KEYTALK 7年半の時を経て互いの成長
と無事を確かめあい、新しいファンも
合流してお祭り騒ぎに興じた武道館ラ
イブ

KEYTALKの武道館で舞踏会~shall we dance?~2

2023.3.1 日本武道館
KEYTALKが7年半ぶりに日本武道館へ帰って来た。あの時はまだ初々しい新人バンドらしい面影があったが、メジャーデビュー10周年を迎えた今は貫禄さえうかがえる大人のロックバンドだ。7年半でバンドは成長したがファンも成長した。互いの成長と無事を確かめあい、新しいファンも合流してお祭り騒ぎに興じる一夜限りのパーティー。『KEYTALKの武道館で舞踏会~shall we dance?~2』はそんな場だ。
「新曲やります。『君とサマー』!」
盛大な拍手に迎えられて4人がステージに登場するやいなや、寺中友将(Vo,Gt)のタイトルコールに武道館がどよめく。1週間前に出たばかりの新曲を自信満々にぶつける4人を、ミラーボールとレーザービーム、大量のスモークがド派手に盛り上げる。「大脱走」「夜の蝶」と得意の超ハイテンションダンスロックを連発、そして絶対的キラーチューン「MATSURI BAYASHI」で早くも盛り上がりは頂点へ。小野武正(Gt,MC,Cho)が長い花道を駆け抜けてセンターステージで弾きまくる。4人が曲のブレイクで“動かない芸”を決めて爆笑を誘う。“祭りじゃ!”“ヨイヨイ!”の掛け声で武道館が揺れる。激しさ、楽しさ、ネタの多さ。KEYTALKのライブ魂の根底は昔も今も変わらない。
「1曲1曲噛みしめながら、終わってほしくない。でもみんなと楽しみたい。その気持ちが交差しながら、スペシャルな1日になるんじゃないかと思います。よろしくお願いします」(小野)
「fiction escape」から始まるセクションは、懐かしめの楽曲中心に、KEYTALKのポップで爽快な側面を大解放。首藤義勝(Vo,Ba)が「C.C.レモンを飲みたくなる曲をやろう」と言って「Cheers!」を歌い、「love me」では盛り上げ番長・武正がクラップを促して観客を一つにする。左ウィング、右ウィングにマイクを据えた散開フォーメーションで、義勝と寺中が「YURAMEKI SUMMER」を歌う。有無を言わせず強迫的だが心地よい、思わず体が動くダンスロックをやらせたらKEYTALKはやはり最強だ。
「これまでにいろいろな節目がありました。節目には常に曲が存在しました、それを何曲か聴いてもらいたいと思います」(首藤)
義勝の言葉から始まったセクションは、つまりKEYTALKの10年間の歩みをコンパクトにまとめたドキュメンタリー。2013年、メジャーデビューを飾った「コースター」。2015年、アニメ『ドラゴンボール超』エンディング曲として皆に愛された「スターリングスター」。そして2019年、レーベル移籍第一弾として世に出た「BUBBLE-GUM MAGIC」。4人の思いの籠った演奏はもちろん、3曲ぶちぬきでスクリーンに流れ続ける「10年間のヒストリー映像」が泣ける。若さから貫禄へ、やんちゃから円熟へ。撮影の裏側やライブ、楽屋でのふざけあいなど、笑える映像が多いところが逆にぐっとくる。そのあとに寺中が渾身の愛を込めて歌う「照れ隠し」が来る。この並びは反則級にエモーショナル。
「一回目の武道館の時にみんなに作ってもらった、忘れられない風景があります。勘のいい方は、お鞄とポケットをがさがさしてください」(首藤)
勘のいい人は武道館いっぱいにいた。7年半前、メンバーも知らないサプライズ演出で武道館を美しく染め上げたスマートフォンのライトが、同じ曲「バイバイアイミスユー」で再現される。あの時の光景がスクリーンに映る。泣き顔だったメンバーも今日は笑顔だ。
「7年半前に武道館のステージに立った時に、自分は特別な人間になれたんじゃないかと思いました。でも7年半経って、いろんな出会いがあったり、打ちのめされることもあったりする中で、自分は普通の人間だと思うようになりました。幼い時にギターを持って歌い始めた、あの時のままだなと思うようになりました」(寺中)
普通な自分だからこそ書ける歌がある――。一人でセンターステージに立った寺中が、感動的なMCと共に歌ったのは新曲「未来の音」だ。彼のルーツであるフォークソングやJ-POPの、優しさと人懐こさをたっぷりとたたえた曲。「バイバイアイミスユー」と「未来の音」の2曲がもたらしたエモーション。それはKEYTALKの過去と未来とを繋ぐ素晴らしいジャンクション。
「黄昏シンフォニー」「桜花爛漫」と、懐かしめのシングル曲から「Monday Traveler」へ。ポップな曲調に合わせて手振りとダンスで盛り上がれば、ライブは終盤だ。八木優樹(Dr,Cho)が「まだまだ行けますか!」と煽る。武正が結成当初のエピソードを振り返る、その声が感慨で上ずってる。コール&レスポンスではなく“ひとりごとの言い合い”で、“ペーイ!”の掛け声も久々に聴けた。ラストスパートの準備はOKだ。
「もうひと盛り上がりしたいんだけど、行けるよな? ここからは踊るとかじゃなくて、暴れていこうぜ」(小野)
武正に言われるまでもなく、「太陽系リフレイン」から始まるキラーチューン祭りで暴れないわけにはいかない。「DROP2」から「夕映えの街、今」へ、古い曲も新しい曲もない。照明、レーザー、スクリーン、そして燃え上がる炎、スモークと、スペシャルな演出全部乗せ。八木がリズムの手綱をしっかり握り、フロント3人はアスリートのようにステージを駆け抜ける。ラストチューン「MONSTER DANCE」までアクセル踏みっぱなし、これがKEYTALKが誇る無礼講ダンスタイム。
アンコールでは嬉しい4つの告知があった。新曲「未来の音」、このあと21時配信開始。3月15日、さらなる新曲「狂騒パラノーマル」配信開始。夏、8枚目のフルアルバムリリース。そして全国ツアー開始。「いいアルバム作ります。楽しいツアーにします」、寺中が力強く宣言する。「shall we dance?」「Summer Venus」、そして「アワーワールド」のアンコール3曲での明るく爆発的な盛り上がりは、メジャーデビュー10周年を全速力で駆け抜ける4人とファンとの強い絆の証。
4体のカラフルな「KEYTALK MONSTER」たちと一緒に記念写真に収まる4人の笑顔。7年半の時を経て、互いの成長と無事を確かめあい、新しいファンも合流してお祭り騒ぎに興じる一夜限りのパーティー。『KEYTALKの武道館で舞踏会~shall we dance?~2』はそんな場だった。二度あることは三度ある? こんな楽しいパーティーなら何度でも。

取材・文=宮本英夫
撮影=後藤壮太郎、高田梓、木村泰之
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