「それはありえたかもしれない人生」
~愛希れいか主演、ミュージカル『マ
リー・キュリー』稽古場公開&合同取
材会レポート

ミュージカル『マリー・キュリー』が、2023年3月13日(月)天王洲 銀河劇場にてまもなく開演する。
ノーベル賞を女性として初受賞した科学者、キュリー夫人として知られたマリー・キュリーを主人公とした創作ミュージカル。
19世紀ヨーロッパ、まだまだ科学が男性のものだった時代、マリーは生まれ育ったポーランドから離れ、パリで科学者の道を歩き始める。『Fact(歴史的事実)✕Fiction(虚構)=ファクション・ミュージカル』として、史実に基づきつつも、新しい視点(虚構)を交えた「ありえたかもしれない」マリーの人生を描く作品だ。
演出は、ストレートプレイからミュージカルと様々なジャンルを手がける鈴木裕美。主役マリー・キュリーは、宝塚歌劇団を退団後も精力的に活動を続ける愛希れいか。マリーを支える夫ピエール・キュリーは『レ・ミゼラブル』『エリザベート』にも出演した上山竜治、愛希とは『エリザベート』に引き続いての共演である。また、マリーの親友であるアンヌには、清水くるみ。マリーの研究に投資をする謎めいた実業家ルーベン役は屋良朝幸が演じる。
いよいよ開幕を控えた『マリー・キュリー』。今回は稽古場を取材することができた。
第1場、まだ20代のマリー(愛希れいか)は、大学進学のためにパリに向かう汽車に乗る。
   撮影:平野祥恵

   撮影:平野祥恵
汽車に乗り込むも自分の席には知らない男たちがおり、マリーの荷物も奪われていた。マリーはポーランド人ということで異邦人、そして女性、マイノリティだ。そんなピンチを救ってくれたのは、同じくポーランド人のアンヌ(清水くるみ)。彼女は、マリーがフランスの名門「ソルボンヌ大学」に入学するときいて「天才なのね!」と驚く。マリーはアンヌに元素表を説明し、「発見した人間の名前で原子は呼ばれる」「ロシアに支配されたポーランドの女の名前も、そのまま残る」と声をはずませる。境遇が近いこともあり、ふたりは意気投合、ポーランドというひとつの世界から、それぞれ旅立つ、希望に満ちたシーンだ。マリーの手書きの原子表と、アンヌの地元の土を交換しあい、それぞれの人生を歩き始める。
   撮影:平野祥恵
続いては、第3場、投資家のルーベン(屋良朝幸)が集まった科学者たちの前で講演を行っている。画期的な発明がないかと、集まった科学者たちの論文を確認し、投資先を見極めている。

ルーベンが目をつけた論文、それはラジウムの存在を示唆したマリーの論文だった。まだ元素の特定には至っていないが「分析した結果」をルーベンにつきつけ、マリーは叫ぶ。

   撮影:平野祥恵

「私は誰かではなく、私が何をしたか見てください」
ルーベンはそれを聞き、マリーに可能性を見いだす。
   撮影:平野祥恵
最後に公開されたのは、第6場。マリーは、夫ピエール(上山竜治)と研究室で、研究に明け暮れる。ラジウムの新たな可能性——医療的な利用価値を確かめるため、ラットを使った実験を始める。
第1場ではまだ狭い世界を知らなかったマリーは、科学への情熱で自らその世界を変えていく。ルーベンの出資を取り付け、ラジウムとマリーはさらなるステージへ向かう。マリーとピエールはお互い出会ったときやプロポーズの思い出を語り合う。
   撮影:平野祥恵
   撮影:平野祥恵
マリーは語る「科学をやる理由は『私が何者であるか』関係ないから」と。夫婦でラジウムの研究に没頭しつつ、お互いへの愛と信頼が深くにじむデュエットを披露。マリーがパリに出てきてからの辛苦や、マイノリティとしての葛藤などを乗り越え、『ラジウム』という可能性に希望を見いだし、科学への情熱をさらに強くしていく姿を描かれた。
公開された場面はわずか、3場、3ナンバー。だが、韓国ミュージカルならではのメロディアスな音楽、そして、コミカルで華やかな場面転換を伴うダンスなどがぎゅっと詰まった魅力的な時間だった。
   撮影:平野祥恵
『キュリー夫人』として知られる公明な科学者ではなく、少女から女性に成長し、科学という生涯の夢を追いかけ続けた「マリー」の人生を描く作品であることを、印象つける稽古場公開となった。
ミュージカル『マリー・キュリー』オンライン稽古場公開&取材会ダイジェスト
稽古場公開後、合同取材会が代表質問形式で行われた。
ーーでは、登壇されたみなさまから、ひとことご挨拶をお願いいたします。
愛希:私自身、公開場稽古がはじめてだったんです。どういう風な気持ちで挑もうかなって、緊張していました。実際にやってみると普段の稽古とは違う発見があったので、新鮮な気持ちです。
   撮影:平野祥恵
屋良:マスクを外しての稽古は初めてでした、こんなに息がしやすいんだなぁ~って思いました(笑)。あと、(愛希と清水を見て)「こんなにかわいかったんだ~!」ってね、ご時世的にマスクを外すことがないので、表情が見えてよかったです。
上山:愛希さん演じるマリーと一緒に研究し、献身的に支える夫ピエール役を演じます、よろしくお願いします。……あとは、みなさんと同じ気持ちです(笑)。
清水:マスクなしで演じることが、本当に久々だったので「どうやって口を動かして演じていたっけ?!」と戸惑いました(笑)。みんなの表情を見ることができて、うれしかったです。
鈴木(演出):今日はこのあとに、2回目の通し稽古を予定しています。稽古では、ディスカッションをしながら、意見を交換しながら行っているんですね。今日こうやって、はじめてお互いの表情を見えている状態での稽古をすると、さらに理解が深まると思うので、楽しみにしています。
ーー役どころをお願いいたします。
愛希:私が演じるのは、伝記に出てくる、あの「キュリー夫人」です。この作品はファクション・ミュージカルなので、みんなが知っているマリーとは、+α、別の側面があって、とても人間らしくて共感する部分があるなぁと感じました。
屋良:演じるルーベンはとても異質な存在です。自分の目的のためにマリーを利用する面もあるんですが、お客様の目線でシーンを見ていたり、ある意味シーンを牛耳っていたり、いろんな角度から存在するルーベンがいるなぁと思っています。ファクション・ミュージカルを象徴する存在で、そういうダンスシーンもあるので楽しみです。
   撮影:平野祥恵
上山:ピエールは、私史上「一番優しい役」です! だって、今までは革命家だったり、テロリストだったりしたんですね(笑)。前回なんて、愛希さんを最後に暗殺する役(ミュージカル『エリザベート』ルキーニ役)だったので、今回の守る役は新鮮です。
清水:私はアンヌを演じます。アンヌはマリーの友人であり、影響を与える存在です。もしも、マリーがこんな女の子と出会っていたら……という架空の存在です。裕美さんの言葉を借りるなら『マリーが静』だったら、『アンヌが動』、みたいな。とても対比してるキャラクターです。
   撮影:平野祥恵
ーー稽古場の雰囲気はいかがですか?
上山:すっごく頭を使うよね(笑)。ずっとラムネを食べてるもん。
屋良:ずっと隣でラムネ食べてるから、影響されて食べ始めちゃった。『集中力が上がる』って書いてあって。
清水:よくお菓子の交換とかされてますよね、アメとかチョコとか。
鈴木:やっぱり難しいからね。単語とか科学用語だし、だから、疲れる気持ちはすごく分かる。
愛希:科学的な言葉で長台詞だったりするから、確かにすごく疲れるんですよ。みんなでお菓子を交換しながら、和気藹々としてます。
   撮影:平野祥恵
ーー日本初上演となります、日本版ならではのおすすめのシーン・見所などをお願いします。
清水:ミュージカルなんですけど、(演出の鈴木が)キャストに演劇的な理解を求めてくるなぁという印象があるんです。その解釈の仕方が、日本版ならではかな、と感じてます。
上山:群像劇のように、本当に一人ひとりが、すごく個性豊か。演じるのも、素晴らしいキャストの皆さんなんですね。これぞ! 鈴木裕美演出というような部分がたくさんあります。是非、2回見ていただきたいです1回目見て、2回目で見えるものがあるはずです。
   撮影:平野祥恵
鈴木:「事実」と「虚構」が織り混ざってある作品なんです。「事実」に、非常に大きな「虚構」を入れることによって、大きいなうねりを作り出してるなと感じています。韓国の演劇やミュージカルファンのみなさんが期待する音楽の素晴らしさのようなものも、この作品でもしっかりあります。感情がほとばしる、すごくエモーショナルなシーンを支える音楽がある。ミュージカルとして素晴らしいバランスです。
ーー最後に愛希さんから代表してメッセージをお願いします。
愛希:新作ではないんですけれど、日本では初演です。アイディアを出し合いながら、いちからみっちり話し合って作り上げています。テーマとして「科学者」、「ノーベル賞受賞者」とあると、とても難しく感じるかもしれないですが、とてもエネルギッシュな舞台です。「難しそうだな」なんて思わずに、ぜひ一度劇場に足を運んでご覧ください。私たちも劇場でお待ちしております。
   撮影:平野祥恵
ミュージカル『マリー・キュリー』は2023年3月13日(月)~3月26日(日)東京・天王洲 銀河劇場、その後、4月20日(木)~4月23日(日)大阪・梅田芸術劇場にて上演される。
取材・文=森 きいこ

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