもかかわらず、困難をしっかりと乗り越えて、自分たちの音楽に多くの人を巻き込んできたことを証明し祝福する夜となった。
両者の関係性を紹介すると、そもそもKroiの内田怜央(Vo,Gt)は高校生の頃からBREIMENの前身バンド「無礼メン」のファンだったという。この日のMCで内田が話していた通り、ライブハウス・渋谷LUSHにてBREIMENの高木祥太(Vo,Ba)がKroiに声をかけたところから交流がスタート。両者ともにロック、ファンク、ジャズ、ソウル、ヒップホップなど、実にさまざまなジャンル・年代の音楽を掘り起こし、音楽史に愛とリスペクトを示しながら今の時代に自分たちだからこそ生み出すことのできる音楽を探求し続けている。不必要な欲や傲慢さなどは一切捨てて、ただただ音楽に誠実に、音の中で遊びながら実現することこそが彼らに共通するスタンス。
Kroi
この日最初に登場したのはKroi。「ついにきたね、このときが!」と内田が叫び、「Drippin’ Desert」からスタート。矢継ぎ早のラップ、こぶしを効かせたシャウト、長谷部悠生(Gt)と千葉大樹(Pf)のコーラスとともに繰り返すサビの聴き心地いい歌など、1曲の中で内田のボーカリゼーションの多さを見せつける。真っ赤に染まったステージの中で投げかけた《Keepしてるだけ no-no/変容変化だけ no-no》というフレーズは、まさにルーツに根ざしながら変化し続けるKroiのスタンスを提示するよう。そこから「今日は素の感じのKroiでライブができそうです」とこの日の特別感を語って「Pixie」へ。アウトロでは長谷部がステージ前方へ飛び出し、頭を振り、歯ギターも披露し、ジミ・ヘンドリックスばりのスターギタリストプレイで魅せる。
Kroi
MCで、3年前のBREIMENとの対バンツアーに来ていた人に挙手を促すと、ちらほらと手が挙がる。西部劇ファンクがテーマの「Funky GUNSLINGER」、大幅にアレンジしたライブバージョンの「a force」、初期曲「Monster Play」と、益田英知(Dr)のタイトなビートに関将典(Ba)の深みあるベースが絡まり、千葉の冷静と情熱を兼ね備えた鍵盤が乗っかって、その上で長谷部と内田がキッズのように自由に暴れる。そうして5人から繰り広げられる音楽は、曲ごとに、もっといえば1曲の中から、往年のさまざまなバンドやプレイヤーたちの魂が次々と浮かび上がってくる。
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それまで全員主役のプレイをかまし、勢いのいい音で空間を埋め尽くしていたが、次は間を操ることで生まれるグルーヴを堪能させてくれる「Never Ending Story」。そこから内田がボンゴを叩きながら歌う「Juden」へと流れるのだから、スリリングな緩急に気持ちよく振り回されてしまう。そして《止めなきゃ日々confusion》などのフレーズが楽しく身体に入りながらもチクリと心の隅っこを刺す。Kroiの歌は洋楽のような歌い回しに日本語詞を乗せているが、その言葉たちにはごく個人的なことから世の中の状況までを想像させる大きな懐がある。
Kroi
関のベースラインから始まるジャムセッションで「Page」へ繋ぎ、「みんなBREIMEN大好きでしょ? BREIMEN大好きー!」と内田がシャウトし「Fire Brain」へ。初期の反骨精神を今も忘れていないことを示すステージング。そして最後、緑に染まったステージでプレイしたのは「Shincha」。サビで《おい お茶》と歌う一曲だ。遊び心満載な曲なのにグッドミュージックに聴こえてくるのはなぜか。いや、遊び心があるからこそ、グッドミュージックが生まれるのだ。
Kroi
「Shincha」の中で内田は、BREIMENへのリスペクトとこの日の喜びを語った――「大好きなバンドとこんなに大きな会場でライブができることが本当にめちゃくちゃ嬉しいです。絶対にデカいところでライブしようなという話を3年前にして、ここまでやってきました。とりあえずZepp、2組でできました。表現とは何か。より面白い音楽をみなさまに届けられたらいいなと思って日々鍛錬、研究を重ねております。それを同世代でやっているバンドはやはりBREIMENちゃんじゃないでしょうか」。そして、《名古屋のライブのあと みんなで入った温泉 あのとき語り合った また一緒に踊ろうと》と歌ったあと5人で壮大に音を広げて、Kroiのステージを締めくくった。
Kroi
そしてBREIMENへバトンタッチ。セッティングが終わると、「じゃあいこうか」「っしゃ!」と気合いを入れてから、サウンドチェック代わりにKroi「HORN」をBREIMENアレンジでセッション。これが相当かっこよく、会場全体がざわつく。そして「MUSICA」へ。《奏でていれば 歌っていれば/また会えるかな》という歌はこの日のテーマソングのように聴こえてきたし、《世は損得 忖度 刹那 切ない 節操ないから/響き合っただけの関係 讃えたいな》はソングライターの高木をはじめBREIMENの5人がそういった生き方を大切にしているからこそ、こんな夜を迎えることができるのだと表していた。そしてオーディエンスのクラップに5人の音を緻密に編み込んで、「あんたがたどこさ」を披露。《あいつらはKroi》《俺たちはBREIMEN》と歌詞を変更して歌うシーンも。サトウカツシロ(Gt)のソロパートでは、みんな「あの音」を聴きたいところを焦らしに焦らして、1分半以上のカツシロショータイムを繰り広げる。Kroiの長谷部に続けて、ギターをガンガンに浴びられる至福の一時だ。
BREIMEN
そして「ODORANAI」を、ルイス・コール「F it up」をマッシュアップしたアレンジで演奏。ここでも《Kroiが好きなのさ》と言葉を変えて歌う。「D・T・F」ではうねるグルーヴでオーディエンスを深いところにまで連れ込んでいく。ライブから音楽の歴史が見えること、そして、本来相容れないとされるものが混ぜ合わさったときの魅力を発明することが、2組に共通する美学だ。
BREIMEN

BREIMEN

「D・T・F」を歌い終えると、もう1本マイクスタンドがステージに設置される。「Kroiはマブダチですね。もう一人マブダチがいて、そいつは今日絶対にいなきゃいけなくて」と、サプライズゲストとしてDinoJr.を呼び込む。「俺もまぜてよ!」「みんなで一緒に遊ぼうぜ!」という掛け合いから「Black or White」へ。曲の途中で会場全体がまたニヤリとさせられたのは、Kroi「Network」を挟んできたから。「BREIMEN、Kroi、そしてここにいるお客さん、覚えていてください。俺もまたでっかくなって戻ってくるので、そのときはまた一緒にやってくれ。いつもありがとう、BREIMEN!」「こちらこそ!」と、3組がそれぞれを高め合う関係にあることが見える会話を交わして、DinoJr.を送り出した。
BREIMEN
そしてまたしても今日限りのスペシャルな演奏が。「赤裸々」を、Kroiに合わせたソウルフルバージョンで演奏。どうやら準備していたものではなく、その場の即興で繰り広げられている様子。ステージ上の高木の指示で変わっていく生演奏を堪能できるのは、音の中で阿吽の呼吸ができるBREIMENのライブの醍醐味だ。高木の「Zeppで一番小さく」という指示で、いけだゆうた(Key,Cho)がマイクから離れてコーラスを歌う姿も微笑ましい。そしてSo Kanno(Dr)のビートで繋いで「チャプター」へ。ジョージ林(Sax)のソロパートでは、ステージ前方に堂々と立ち、心の奥底にあるものを引っ張りだして葬ってくれるようなサックスを吹き上げた。
BREIMEN
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BREIMENが最後に演奏したのは「Play time isn’ t over」。コロナ禍であらゆるものが奪われたり束縛されたりした中で、能動的に遊び続けることの指針と想いを込めた楽曲。冒頭で書いた通り、BREIMENもKroiもコロナ禍というネガティブな状況に負けず、3年の間にこうして輪を広げることができたのは、両者ともに音楽の中で「遊び」続けてきたから。仲間とともにゲラゲラ笑い合って、時間を忘れるほど無我夢中になる中で、音楽の腕を磨き、楽しそうな輪に引き寄せられた私たちがまだ知らない音を生み出し続けてきた。
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ライブの途中で高木は「この日のライブを観たことが誇れるようになるかもしれない。マディソン・スクエア・ガーデンとかでやるようになったら」と冗談交じりで語った。『HIGH FIVE 2023』で描かれたBREIMENとKroiのバンドストーリーには、まだ続きがあるようだ。この先も見届けたいと思わせられる、両者の豊かな音楽と心が響き合った夜だった。

Text by 矢島由佳子 Photo by 新保勇樹

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