21本目・『現代やくざ 人斬り与太』
:杉作J太郎のDVDレンタル屋の棚に残
したい100本の映画…連載46

杉作J太郎の

DVDレンタル屋の棚に残したい100本の映画
20本目・『夜が崩れた』
 人はなんのために映画を見るのだろうか。
 たのしい気持ちになりたいから。
 愉快な時間をすごしたいから。
 退屈な毎日に耐えられないから。
 刺激が欲しいから。
 精神の高揚がほしいから。
 逆もある。
 映画はお薬に似ている。
 風邪をひいたときと胃の調子が悪いときに服用するお薬は違うだろう。
 だがなんとなくすべての映画が横並びにずらーっと置かれている。
 置かれている棚の違いはある。
 日本映画、外国映画、家族向け、成人向け、怖い映画、ハッピーな映画。
 わけられているが乱暴だ。
 だから目的と異なる映画を見てしまって呆然とすることもある。
 うがい薬だと思ったら目薬だった。
 苦い顔をしてしまうことがある。
 この映画が公開されたのは日本でコッポラの『ゴッドファーザー』が公開されるすこし前である。アメリカではすでに公開されていた。1972年3月15日の公開だ。試写は始まっていたとしても映画とテレビで撮影所フル稼働、深作監督をはじめとするスタッフの誰かが試写、または撮影所で撮影風景を目にしたとはまず思えない。日本での公開は1972年7月15日。
 そして『現代やくざ 人斬り与太』の公開は1972年5月6日。『仁義なき戦い』の公開は翌1973年の年明け1月13日。いわゆる正月第二弾。かなりメリハリのついたド級の公開だが正月第一弾ではない。だが第二弾ではある。コッポラの『ゴッドファーザー』世界的大ヒットを受けて暴力映画に大きく舵を切ったのであろう。
 だがアメリカで公開瞬間に大ヒットしてもすでに『現代やくざ 人斬り与太』は東京撮影所でクランクインしている。正確な資料を捜してみたい。いつかきちんとした研究してみたい。
 今回、この限られた時間とスペースで記しておきたいのは。
 ヒマつぶしの暴力映画以上の芸術性を東映という会社としては求めてはいないということなのだが。
 いや、どうだろう。
 実際のところは誰も口にしない。
 本当のことは言わないまま誰もが死んでいく。暴力路線、セックス路線だからといって、ストレートに暴力やセックスを見世物として扱った映画なのだろうか。
 東映三角マーク。
 そんな映画を私は一本も見たことがない。
 作り手の思いも、作業も、もっと別のところにある。
 なにが言いたいかというと『現代やくざ 人斬り与太』は。
 とにかく素晴らしい映画なのだ。
 見てしあわせな気持ちになる映画でもないし、共感にほっとする映画でもない。だが、わかりやすく言えば『ゴッドファーザー』とほぼ同時期に、こうした映画が作られていたということは、この映画のスタッフもコッポラたち同様の、世界の、地球上の状況をとらえて、それがこうした映画になったのだ。インターネットもスマホもなかったが、人々は敏感だった。
 私は敏感でいたい。
 この映画のビデオソフトが出た時。
  私は20代半ばだった。
 銀座にある出版社でスタッフとして毎日毎晩仕事をしながら家に帰る時間がないので雀荘で朝まで麻雀して出版社の仮眠室で寝ていた。
 ビデオソフトを買って中身は家に置いてパッケージを筆箱にしていつも持ち歩いていた。
 こんなによく出来た映画はない。
 演出も、スタッフワークも、俳優の演技も。表現しようとしていることも。なにからなにまで。
 出るところに出れば世界的歴史的大傑作であることは間違いない。だが出るタイミングもきっかけもなかった。
 出演者もスタッフも頑張ったのでヤクザはヤクザに見える。菅原文太は損をしているだろう。軽く見ている人もいるだろう。だがそこを目指して頑張っているのでなんとも言いようがない。
『現代やくざ 人斬り与太』(1972年/東映東京撮影所)
出演/菅原文太、渚まゆみ、待田京介、小池朝雄地井武男小林稔侍、三谷昇、藤里まゆみ、花田達、土山登士幸、高月忠、小林千枝、大浜詩郎、久保一、河合絃司、木川哲也、村山辰昭、伊達弘、沢田浩二、清水照夫、たこ八郎、谷本小夜子、潤ますみ、藤山浩二、諸角啓二郎、内田朝雄、八名信夫、室田日出男、安藤昇
 企画/俊藤浩滋、吉田達、高村賢治
 脚本/石松愛好、深作欣二
 撮影/仲沢半次郎
 音楽/津島利章
 録音/小松忠之
 照明/元持秀雄
 美術/中村修一郎
 装置/根上徳一
 装飾/米沢一弘
 美粧/住吉久良蔵
 助監督/橋本新一
 スチール/遠藤努
 擬斗/日尾孝司
 監督/深作欣二
 
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