【SUIREN インタビュー】
光が俺たちを照らすんじゃなくて、
俺たちが光の前に立てばいい
SUIRENをやること自体が
僕らにとっては反逆みたいなもの
なるほど。物語のメッセージとコミカルな雰囲気にサウンドもしっかりリンクしているんですね。
Ren
アレンジも結構ふざけて、カッコ良くなりすぎないようにはしました(笑)。“アンガージュマン”という言葉を聞いて、「シニカルで軽快な感じ」という言葉の響きからのインスピレーションを受けたんです。
歌詞の内容も“アンガージュマン”というワードや物語はもちろん、ごっこ倶楽部のスタンスやSUIRENのおふたりの生き方、全部にシンクロするような気がしたんです。つまり、ごっこ倶楽部のメンバーとおふたりが目指しているものって、とても近しいのではないかなと。
Sui
ありがとうございます。幸いなことに僕も『アンガージュマン』に登場する5人に共感できる部分もあったので、今回、大きく苦戦するようなことなく、スムーズに歌詞が書けました。
Ren
でも、そういうことって今の若者の多くに言えることなのかもしれない、って思いました。
Sui
そう。何者かになれると信じていたのになれなくて、不甲斐なさを感じながらも“なれるぞ!”って突っぱねるみたいな。それがきっと運命を変えるんですよ。運命どおりに生きていたら何者にもなれないシナリオかもしれないけど、台本を捨てて自分で書き直せばいいっていう、そんなメッセージを書いた曲になりました。
2番のAメロに《茶番劇の舞台ではなくて 御伽噺を⽣きよう》というフレーズがありますが、“御伽噺”というネガティブに使われがちな言葉を、この曲ではすごくポジティブな例えに使っているのも面白いですよね。
Sui
そうだね。他人から見ると“バカだな”と言われる非現実的な夢でも、その中で生きることが運命を変えることにもつながっていくという。昨今の音楽ってもっと赤裸々な事情を歌いがちで、もちろんそれはそれで素敵だけれど、もうちょっと生き方や哲学というか、いわゆる“四畳半じゃないこと”を僕は歌っているつもりなんです。これが時代に合っているかというと…
Sui
残念ながら。最近ではTikTokから若者を中心に平成ゼロ年代の曲が流行ったりするゃないですか。昭和のたくさんの名曲を経たあの時代の音楽ってものすごくクオリティーが高いと改めて、強く感じることが増えたんですよね。ヒップホップ、ブラックミュージック、カントリーにロックと、いろんなジャンルの音楽が良くも悪くもJ-POPとして消化されて、音楽の売れ方が変わって、アイドルとか人に対してコミットする時代になったところでコロナ禍がきて。また音楽の時代に戻りつつある今、僕が書いている歌詞はあの頃のものに近い気が自分ではしているんです。だから、「バックライト」の歌詞を見て“この歌詞は今の時代に刺さらない”って言う人がいたとしても、“いいもの”は“いい”と自分で流行らせればいいだけのこと。それが、この歌詞のメッセージ性でもあるんです。
まさしく自分の行動で、流行りさえも変えてゆくと。
Sui
そこまで行けたら本当に嬉しいですね。あとからでも“あいつらすごいね”って、みんなが気づいてくれればいいなと思って。SUIRENの本質って、そっちなんじゃないかな?
Ren
よく言っているのが、10年後になっても恥ずかしくない音楽を作りたいってことで。5年後、10年後に自分で聴いても誇れるいいものを残していきたいんです。
素晴らしいです。そんなおふたりの信念まで込められた今回の新曲ですが、歌詞の中に“バックライト”というワードはないじゃないですか。このタイトルは一体どこから?
Sui
これは絵でイメージしてもらいたいんですけど、例えば神様が書いたシナリオどおりの舞台があるとして、そこで僕はスポットライトの当たる主役じゃないかもしれない。だけど、“なんか気に入らないな”“場面が曇っているな”と感じたら、照明を引っ張り出してきて、その逆光の中で観客に向かって行けばいいってことです。
だから《光の向こうへ》と最後にだけ“光”というワードが出てくるんですね。
Sui
そうです。バックライトは逆光であり、時代からの逆行だったり、神様から与えられた運命や役割に対する反逆かもしれない。要するに光が俺たちを照らすんじゃなくて、俺たちが光の前に立てばいいんですよ。そして、“運命を勝ち取っていくんだ!”というメンタリティーが、この曲のテーマとバックライトという言葉の意味するところなんです。このタイトルを考えたのはRenくんで、初めて聞いた時に僕はとんでもない皮肉だなと思いました。
Ren
“バックライト”という言葉を聞いて、身近な言葉ではないからこそなかなかイメージつかないところ、調べてみて“逆光”という直訳を見たら、ちょっと鳥肌が立ちませんか?
まさに皮肉ですよね。曲の頭に《神様が描いた話》と出てきますが、その中での反逆を描いているわけですから。
Ren
僕らにとってはSUIRENをやること自体が反逆なんですよ。SUIREN以前に音楽をやる機会はいっぱいあったのに、もう一度ユニットを新しく作り直して始めたんですから、それが反逆みたいなもの。
Sui
結果的に「バックライト」はそれを象徴する曲になった気がします。
ちなみに「バックライト」が出来上がって、ごっこ倶楽部のみなさんからはどんな感想がありましたか?
Ren
みなさんで聴いていただいたみたいで、“イメージどおりの楽曲をありがとうございます!”というメッセージをいただきました。
Sui
サウンド面も歌詞もタイトルも、全部にSUIRENとごっこ倶楽部の『アンガージュマン』をリンクさせられたと僕は思っています。ごっこ倶楽部さんが導いてくださって、すごくいい出会いでいい曲が作れました!
そんないいご縁もいただいたところで、2023年のSUIRENはどのような活動を予定されてます?
Ren
まず2月にアコースティック編成でのライヴを開催します。ゲストを呼んでのイベント形式になるんですけど、2023年はライヴも精力的にやっていきたいんですよね。
Sui
さらに6月にはバンド編成でのワンマンライヴも決まっているので、また違ったかたちで僕たちの音楽を楽しんでもらいたいです。ライヴでしか伝わらない楽曲の良さってあるので、やっぱり会場で聴いてほしいです。
Ren
その良さをしっかりと伝えるためにもワンマンだけじゃなく、フェスだったりイベントにも出て行きたいです。アーティストの仕事は制作とライヴのふたつだと考えていて、僕らは両方に対する準備もしっかりしていますから、まずは“こいつらの生の音楽を聴きたい!”と思わせられるように頑張っていきたいです。
取材:清水素子