全身全霊、鬼気迫る歌とパフォーマン
スに応える咆哮と突き上げられる拳 
我儘ラキア『ONYX TOUR』FINALに見た
新たな世界

我儘ラキア『ONYX TOUR』FINAL 2022.12.17(sun) KT Zepp Yokohama
「本当に本当のラスト。自分の魂、全部ここに置いて帰る勢いでライブします!」
ライブ前半戦を終えた星熊南巫が、このライブに懸ける意気込みを熱く告げる。2022年は4月より、リスペクトする強豪ロックバンドを迎えてのツーマンツアーを開催。6月に1年ぶりとなる最新EP『ONYX』をリリースし、7月より約5ヶ月に渡って行われた同作を掲げての全国ツアーを開催。フェスやイベントにも多数出演し、共演バンドからたくさんの刺激を受けながら、強力な新曲たちを携えてライブスキルを磨き上げてきた我儘ラキア。そんな充実した一年の活動の集大成であり、今ツアー最大規模となる最終公演『“ONYX”TOUR FINAL』が、KT Zepp Yokohamaにて開催された。
我儘ラキア
ステージの左右に花道が伸びる広いステージに“WAGAMAMA RAKIA”のロゴが光り、レーザーが飛び交うゴージャスなオープニングで始まったこの日のライブ。SEに迎えられてステージに登場した4人は颯爽とお立ち台に立ち、観客の大きな拍手と歓声を浴びる。「我儘ラキア、始めます」と星熊が告げると腹に響く重低音と重厚なバンドサウンドから、最新EP『ONYX』収録の「Bite Off!!!!」でライブがスタート。ヘヴィにキュートに、クールに勇ましく。ラキアの多角的な魅力を詰め込んだようなOPナンバーに、一気に熱を上げたフロア。「一緒に踊ろ?」と煽るMIRIに、観客がジャンプを合わせて会場を揺らす。自由な場であるはずのライブ現場が、ガチガチの規制に縛られて約2年半。どんなに楽しくても興奮しても声を上げることさえ出来ず、グッと堪えてきた長い期間を経て、この日は規制下ながら声出しOK。1曲目が終わり、観客が興奮と歓びの声を上げる。
「日本で一番攻めてるアイドル、我儘ラキアです。今日一日、よろしくお願いします」と、星熊が改めて挨拶して、「Why?」、「New World」と続いた前半戦。コロナ禍もライブで鍛えてきた楽曲たちはツアーでさらにブラッシュアップされ、ライブスキルを上げた4人のパフォーマンスで強力なライブチューンへと進化。星熊の美しく伸びやかな歌声で始まった「refrection」は、花道で川﨑怜奈が華やかさ、海羽凜が耽美さを振りまきながら観客を煽り、MIRIが鋭利で攻撃的なラップでぶっ刺してと、個々の魅力を存分に発揮。ダークな曲調にクールで色気あるパフォーマンスを魅せた「Devil's Gimmick」は、それまでの流れとも異なる印象が新鮮。ライブ仕様の新旧楽曲を織り交ぜ、最新型のラキアが見えた前半戦。ワンマンならではの構成や魅せ方は、ここからのライブ展開も期待させる。
星熊南巫
川﨑怜奈
「この2年間、自分たちは全部奪われたけど。「奪われるだけじゃ悔しいよな、絶対にこのステージに生き残ってやろう!」という気持ちを持って。もともと自分たちが弱かった魅せるってこと、ステージだけで魅了するということにチャレンジしてきました。その結果、こんな最強なチームが集まって、マジで恐いものは何もありません。何かを奪われるだけの人生じゃなくて、何かを奪われたら新しく生み出していく。そうやって変化していきたいと常々思っています。お前らも奪われたもの、全部取り戻していけよ!」
星熊の熱いMCからダンサーをステージに呼び込み、ミラーボールの光が眩しく光る中、<RAKIA in the house>の掛け声と手拍子で賑やかに始まった「GIRLS」、感傷的な星熊の歌声と感情を表現するダンスで魅せた「SWSW」と、ダンサーと華やかに魅せる曲が続いた中盤戦。「Trash?」の突き上げるダンスビートでフロアをブチ上げると、再びダンサーが参加して始まった曲は「Leaving」。「みんな調子どうですか? 今日は声出せるし、思い切り踊ってくれ!!」と川﨑が煽り、花道で踊るダンサーがステージを華やかに彩ると、会場中が振り付けを合わせて、ライブハウスがダンスフロアへと変わる。この会場中を巻き込んでの賑やかなパーティー感も、2年前のライブには無かった光景であり、諦めずにチャレンジを続けてきたラキアの生み出した新しいライブの形かつ、誇るべき功績だろう。
MIRI
海羽凜
「自分たちの始まりの曲、聴いて下さい」と星熊が告げ、続いて始まった曲は「ゼッタイカクメイ」。時々確認し合うように目を合わせながらマイクを繋ぎ、たっぷり気持ちを込めた歌声で聴かせる4人。全部を奪われて、新しい挑戦もしてきたラキアだけど、絶対に譲れないものがある。「My life is only once」へと続く流れから、そんなことを感じていると、「この曲は我儘ラキアとして、初めて曲を出したうちのひとつで。こんな大きいところでやると、ちょっと変な感じがします」と振り返り、ここまで来れたことの喜びと感謝を告げた星熊。観客の熱いコールや掛け声に、一人ひとりの声や想い、熱量をしっかり受け止めながら歌った「Melody」へと続くと、会場の一体感がより強固になったのが分かる。
我儘ラキア
コロナ禍でも「音楽を届けなきゃ」と必死でライブを作り、アコースティックライブを行ったことを振り返り、「あの時の気持ちを忘れないように」とピアノの演奏と美しい歌声で披露した「Days」では、「良かったら、一緒に歌って下さい」と呼びかけ、会場中が大きく手を振り歌声を合わせる。「rain」、「Ambivalent」と続いて再びフロアの熱を上げると、ダンサーが加わり「JINX」へ。MIRIの鋭いラップで始まり、愛を求め戦い続ける覚悟を歌う楽曲の深い世界観を歌とダンスで表現した。
「ホントのホントのファイナル始めましょう。このツアー色んなことがあって、ステージから逃げ出したくなることもたくさんありました。でも自分には音楽というものにしがみ付くしかなくて。みんなの待っててくれる声がすごく心に突き刺さる日もありました。でも、なんとかみんなの力も借りて、完走することが出来そうです」
星熊南巫
星熊がここまで支えてくれたファンへの感謝を告げ、ライブはクライマックスへ。「こんな自分でも出来るから、みんなも好きなことやって欲しいなと心から思います。負けんな! どんな奴にも負けんなよ!」と熱いメッセージを届け、始まった曲は「GR4VITY G4ME」。強さも弱さもみんなの想いも背負いながら魂の叫びを響かせ、全力のパフォーマンスを見せる4人に、熱い拳を突き上げて応える観客。本編ラストは、「魂ぶつけて帰ります」と間髪入れずにぶっ放した、「SURVIVE」。まさに全身全霊、鬼気迫る歌とパフォーマンスで観客の心に迫ったこの曲。<今!叫べ!>の歌詞に観客が吠え声を上げて応えると、気持ちのぶつかり合いから生まれる強烈なエネルギーと熱量が会場を包む。
その美しすぎる光景に涙しながら、ひとつ気付いたことがあった。2020年12月のリリース以来、幾つものライブでクライマックスを生み、聴く者の心を震わせてきた「SURVIVE」だったが。<今!叫べ!>の呼びかけに観客が熱い吠え声で応えて、気持ちをぶつけ合うを見たのは、今日が初めて。そうか、この「SURVIVE」こそが完成形だったのだ! 楽曲ラスト、渾身のロングトーンを放つと、精根尽き果てたようにステージに倒れ込む星熊。星熊の手を取り、笑顔で引き起こすMIRI。川﨑も海羽も見たことないほどの充実した清々しい表情を浮かべ、大きな拍手と歓声に包まれて、長く濃厚なツアーを締めくくった。
我儘ラキア
アンコールは、「この先もみんなに、長い長い音楽の旅の道のりについて来てもらおうと思って、この曲を用意しました」と「JOURNEY」を披露。さっきまでの鬼気迫る表情が嘘のように、明るく楽しくアイドルらしく魅せたこの曲。川﨑が持つ自撮りカメラにみんなでポーズを取ったり、4人でイチャイチャしながらアットホームな雰囲気でライブは終演。コロナ禍で多くのものを奪われながらも、この3年で3枚のミニアルバムをリリースして、強力な楽曲たちをたくさん抱えて、諦めずにライブを積み重ねてきた我儘ラキア。ツアーファイナルは彼女らが奪われたもの以上に新しいものを得て、すでに新しい世界を構築し始めていることを証明する、ここからの期待と希望に満ち溢れたライブとなった。

取材・文=フジジュン 撮影=nekoze_photo
我儘ラキア
我儘ラキア
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