「新作のような気持ちで挑みたい」~
崎山つばさ×佐藤寛太が語る『サンソ
ン―ルイ16世の首を刎ねた男―』への
意気込み

2021年、主演・稲垣吾郎✕演出・白井晃✕脚本・中島かずき✕音楽・三宅純のタッグで上演された『サンソン―ルイ16世の首を刎ねた男―』。フランス革命などが巻き起こった激動の時代において、処刑人の家系に生まれながら死刑廃止論者だったシャルル=アンリ・サンソンという実在の人物を描いた重厚な物語だ。今回は再演からの参加となり、サンソンの志しに惹かれていくトビアス・シュミットを演じる崎山つばさと、不慮の事故によって父親を殺めてしまうジャン=ルイ・ルシャールを演じる佐藤寛太の二人に話を聞いた。
■真逆のスタイルが新鮮だった
ーー舞台『怖い絵』で共演して以来、約1年ぶりの再会ですね。
佐藤:そうですね。『怖い絵』は去年の春先でしたっけ? 大阪城の桜が満開で、外で一緒にお弁当を食べました。
崎山:懐かしいね。
佐藤:楽屋も一緒でしたからね。楽しかったなあ。
ーー思い出話があれば教えてください。
佐藤:僕は本番前に全く準備しないんですよ。メイクが終わったらまた外に出るので、最初は「それで大丈夫!?」みたいな反応をされました。
崎山:すごく特殊な人種だと思いました(笑)。それはそれでいいと思うけど。新しいなって(笑)。
佐藤:楽屋では長机を半分ずつ使ってたんですけど、真ん中できれいに分かれてました。僕は脱いだ服をそのまま置いておくんですよ。着ていた状態で椅子にかけていくというか。あと赤なた豆茶を何も言わずにもらってましたね。
崎山:僕のポットから勝手に飲むんですよ。買ったらいいのに買わなくて。
佐藤:今回はスタッフさんに頼んで買っておいてもらいましょう! 楽屋も一緒にしてもらって。
(左から)崎山つばさ、佐藤寛太
ーーかなり自由ですね(笑)。
佐藤:舞台経験が少ないからまだ知らないんです。他の人って本番前は何してるんですかね? ストレッチとか?
崎山:人それぞれだけど、僕は自分のルーティンがありますね。自分の時間を決めて、本番に向けて調整してます。何分前にご飯食べて、何分前に歯磨きをしてメイクして……とか。
佐藤:僕、袖に行くのもギリギリだから呼びに来られてました(笑)。
崎山:そう、だから僕の時間が狂うんですよ(笑)。来てないよ、どうする? みたいな。でもそれが嫌なわけじゃないですよ。
佐藤:あ、そうだ、カレー美味しかったです! 作ってるのを差し入れしてくれたんですけど、すごく美味しいんですよ!
崎山:ぜひ書いておいてください(笑)。
ーーお互い、役者としての印象はいかがでしょう。
崎山:目の印象が強い稀有な役者さんだなと思います。自分の役に関して、分からないことは演出家や共演者に全部聞くんですよ。「なんとなくこうかな、こうだろう」で終わらせてしまわず、確認して自分で消化するところは尊敬というか、すごいなと思います。
佐藤:『怖い絵』は本当にすごい役者さんが集まっていたじゃないですか。皆さん立体的に舞台を見ていて。(崎山は)自分の動きがどんな効果をもたらすか常に考えているし、ほかの役者がこう動いたらこうしてみようという視点、自分にはないのですごいと思いました。自分が感じたことをそのままフィルターなしに表現できる人だと感じましたね。
■演出・白井晃さんの印象は……
ーー佐藤さんは音楽劇『銀河鉄道の夜2020』で白井さんの演出を受けています。白井さんの印象、初めて白井さんの演出を受ける崎山さんに伝えたいことはありますか?
佐藤:めっちゃ怒られますからね!
崎山:!?
佐藤:怒るっていうか、自信を持って通しを終えたら「寛太、今の全部違う」って言われて「ええ!?」みたいな(笑)。
崎山:(笑)。でも、言ってくれるんだね。
崎山つばさ
佐藤:稽古は本当に楽しいですよ、本当に。白井さんに会うために稽古行ってましたもん。「あの人すごいよ」って話に聞いていても、実際に会ったら何がすごいかわからない時ってあるじゃないですか。
崎山:そうだねとは言いづらい(笑)。
佐藤:でも白井さんは本当にすごい。
崎山:寛太が言うなら間違いないので楽しみですね。
佐藤:つーちゃんが白井さんに「違う」って言われるのが楽しみです!
崎山:そこはフォローしてよ(笑)。
ーー具体的に、どんな部分にすごさを感じたか覚えていますか?
佐藤:感覚でやっていること全部に名前があるというか。
崎山:抽象的な感じで伝える人もいるけど、分かりやすいってこと?
佐藤:多分そうなんだと思う。でも「全部違う」って言われるから自分は分かっていないのかも(笑)。そして作品をすごく大事にしてる。そんな方と一緒に仕事できるのは嬉しいじゃないですか。
崎山:それはビジュアル撮影でお話しした時にすごく感じた。
佐藤:そんな白井さんに「こいつやばいな」って思われたい。だから稽古を超頑張りたい!
崎山:でも2回目呼んでもらうってことは、いいなと思われてるんじゃない?
佐藤:確かに!
崎山:(笑)。ちなみに、「全部違う」って言われた時の対処法ってあるの?
佐藤:前回は完全に「きた、本番前に掴んだ。俺、神だ!」って思ったけど違うって言われたから「嘘だろ!?」って言っちゃった。信じられなくて。
崎山:白井さんに、寛太のことどう思ってるか聞いてみたいね(笑)
佐藤:白井さんって千穐楽にダメ出しをすると聞いたことがあるんですよ。もう公演はないのに。そこまで突き詰めて最高の舞台を作り上げるって凄いことですよね。
崎山:話を聞いていると楽しみになります。僕も早く演出を受けてみたいし、稽古がますます楽しみになりました。
(左から)崎山つばさ、佐藤寛太
■再演というよりも、イチから作り上げるイメージで
ーーお話を聞いていると、再演から参加するプレッシャーはなさそうですね。
佐藤:考えたこともないです。
崎山:いや、僕はありますよ(笑)。やっぱり初演では橋本(淳)さんのトビアスがあったわけなので。ビジュアル撮影の時に白井さんとお話して、前回のお話も聞きました。今回はキャストも変わったから、再演だけど新作のような気持ちで色々試したい。でも、初演にも寄り添いながらいきたいなと思っています。
ーー役作りについてはどう考えていますか?
崎山:まずは歴史や時代の変遷みたいなものを勉強していかないといけないと思います。僕が演じるトビアスは、自分で作るのはもちろん、寛太や稲垣さんとのやり取りの中で生まれるものによって確立していくのかなと。ある程度知識を蓄えて、あとは現場で作っていこうと思います。
佐藤:(初演のパンフレットを見ながら)参考書籍がたくさん載ってますね。これを読んで勉強していこうかな。
崎山:寛太はめちゃくちゃ本を読むんですよ。
佐藤:台本を読むと僕とジャン=ルイ・ルシャールは真逆。無口で凛としてて、自分の運命を受け入れるみたいな。そんな役を演じる自分が楽しみですよね。この雰囲気を出せるようになったら、こうやって寡黙に生きていきたいもん。
崎山:(笑)。
佐藤:この役を機にジャンとして生きていこうかな。だって台詞が超かっこいいですよ!
佐藤:トビアスはそれと相反するというか、冷静に物を見るところがあるんですよね。
ーーちなみにサンソンという人物を知ってしましたか?
佐藤:この舞台は知っていました。でもサンソンって言う人物のことはよく知りませんでした。
崎山:サンソンかどうか分からないけど、『怖い絵』でも処刑の絵があったよね。
佐藤:確かに! 処刑人という人物がいて、その人たちがどういう扱いを受けていたかとか、不浄の存在だったことは知ってました。
ーー台本を読んで、サンソンという人物からどんな印象を受けたか教えてください。
佐藤:ストイックですよね。
崎山:この言い方が正しいかはわからないけど………可哀想な人物ですよね。
佐藤:なんで?
崎山:生まれた時に仕事が決まってて、代々受け継がれてきた処刑人。必要な職業だけど、人の命を奪わないといけなくて本人も葛藤している。階級によって持てるものなどが違う時代だから全部時代のせいと言うのも乱暴だけど、他の方法で人を裁ければ、サンソンが手を血で染めなくていいんだし。今の時代では考えられないなって。
佐藤:すごいですよね。生まれた時に職業がもう決まっている。そして自分がその仕事をする意味を自分で探し出そうとしている。ただ作業としてやってるわけじゃなく、本人に美学がある。その結果ギロチンが生まれて、ギロチンによって処刑の数が増えたり、いい方向ばかりに働くわけじゃないけど。
佐藤寛太
ーーサンソンやナポレオン、ロベスピエールやお2人が演じるジャンとトビアス、それぞれが考えや信念を持っています。共感できたキャラクターはいますか?
佐藤:共感かぁ。みんな強いもんね。
崎山:自分が演じるのもあってトビアスの目線で見てしまうせいもありますが、理想を掲げて生きていく時代で、わりと現実を見るのは分かりますね。
佐藤:地に足がついてますよね。流されない。
崎山:僕も理想はあるけど、そこに辿り着くまでの現実や過程をシビアに考えるタイプなので、共感できるのはトビアスかなと思います。
佐藤:みんな自分の運命や世の中の流れを受け入れている時代ですよね。そういう意味では、僕が演じるジャン=ルイはすごく格好良いと思いました。同時にナポレオンってやっぱイケてるなって。この物語の中のことなので、実際は分かりませんけど、格好良いですよね。自分の洞察力であの激動の時代を生き抜いて皇帝になったんですから。
崎山:それも市民に選ばれて。時代を変えた人だよね。
ーー最後に、観に来る方へのメッセージをお願いします。
崎山:本当に楽しみというのが一番大きいです。この舞台の千穐楽でダメ出しをもらわないことを願っていますが、いろんな出会いに感謝できる作品になりそうだなと感じています。それは人もそうですし、トビアスという役も、作品や脚本もそう。それを劇場でみなさんにもしっかりお届けできればと思います。
佐藤:逆に僕は千穐楽でダメ出しされるのが楽しみです! 今回は白井さんに褒められることを目指して稽古を頑張りたいと思います(笑)。
(左から)崎山つばさ、佐藤寛太

■崎山つばさ
ヘアメイク:大森幸枝
スタイリスト:MASAYA(ADDICT_CASE)
■佐藤寛太
ヘアメイク:Emiy
スタイリスト:平松正啓
取材・文=吉田沙奈     撮影=池上夢貢

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