【tonari no Hanako インタビュー】
tonari no Hanakoは
だいたいの曲で脅迫している
“女は強いですよ”という
歌詞を書きたかった
メジャーデビュー作の「ヘアゴムとアイライン」(2022年9月配信)は河口恭吾さんに歌詞を提供した曲のカバーですね。
はい。ラジオ出演がきっかけで楽曲を河口さんが聴いてくださって、“tonari no Hanakoの世界観で歌詞を書いてください”というお話をいただいたんです。なので、この歌詞は女性目線というところからスタートして、河口恭吾さんが書かなそうな歌詞するということにこだわりました。女性しかほぼ持たない“ヘアゴム”だったり、“アイライン”っていうワードが出てくるのはそういうことです。
アイラインで男性が思い浮かべるものはあまりないでしょうからね。
だと思います。好きな人と会う時、気合を入れてアイラインをいつもよりも太目に引く女子は多いんですよ。そういうことも表現しました。
カバーするにあたっては、どのようなものにしたいと思っていました?
ループのサウンドで表現してみたいと思っていました。河口恭吾さんは感情豊かな表現をされるので、もともとの曲はとても情感豊かなアレンジだったんです。それに対してtonari no Hanakoは“心の内に秘めてさらりと流す”くらいの感覚でやってみようと思って、あまりアップダウンのないアレンジにしました。軽やかでありながらも意外と“いつかあなたが悔やみますように”みたいな毒の要素も含んでいるものにしたかったんです。こういう感情を抱く女性は多いと思います。例えばふられたら“ふったことを後悔させてやる!”みたいなマインドに切り替える女性は結構多くて。私もそうなので(笑)。“女は強いですよ”という歌詞を書きたかったんです。
歌詞に対する反応をいただくことは多いですよね?
はい。特に女性からの反応が多いです。楽曲を引用リツイートして、“これ、私の体験そのもの”みたいに書いていただくこともあります。世の中に空気として漂っているけど、あまり口には出されない、出すまでもないくらいの小さなことを拾って曲にできたらいいなと思っているので、その辺はこだわっています。
「ヘアゴムとアイライン」の歌詞の中だと、《私と生きられないこと/いつかあなたが悔みますように/なんてね》の《なんてね》が強烈です。冗談めかしていますけど、本気ですよね?
終盤で《あなたと生きられないこと/それで良かったと思えますように》と歌っていることに希望を感じられる曲でもあります。
未来に向かって生きていくという、ちょっと前向きなエンディングにはなっています。
MVでもそういう心理の変化が描写されていますね。
曲に沿って作った感じですので。河口恭吾さんのMVは男女の別れのシーンを描いていたから、tonari no HanakoのMVでは別れたあとを描くことになったんです。つき合ったことできれいになる努力をした女性が、“きれいになれたから、まぁいいか”じゃないですけど、前を向くところを描きたくて。
続いて11月に配信された「傷を隠して」も、曲とMVと向き合いながらいろいろ想像する楽しさがありました。似た傷を負いながら生きてきたふたりの出会い、理解し合える関係の構築、過去に意味を感じられるようになる様が伝わってくる曲でした。
まさにそういうことを描きたかったんです。コロナ禍の緊急事態宣言の真っ只中に書いた曲なんですよね。つらい記憶とか人それぞれにあると思うんですけど、そういうものに意味を持たせないとやっていられないと感じたというか。もしそういうものに意味があるのだとすると、同じようなことを経験した人の気持ちが分かるようになると思って。この曲はあんまり毒を入れなかったです(笑)。私自身も結構落ち込んでいた時期に作ったからこそ、藁にもすがるような気持ちで光を描いた感じですね。今思えば、tonari no Hanakoとして新しい切り口です。
《古傷も愛しく 過去は意味を持った》というフレーズもありますが、いい曲を書けた瞬間にこういうことを思ったりもするんじゃないでしょうか?
思いますね。曲を作ることによって、過去の嫌だったこととかを消化していますから。いろいろな経験が音楽として生まれ変わることによって、プラスになっていく感覚はあります。浄化する感じですかね?
ドロドロした感情を成仏させる?
それです! 成仏ですね。私も“成仏させる”って呼んでいました。
つらい体験をいい曲に転じられたら“ざまあみろ!”という感覚にもなるんじゃないですか?
はい。そう思ったのが例えば「君のトーストになりたい」(2021年8月発表の配信シングル)です。あれは心にずっと残っていたモヤモヤしたことを曲にして、“ざまあみろ!って思いました(笑)。曲を作るってデトックスみたいになっています。だからこそ楽しくて悩みがない時期は、曲を書けないんですよ。イラッとしたり、悲しかったり、切なかったりする気持ちを日々ストックしておかないといい曲を書けないので、幸せにはなれないと思います(笑)。
(笑)。でも、やりきれない出来事は人生の中で必ず起こりますからね。
そうですね。だから、これからも曲を作っていきますし、それは生きがいみたいになっています。
メジャーデビューしてから数カ月が経ちましたが、何か感じていることはありますか?
心強いチームと出会えて、すごく嬉しいんです。今まで自分ひとりで指揮をとってやってきたので、限界も多かったんですけど、レコード会社のチームのみなさんがいろいろな提案をしてくださるんです。“tonari no Hanakoはいいと思う”という気持ちもすごく伝えてくださって、それも活力になっています。今までのMVは私とsobueとモデルさんの3人だけで撮影してきたものがほとんどで、とても大変だったんですけど、そういう部分も支えてくださる方々が増えました。今までできなかったことができるようになっているのがありがたいです。
この体制で2023年はよりアクセルを踏み込んだ活動をしていくんですね?
はい。アクセルを踏みたいです。tonari no Hanakoの初ライヴをやる話にもなっているんですよ。映像演出にもこだわったライヴをする予定です。tonari no Hanakoの音楽を生で体感していただく機会を今後、少しずつお届けできるのかなと。作品も世の中にたくさん届けていく予定でおりますので、楽しみにしていただけたらと思っています。
楽曲制作も引き続き着々と進めているんですか?
すでにデモをいろいろ作っているんですけど、私自身もすごく好きになっている曲がいっぱいあります。それがアレンジされて、レコーディングされて、ミックスされて、MVも作れるのを楽しみにしている自分がいます!
取材:田中 大
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配信シングル「ぜんぶ忘れてしまうって」2023年1月11日配信
playlist Zero/日本クラウン
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配信シングル「傷を隠して」2022年11月2日配信
playlist Zero/日本クラウン
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配信シングル「ヘアゴムとアイライン」2022年9月27日配信
playlist Zero/日本クラウン
『tonari no Hanako メジャーデビュー記念 SECRET LIVE「春めく花葬」』
3/24(金) 東京・渋谷区某所
※詳細はチケット購入者にのみご案内
開場18:00 / 開演19:00(終演20:30予定)
<チケット>
全席自由前売り¥4,400(別途ドリンク代)
抽選受付:中~ 2/12(日)23:59まで
購入ページ:https://eplus.jp/tonarinohanako/
トナリノハナコ:“切ないほど、人生は、愛しい” をテーマに、拗れたゆえに辿り着いた、繊細な世界線を描くマルチクリエイティブユニット。LOOPフレーズに生のJAZZをあしらい、独特の気怠さと浮遊感に浸れる、温度感低めな新感覚のサウンドが特徴。
2019年に1st EP『切ったら、空』(“CD ショップ大賞 2020 北陸ブロック賞”を受賞)から活動をスタートさせ、現在の活動に至るまで表立った活動はしておらず、メンバー編成も架空のものだった。22年9月に配信シングル「ヘアゴムとアイライン」でメジャーデビューを果たすと、それを機にヴォーカルのameとVJ&映像ディレクターのsobue がメインメンバーであることを明らかにし、楽曲の世界観をより表現していくため、ビジュアルを担当とする“Hanako”を迎え入れる。初代Hanako 役を務めるのは、若手モデルのアイビー愛美(ボックスコーポレーション所属)。ユニット名の由来は…“それでも、となりで恋をする”。tonari no Hanako オフィシャルHP
「ぜんぶ忘れてしまうって」MV
「傷を隠して」MV
「ヘアゴムとアイライン」MV