Subway Daydream「大好きなみんなと
バンドができて本当に幸せです」、Y
AJICO GIRLをゲストに迎えたリリース
パーティーで見せた音楽愛

Subway Daydream 1st Album“RIDE”Release Party -like a daydream-

2023.2.11(sat) 渋谷WWW
Subway Daydreamが、初のフルアルバム『RIDE』を引っさげたレコ発ライブを2月11日(土)に東京・渋谷WWWで開催した。
2020年に大阪で結成された男女混合4人組バンドのSubway Daydream。KANA-BOONハンブレッダーズを輩出してきた関西最大級の音楽コンテスト『eo Music Try 20/21』でいきなり準グランプリに輝くなど頭角を現し、2023年1月には記念すべき1stフルアルバム『RIDE』を発表。ここに来て、さらに多くの注目を集めている。このライブは2月3日(金)の大阪・梅田Shangri-Laに続いて行なわれたリリースパーティー2公演のうちの東京編だ。
まずは、ゲストアクトのYAJICO GIRLがステージに登場し、爽やかなゴスペルポップ「Better」でライブがスタート。ほの暗いムーディーな照明の中、クセになる譜割りやリズムでアクセントを付けながら、四方颯人(Vo)が演奏に合わせて気持ちよさそうに歌う。バンドサウンドに同期を溶け込ませるのもうまい。キラキラとしたメロディが舞う「雑談」になれば、武志綜真(Ba)と古谷駿(Dr)が軽快なビートを刻み、吉見和起(Gu)はトロピカルな音色を繰り出し、榎本陸(Gu)が弾くアコギのカッティングも映えるなど、ダンサブルなノリがいっそう高まっていく。
最初のMCで「Subway Daydream、アルバムリリースおめでとうございます!」と四方が挨拶。ひさびさにやれる渋谷WWWでのライブを榎本と共に喜び、サブウェイとの共通点として自分たちも大阪出身のバンドであることを挙げつつ、「こうやって東京でツーマンできるっていいなと思うし、誘ってもらってめっちゃ嬉しかったです」と話す。
「身体を揺らせるような曲が多いので、みなさん踊ってもいいし、踊らなくてもいいし、声を出してもいいし、出さなくてもいいし(※マスク着用での声出しはOK)、それぞれ自由に楽しんでください」と呼びかけたあとは、“忘れないで”のボーカルエフェクトで始まる「VIDEO BOY」へ。その声がどことなく当日の場内BGMでもかかっていたバグルスの大ヒット曲「ラジオ・スターの悲劇」のコーラスを思わせ、「Radio Star」という代表曲を持つSubway Daydreamとの親和性が感じられたりもした。そして、吉見のワウペダルを踏んだド派手なギターソロが炸裂、四方の歌唱がより伸びやかに響きわたると、続く「美しき町」ではフロアから多幸感いっぱいのハンドクラップが! 初見のオーディエンスを含め、もう誰もがすっかりYAJICO GIRLの音楽に惹き込まれている。
中盤では、YAJICO GIRLも1stフルアルバム『Indoor Newtown Collective』を3月8日にリリースすることをアナウンス。さらに「実はドラムのKanaちゃんが同じ大学の軽音楽部の1個下の後輩で、役職的なところでもいっしょやったりして。けっこう喋っていた仲だったんですけど、今日はそれ以来ぶりに会ったので、ちょっとぎこちない感じでした(笑)」と、四方がSubway Daydreamとの意外な関係を明かすシーンも。
そんな流れから「普段は関西や地元じゃないとやらない大学時代のことを歌った曲」だという「チルドレン」をライブで披露してくれたのも、今回の対バンだからこそ。ノスタルジックな空気とともに“どれだけ日々が過ぎ去っても 忘れることはできないでしょう”と熱く歌い上げるこのミディアム曲には、とりわけ四方の温かな人間性が表われていたように思う。
「街の中で」「寝たいんだ」「Airride」と、後半はこれまでライブで磨いてきたおなじみのナンバーを畳みかけ、高揚感と浮遊感たっぷりにオーディエンスを踊らせたYAJICO GIRL。
R&B、ヒップホップ、ダンスミュージックの旨みをバランスよく取り入れ、身近な世界や暮らしのあれこれを日本語で丹念に編んだ、彼らなりのニュースタンダード“Indoor Newtown Collective”の真価を存分に見せつけ、ラストはフロアアンセムになってきているアッパーな「幽霊」。5人はホットなグルーヴをもってこの日いちばんの解放感を場内に生み出し、主役のSubway Daydreamに颯爽とバトンを繋いだ。
Subway Daydream
そして、双子の藤島裕斗(Gu)と藤島雅斗(Gu&Vo)、幼なじみのたまみ(Vo)とKana(Dr)からなるSubway Daydreamは、サポートにtakumi(Ba)を迎えた編成で臨む。裕斗が鳴らすフィードバックノイズで始まったニューアルバム『RIDE』のオープナー「Skyline」を皮切りに、男女ツインボーカルによってブライトな爽快感を放つグランジポップ「Freeway」など、1st EP『BORN』の楽曲も織り交ぜながら、5人は80~90年代のインディ/オルタナティブロックを素直に吸収したサウンド、魔法のような輝きを湛えたグッドメロディといった自分たちの持ち味を順調に発揮。
「Dodgeball Love」以降はたまみがアコギを携えて歌う曲が加わり、アンサンブルにより深みが増す。Kanaのソングオリエンテッドなドラムに合わせてその声がどんどんピュアに弾けたりと、「Timeless Melody」ではバンドの美しい相互作用が見られる瞬間も。序盤の4曲を一気に駆け抜けた時点で、すでにオーディエンスは大盛り上がりだ。
「私たちの初のフルアルバムのリリースパーティーということで、大事なときにこうしてみなさんといっしょに集まれて嬉しいです。今日はたくさん曲をやりますので、楽しんでいってくださいね」
たまみ
藤島雅斗
たまみがそう告げると、「シュガードーナツ」からはポップな色合いも強まり、ツインギターによるきらめくアルペジオの絡みとパワフルな4つ打ちが光る「Teddy Bear」、甘美な轟音や囁くようなコーラスでメロウに紡ぐ「Canna」と、サウンドのタイプこそ違えど、YAJICO GIRLに負けず劣らずの小気味よさでライブを進めていくSubway Daydream。作品だけではなく、生のパフォーマンスも優れたバンドであることが十分に見て取れる。
「もともと同じ関西にいた先輩なんですけど、東京で自分たちの好きな音楽を追求しているその姿勢が素晴らしくて。ただただリスペクトの一心で今日はお呼びしました」と雅斗がYAJICO GIRLのことを改めて称えると、たまみも「本当にかっこよかったね」と頷きつつ、「あっ! なんか標準語になってしまった。東京に来たからかな」と笑う。
「前作の『BORN』を出したときは緊急事態宣言でお店が全部閉まっちゃっていて、自分たちのCDが並んでいるのをちゃんと見られなかったんですよ。でも、今回はいろんなところで展開してもらって、東京でライブもできて、こんなに集まっていただいて……すごく感慨深いです!」と話す雅斗の言葉も印象的で、続く「Pluto」の“信じているよ 君も僕と同じ 惑星系のはぐれ者”というリリックは、彼らの音楽に共鳴してくれた来場者へ向けて愛情を示したメッセージのように聞こえた。
藤島裕斗
Kana
たまみがタンバリン片手に歌った「Fallin' Orange」、結成当初からの人気曲「Twilight」あたりでは、Subway Daydreamの中軸を担う彼女のボーカルの凄みがますます際立って、瑞々しいサウンドとともにダイレクトに響いてくる。雅斗の声を楽器のように活かそうと考えるバンドの狙いも見事にハマっていて、極上のトリップ感を誘うアプローチに心がときめくばかり。
クライマックスに披露された「Stand By Me」は、放送中のTVアニメ『もういっぽん!』の書き下ろしオープニングテーマ。裕斗曰く「好きなものにただただまっすぐな女の子たちの物語と自分のバンドに向かう姿勢を照らし合わせて作った」という、ストレートな歌い回しやパワーポップ感が冴えわたる、Subway Daydreamにとって新機軸のアップナンバーをフレッシュに聴かせると、キュートでハツラツとしたエネルギーを加速させた「Yellow」を経て、「みんな、私たちに心の周波数を合わせてください!」(たまみ)と『RIDE』のリード曲「Radio Star」へ。歌詞のとおり“真っ赤なエレキ”で躍動する藤島兄弟が微笑ましかったり、サビのシンガロングで大いに盛り上がったりと、カラッと明るく突き抜けられるところもサブウェイの魅力と言えよう。
Subway Daydream
「僕らは3年前のちょうど今頃に結成して、始めてよかったなと思うこともあれば、組まなければ悩んでないんやろうなってこともありました。心が折れそうになったりもしたけど、ここまでなんとかきてね……このメンバーじゃなかったら続けられなかったかもしれません。大好きなみんなとバンドができて本当に幸せです」と、感極まりながら現在の想いを語った裕斗。そんなドキュメントタッチも孕んだ、“この声が旅をはじめたから 中古の車で向かうよ 誰も知らない場所へと”と歌うバンドソング「The Wagon」で、Subway Daydreamは本編を熱く締め括った。
アンコールでは、メンバー全員がTシャツに着替えて再登場。「こういうお決まりのやつ、やってみたかったんです(笑)」と初々しさも覗かせつつ、たまみが「大きな自信と勇気と希望をもらいました。これからもSubway Daydreamをどうか応援してください!」と伝え、ラストは語感の楽しさが耳を惹くチャーミングな「ケサランパサラン」で終演となった。ともに大阪出身で同世代、そして素晴らしいライブバンドであり、類まれなセンスと音楽愛を併せ持つSubway DaydreamとYAJICO GIRL。2023年に躍進が期待される両者の今後にも注目しよう。

取材・文=田山雄士 撮影=Kana Tarumi
Subway Daydream

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