過去最高のBLUE ENCOUNT 「ブルエン
史上、最も壮大で強靭な音楽」が完成
 6年半ぶりの武道館へ向かう今、そ
の想いを訊く

11月9日に『コードギアス 反逆のルルーシュR2』エンディングテーマとなった新曲「Z.E.R.O.」をリリースするBLUE ENCOUNT。「ブルエン史上、最も壮大で強靭な音楽を作れたと思います。」とボーカル田邊駿一が語るくらい、バンドの状況は過去最高と言える仕上がりとなっている。ベース辻村勇太が2023年より活動拠点をアメリカに移すことが発表されてから、立て続けのリリースにツアーと精力的に活動してきた彼ら、その集大成となるであろう6年半ぶりの日本武道館でのツアーファイナルへ向けて加速する今、その想いを語ってもらった。
――最新シングル「Z.E.R.O」を完成したBLUE ENCOUNT。2022年は「青」、「終火」も配信リリースしてますが、もう絶好調ですね!
田邊:嬉しいです。最近リリースした曲はどれも今年作った曲ばかりで、どれも良い曲が出来ている手応えも感じているし、いま、やりたいことがすごく明確になってるっていうのも感じていますし。いまも新作に向けて、新曲の制作中です。
――早めに録っておかないと、辻村くんがいなくなっちゃうしね。
田邊:あはは。いまは辻村がアメリカに行ってからのことも想定して、ほとんどをデータでやり取りしていて。スタジオで録っているのは僕と江口で、高村が別日に録るって感じで進めてるんです。
高村:コロナ禍になってすぐの時も新曲を作っていたんですけど、そこからデータでやり取りするってやり方が始まって。
田邊:最初はプリプロぐらいの段階でやり取りする程度だったんですけど、いつしか本チャンまでやっちゃうようになって。色んな楽曲を作りたいと思っている僕らだから、時代に合わせた色んなやり方を試すのも良いと思うし。そのフレキシブルさもブルエンらしいなって思います。
――どちらかに振り切るんじゃなくて、スタジオでも出来るし、データのやり取りでも出来るし。選択肢が増えた感じですかね。
田邊:そうですね。それにいまインディーズの時くらい、一人一人が色んなことを考えて、頭を悩ませながら曲を作れていて。メジャーデビューしてから、なんとなく自分たちのイメージが出来上がって、どこか手慣れた部分もあったんですけど。自分たちが本当にやりたいことや出したい音が見えてきてる中、それを表現するためにそれぞれがイチから音楽を学び直してるみたいな感じなんです。
田邊駿一
――話を合わせるわけじゃないけど、「Z.E.R.O」を聴いて一番聞きたかった話がそこで。今回のアレンジ、凄くないですか? 「ブルエン史上、最も壮大で強靭な音楽を作れた」と紙資料にありますが。強靭さと壮大さもありながら、歌詞の世界観に沿った1曲通しての展開もすごくドラマチックかつ、細部までしっかりこだわれてて。これまでの経験や積み重ねをギュッと一曲に詰め込めてると思うし、個々のやるべきことがハッキリ見えてるのが分かります。
田邊:そう言ってもらえると嬉しいですね。いま、表現したいものがどんどん広がっている感覚があって。今回もプロデューサーさんは入れず、自分たちで試行錯誤しながら作り進めたんですが。その中で「まだ出来ることがあるな」って、自分たちの伸びしろも感じられて。今年リリースした曲って、多岐に渡ってると思うんですけど。それが出来ている理由は、4人が作りたい音像が広がっていってるからこそだと思うんです。
――うん、バンドとしてすごく充実してるのが、音からよく分かります。メンバーみなさんは「Z.E.R.O」が出来ての感想は?
江口:「コードギアス」のタイアップは初めてなんですけど、以前から触れる機会が多かった作品だったので、そこに携われたことが一番嬉しかったし。自分の中の「コードギアス」のイメージがあって、そこにばっちりハマる曲を作れたなって自信もあります。アレンジはすごい苦戦して、何回も作り直しては田邊に聴かせて、「ちょっと違うかも」と言われて、また作り直して、、を繰り返して作り進めていって。自分の手ぐせで作るのは簡単ですけど、それだと今まで通りのブルエンサウンドになってしまうから、その中に新しい面を見せていくっていうのが、本当に大変でしたね。
高村:僕はこの曲のイントロが、久しぶりに心掴まれるくらい好きなんですけど。、「イントロのギターフレーズが、これで確定した」ってのを聴いた時、自分の中ですごい締まった気がしたんです。
江口:珍しく、「イントロのギターフレーズ、カッコいいね!」ってLINEくれたもんね(笑)。
高村:そう。自分の好みすぎて、そのフレーズを聴いた瞬間にゼロがイチになったというか。「これはこういう流れで、こういう風に仕上げていこう!」という道筋が明確に見えてたんです。
――辻村くんは楽曲出来ての感想、いかがでしたかですか?
辻村:僕は人生の岐路と言えるタイミングで、この曲が作れたのが嬉しいです。アニメの世界とバンドの世界の時間軸って絶対違うと思うんですけど、言いたいことがどっちにも繋がっているのが嬉しくて。ルルーシュ(アニメの主人公)とブルエンの生き方が、同じ楽曲で同じ捉え方が出来るのが面白いし、それを曲に出来たのがありがたいなと思います。
――そこは俺もすごい思いました。アニメのタイアップだけど、ちゃんとブルエンの曲になってるのが凄い。
辻村:そうですよね。あと、原曲が出来た時、「データの中でどれだけ壮大にするか?」というのが僕の中のテーマで。デジタルだからこそ、余計そこに向き合いたいなというのがあって。4人のやり取りの中ですごくクオリティの高い曲が出来たのが、これからの自信にもなりました。このタイミングで、「Z.E.R.O」って曲が出来たのは、ここから先の未来も見えた気がして、嬉しいです。いま、ライブで「Z.E.R.O」を演ってるんですけど、生だと余計に壮大感が出て。照明や演出も混ざり合って、音源とは違う完成形になっているのかな?というのも感じています。
江口雄也
――話に出てきているように、「Z.E.R.O」はアニメ『コードギアス反逆のルルーシュ R2』のED主題歌ですが。アニメのEDでは、この曲をイントロのど頭から使用されるんですか?
田邊:そうです。アニメチームから“レクイエム=鎮魂歌”というテーマをもらっていて、「最終回に向けて、主人公の沈む気持ちを清める歌」ってところで、レクイエムと呼ばれる曲を色々聴いて。自分の中でイメージしたものを形にしたのが、あのイントロで。それありきでAメロも変えてみたりして。
――でもこの曲で歌いたかったことって、89秒だと収まりきらないでしょう?
田邊:そうなんです。だから最初は一番最後のサビの<僕を殺して>という、ブルエンではなかなか使わないワードを、あえてど頭に持って来ていて。そうしたらアニメサイドから「ネタバレにもなるから」ってストップがかかりまして(笑)。僕の中では一曲の中に、全てのストーリーを描ければいいなという気持ちもあって、主人公がどう歩んでいって、最後に何が待っているのか? というところで物語を広げていきました。
――アニメ尺から全体像をイメージして、曲を作り進めていって?
田邊:そうですね。デモの段階ではサビも全然違ったし、イントロも触りしか無くて。「これを聽かせたら、絶対選ばれないな」と思ってたんですけど、それが選ばれて。「次の日にスタジオで作りましょう」って話になって、「これをなんとか完成させなきゃ!」と思ってたんでしょうね。スタジオに向かう途中に頭がフル稼働して、いまのサビが浮かんできて……サビって、いつも衝動的に生まれてくるんです。絶対、計算で作れないものなので、衝動で生まれることが多いんですけど。今回は久々にビビッとくるサビが来て、「これだ!」と思いましたね。
――心の動きや物語性がよく見える歌詞は、どうやって書き進めていったんですか?
田邊:ちょうどお話をいただいた時、Netflixで「コードギアス」が展開されていて、見始めたら、すごく面白くて。バトルシーンで魅せるというよりは、一人ひとりの感情にフォーカスを当てているところがハリウッド映画みたいで、面白い方向性だし着眼性だなと思って、一気に見ちゃって。「最後、こうなるんだ。しかもこの大事な最後のところを任されてるんだ」と思った時、逆に書きやすいなと思ったんです。僕もファンと同じ感覚で見て、ファンの間では知られている答えを「僕なりに解釈して新訳として書いて見ましたが、いかがですか?」みたいな感覚で書けたので、すごく楽しく書けました。アニメがリバイバルして、もう一回新たなエンディングを作るタイミングで、そこを任されるってことはなかなかないですからね。自分なりの解釈であえてざっくり書いたところもあるし、含みを持たせて書けたところもありました。
BLUE ENCOUNT
――“新訳”って言葉が出ましたが、しっかり田邊くんの言葉で書けてるから人柄も見えるし、辻村くんが言ったみたいに、ブルエンの物語として聴くことも出来るんですよね。今回、カップリングに「青」が入ってるのが大きくて。「青」はタイトル通り、ブルエンの物語になっていますが。「青」の<僕たちは『生きる』を重ねる>って歌詞と、「Z.E.R.O」の<どうかあなたは生き続けて>って歌詞とか、共通項が多くて。いま歌いたいことの根本が一緒なんだろうなと思いました。
田邊:確かに強さが一緒だけど、弱さも似てるというか。
――うん、その強さも弱さもあるのが人間だと思うし。そこから田邊くんの人間味も見えてくるし、それがアニメのタイアップから見えてきたのが凄いなって。
田邊:お~、嬉しいですね。今年、最初に「青」を出してることで、いまはブルエンとしての気持ちで隠すものがないんですよね。「青」を「名刺代わりの曲です」ってよく言ってるんですけど、本当にいまのブルエンを表してる曲が「青」で。これが書けたことで、その後の曲たちも制作意欲が増したというのはありますね。<そうだ 青に染まれ>って頭の歌詞が最初からあって、「いま、青って使わなくていつ使う?」くらいの気持ちで作れた曲だったんですが。「一つひとつの言葉を大事に作らなきゃ」と思って、時間かけて歌詞も書いて……あれはちょうどDa-iCEと対バンの日で、入り前に立川の商業施設の隅っこのベンチでMacBookを叩いてましたね。
――あはは。「Z.E.R.O」のサビといい、浮かんだ瞬間の風景は覚えてるもんなんですね(笑)。
田邊:歌詞は「自分って何だろう? この4人ってなんだろう? これを聴いてくれる、その先にいる人ってなんだろう?」ってずっと考えながら、書いては消してを繰り返して。「聴く人全ての主題歌になれ!」と思って書きました。今伝えたいメッセージでもあるし、ブルエンのこれからのメッセージでもあるし、普遍的に大事にしていきたい青い部分も描けたし。青って綺麗な青でもあるし、青二才なんて言葉で使われたりもしますけど、ピュアな部分もカッコ悪い部分も含めて、青を背負っていかなきゃいけないのかなと思ったし。これからもオモロいことはオモロい、やってみたいことはやってみたいって素直に言える4人でありたいってマインドで作ったら、色んなものが見えてきたんです。歌詞が上がった時、高村も「良い歌詞だね」って連絡をくれて。
高村佳秀
――なんだ、高村くんが褒めるのは珍しくないんじゃん。
高村:いや、本当に良いと思ったから、褒めたんです(笑)。
田邊:ずっと一緒にやってると、なかなかそういうことをしなくなってくるから、大事ですよ(笑)。この曲は歌えば歌うほど、自分が整っていくというか。不安定な時もこの曲歌えば、解決するかもって感じがあって。
――なにかあった時、ここに戻ってこれる曲、まさにゼロ地点的な曲ですよね。俺、武道館で「Z.E.R.O」聴いたら泣いちゃうな。
田邊:僕もどういう気持ちになるか分からないです。でも、そういう大事な日に歌うのをを想定して作ったところもあったし、聴く人にとって大事な日の決定打になればいいなと思って。ライブの空間で、みんなとこの曲を分かち合うという良いイメージのまま、希望だけを持って作り進められたし。実際、久々にお客さんとバンドを繋ぐ大事な曲になってくれていて、ライブでは早くも「もっと光を」とか「HANDS」とかの位置に来てくれる曲になってます。
――辻村くんはこのタイミングで出来た「青」には、特別な想いもあるんじゃないですか?
辻村:歌詞を見た時、恥ずかしいなと思いつつ(笑)。僕たち、以前は「4人で同じ方向を向いてなきゃいけない」って、枠にとらわれた時期もあって、よく喧嘩もしてたんですけど。いまは「違う方向を向いてても、この4人が揃えばブルエンなんだ」ってことを理解し合った上で、各々の色を混ぜ合わせての「青」なので。良いところも悪いところも分かってる同士が、大人になって以前とも違った関係性を築きながら、いつまでも少年でいれる4人で作れた曲が「青」だと思ってて。変に考えすぎて大人っぽく作った曲じゃなくて、衝動的でわがままで気まぐれかも知れないけど、それぞれがやりたいことをやれて、この曲が出来たのがすごく良かったですね。
――衝動的な「青」が出来た後、しっかり作り込んだ「Z.E.R.O」が作れてるのも凄いし。青に染まった後、零になって壊すってのも、新たな始まりというか、初期衝動的な感じがあってすごく良いです。
辻村:コロナ禍でモッシュやダイブも禁止になって、バンドの意志が弱くなってるところがあって。いまは「俺たちはこれをやるんだ」って、胸を張って明言出来るバンドが少ないと思うんですけど。だからこそ俺らは「青」ってところで、自分たちの意志を放ちたいと思った、お客さんはそこを理解して、支持してくれると思います。
――そうか、分かった! 俺、今作を聴いて一番嬉しかったのは、いつまでも続くコロナ禍にやきもきしてる中、ブルエンが「ゼロからもう一度始めよう」って高らかに宣言してくれたからだ。
辻村:だと嬉しいですね。そういったところで、それぞれの人生とバンドの人生が重なったりするから、バンドに惹かれるところはあると思うんで。「いま俺たちはこれがやりたいんだ!」っていうのをもっと見せたいし、理解してもらえたらいいなと思ってます。
辻村勇太
――そして、そんな自信満々の新作を掲げて、現在は全国ツアーの真っ最中です。
田邊:いま数カ所終えて、めちゃくちゃ手応え感じてますね。来てくれる人には「安心していいよ!」と自信持ってって言えるくらい、1曲目からラストまでしっかりしたものが出来てるし。過去イチいいんじゃないか?と思うくらい仕上がっています。辻村が言ってたみたいに、以前は「4人が同じ方向を向いていなきゃいけない」って義務感がどこかあって、それがだんだん疑問になって、それぞれに「ブルエンって何?」って気持ちが生まれてたんですが。今年の頭ぐらいから、「俺たちってそうじゃねよな?」って。「元々、全然違うジャンルを聴いて育った4人が集まって、それがいまのブルエンの音楽を奏でているのに、なぜか「ブルエンであらなきゃいけない」っていうのが足かせになってるよね?」って話になって。
――うわぁ、長く続けてきたからの苦悩ですね。
田邊:そうですね。そこで、メジャー1年生、2年生のときは「ブルエンであること」が原動力で動いてたってところもあったけど。いまは何を原動力に動いたらいいのか? って考えた時、「1人1人が気持ちいいところを、その日のライブでやろう。それが4人集まった時、BLUE ENCOUNTになるから大丈夫」って。「それがブルエンだし、それが俺たちのやりたいことだから」って気持ちを切り替えたら、自分たちの中でもめちゃめちゃ楽しいものが出来るようになったし、色んな方たちから「ブルエン、すごくいいね」って言ってもらえるようになって。今回もホールツアーなんだけど、「ライブやってる」って感じが凄いんですよ。ライブを通して1日を噛み締めて、めちゃめちゃ楽しもうって感覚で出来てるから、来てくれる人たちも、その熱量を楽しんでくれてるんじゃないかと思います。
――最高ですね。その感覚で武道館をやれたら、6年半前の武道館とは全然違ったものが見せられそうですね。
田邊:全然違うと思います。あの頃の俺たちが見たら、「あ~、いまの俺たち恥ずかしい!」と思うぐらいのヤツを見せてやろうと思ってます。いま、ツアーで昔の曲たちをふんだんにやってるんですけど、その解釈も変わってて。アルバムの1曲だった曲が、もはや主役になりそうな雰囲気を醸し出していたりして。昔は“ブルエンらしさ”にこだわって、ライブでやらない曲もあったんですけど。いまはどんな曲でもそれぞれの“楽しい”に当てはめて放つことが出来てるんで、どんな曲でもやれる気がするし。武道館は特別なセトリでやろうと考えてるので、楽しみにして下さい。

取材・文=フジジュン 撮影=大塚秀美
BLUE ENCOUNT

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