田島貴男、山本彩、阿部真央ら7組が
登場『Chillin’ Vibes 2022』2日目
オフィシャルレポートーー大阪城を音
楽やヨガ体験で非日常な1日を彩る

『Chillin’ Vibes 2022』2022.10.16(SUN)大阪・大阪城西の丸庭園
10月16日(日)、大阪・大阪城公園西の丸庭園で『Chillin’ Vibes 2022』の2日目公演が開催された。本イベントは「忙しなく、時にストレスフルな日常から離れ、のんびりとリラックスして寛ぐチルタイムは至福のひと時。広々とした緑あふれる公園の芝生の上にシートを広げて座り、大好きな音楽と豊かな思いに浸りながら楽しめるフェス」として、2019年に万博記念公園自然文化園からスタート。
『Chillin’ Vibes 2022』
今年は大阪城天守閣復興90周年を締めくくるイベント『大阪城 夢祭』のひとつとして、大阪府民の憩いの場所でもある、大阪城公園西の丸庭園に会場を移すことに。イベント当日は野外音楽堂や野球場など、大阪城公園一帯で様々な音楽やお笑いのイベントを展開。大阪府内のさまざまなエリアで周遊を楽しむために企画された『大阪来てな!キャンペーン』の一環でもあることから、会場には大阪はもちろん、全国からたくさんの人が会場に集結。イベントタイトルのままに「チル」な雰囲気を存分に満喫していた。
『Chillin’ Vibes 2022』

FM802 DJ・大抜卓人

この日は夏が舞い戻ってきたかのような見事な快晴。ステージには大阪城の天守閣をイメージさせる、コットンロープのマクラメタペストリーやフラッグガーランドが飾り付けられ、開放感たっぷりの雰囲気に。会場には屋根はなく、清々しいほどの青い空が大きく広がるばかりで、ステージに向かって右手の大阪城天守閣が大きな存在感を打ち出していた。桜の木々に囲まれた公園は「チル」するにはぴったりの空間で、集まった観客はチケット特典につく「チルシート」や色とりどりのテントをふかふかの芝生の上に広げ、開演までゆったりのんびりと開放的な時間を過ごしていた。
FM802のDJ・内田絢子「モーニングヨガ」
『Chillin’ Vibes 2022』
UEBO
まずは、FM802のDJ・内田絢子による「モーニングヨガ」レッスンで、体も心もリラックス♪ 新鮮な空気を体いっぱいに取り込んだあとは、千葉県出身のシンガーソングライター・UEBOのライブからイベントがスタート。「一緒に楽しんでいきましょう」と、1曲目「Milk&Coffee」からソフトタッチな歌声で会場を包み込んでいく。
UEBO
心地よく耳をくすぐる柔いメロディに体を揺らし、シートに寝っ転がったり、手拍子をしたりと思い思いのスタイルでライブを楽しむ観客たち。続く「Wave」では、程よく脱力感のあるサーフミュージックに気持ちがほぐれていく。「気持ちいい」に特化し、ジャンルの壁をさらりと超えた音楽の数々に引きこまれ、全4曲のステージはあっという間に終わりを迎えた。

藤巻亮太

藤巻亮太は予定していたセットリストを直前でがらりと変え、いまこの瞬間にぴたりとハマる楽曲陣で魅せてくれた。1曲目、抜けるような青空にぴったりの「太陽の下」から美しいメロ、美しい言葉を連ねていく。たった1曲であっという間に胸がきゅっと掴まれて、「気持ちよく聴いてもらえたら。今日の出会いに感謝して」という言葉に、大きくうなずく観客たち。
藤巻亮太
続く「日日是好日」は弾むようなメロと真っ直ぐな言葉が印象的な楽曲で、心がすっきりと晴れ、優しい光で満たされていくのを感じる。歌詞の最後にある「今日はいい日だな」という言葉がまさに今の瞬間を体現していて、またまた大きくうなずく観客たち。
藤巻亮太
今年でソロデビュー10周年を迎えた彼。節目を祝う新しいアルバムが出せたらと意欲溢れる発言も飛び出した。そして、ソロデビュー前の2011年は色々なことを考え続けた日々だったと語りつつ、「音楽を楽しむ時間は素晴らしいもの。少しずつ光を集め、明日への励みになれば」と、「光をあつめて」へ。優しく、柔く、でも揺るがない芯の強さを感じる楽曲。先ほどまでのふわっとした空気に少しの緊張感が加わって、じっと前を見据えて聴き入る観客たちの姿がとても印象的だった。ライブはその後も「粉雪」「南風」とバンド時代の名曲たちを次々と披露。最終曲「3月9日」まで、新旧様々な楽曲で至福の時間を届けてくれた。
GLIM SPANKY
『Chillin’ Vibes』の常連、GLIM SPANKYは唯一無二の音世界で会場の空気を変えていく。まずは1曲目「レイトショーへと」で真昼の空に、夜の匂いを誘い込む。亀本寛貴(Gt)のブラックミュージックの要素を加味した渋いギターフレーズは開放感ある昼の空にも絶妙にハマっているし、松尾レミ(Vo.Gt)のハスキーでスモーキーな歌声がより一層の陶酔感をもたらしてくれる。次曲「怒りをくれよ」では、アコースティックとエレキ、ギターの辛みがロックの匂いをより一層濃いものにしていく。
GLIM SPANKY
8月にアルバム『Into The Time Hole』をリリースしたばかりの彼ら。「晴れた日に歌いたい」と、「It’ s A Sunny Day」へ。最初こそ、客席前方で2人の音を浴びていたけれど、この日の情景をそのまま写したような牧歌的な言葉の数々に心惹かれて、後方のよりゆったりとしたエリアに移動してみる。芝生の上に直に座って、ぼ~っと彼らの音にまどろんでいるのも最高に気持ちが良かった。
GLIM SPANKY
「ライブハウスの空間も良いけれど、『Chillin’ Vibes』のステージから見る景色が大好き。各々が好きなスタイルでライブを観ることはとても自然な光景。歌っていて気持ちが良い」と、もっと自由にライブを楽しんでほしいとメッセージを届ける松尾。その後も「美しい棘」「形のないもの」、CMソングとして話題になった「ウイスキーが、お好きでしょ」など全8曲を披露。短い時間ながらもアコースティックライブだからこその、丁寧に言葉が届く楽曲陣で観客の心を大いに刺激していった。
『Chillin’ Vibes 2022』
公園内の芝生エリアには自由に過ごせる大型テントやハンモックが設置され、ライブの合間にはヨガやスラックラインなどワークショップが展開され、フードブースではキッチンカーも登場。また、チケットには重要文化財に指定されている「大阪城の櫓」への入場料も含まれていて、観客は思い思いの楽しみ方でイベントを満喫していた。
SKY-HI
サウンドチェックからジャムセッションのようにご機嫌なリリックを投下し、観客を興奮させたSKY-HI。「ナナイロホリデー」からタイトルのままにキラキラとした、ご機嫌なビートが観客の体を揺さぶっていく。SKY-HI自身もビートに体を任せ、「良い天気だねぇ」と呟きながらステージをゆらりゆらりと歩きながら自由な雰囲気を楽しんでいる。
SKY-HI
秋晴れどころか夏に逆戻りしたような暑さとなったこの日。「晴れすぎだろ、いくら何でも♪」と、あまりの日差しの強さに驚きつつも、SKY-HIの名前の通り、これまで出演してきた野外フェスで雨だったことは一度もない「最強の晴れ男」っぷりをアピール。そして、電子機器に支配される昨今、芝生の上でのんびりとアンプラグドなアコースティックライブを楽しむことは「人間らしさを取り戻せる」と、イベントに出演できたことを喜びつつ、「ゆっくりまったりしつつ楽しんで」と、「I Think.I Sing.I Say」でラフなラップでラブでピースな空気を生み出していく。
SKY-HI
ステージ後半は「自分のステージ、好きなように過ごさせてもらう!」と、先ほどまでのラフな雰囲気から一転し、「Bitter Dream」からエネルギッシュなパフォーマンスに。ビートはより強く重厚に、ハイスキルなラップが矢継ぎ早に繰り出されていく。「同じ時間を過ごせて幸せでした」、自身のスタイルを存分に打ち出したステージに大きな称賛の拍手が届けられた。
阿部真央
太陽の光がより一層濃くなる頃、凛とした出で立ちでステージに現れた阿部真央は、ハイトーンのヘアスタイルが太陽の光でより一層煌めいて見える。ライブのスタートを飾ったのは名曲「貴方の恋人になりたいのです」。円熟味が増した歌声が言葉に込められた思いをより鮮明に浮き出していく。切なく、愛しい思いを綴っているけれど、歌い終わりの晴れやかな笑顔にあっという間に心奪われてしまう。昨年からソングライティングの楽器をギターからピアノに換えた彼女。続く「天使はいたんだ」ではピアノの優しい音色を奏でながら、美しい高音域の歌声をさらりと聴かせてくれた。
阿部真央
「自分なりのチルな曲を」と披露したのは「I Never Knew」「Sailing」。温もりと安心感のある歌声、心地よい音の揺らぎ、アコースティックならではのゆるりとした音世界に身を預け、気持ちよさそうに体を揺らす観客たち。かと思えば、「ロンリー」ではステージの際ギリギリまで身を乗り出し、満面の笑みを浮かべて可憐な歌声を響かせる。切ない恋心を詠った曲だけれど、ポップなメロとのギャップにまたまた胸がキュンとしてしまう。
阿部真央
最終曲はこれまでの淡い恋心を描いた楽曲陣とは一転し、8月に配信されたバラード曲「Who Am I」を披露。「搾取される愛」「支配的な関係」……と曲に込めた想いを切々と語り、「同じ気持ちを持つ人に、何か届けば」と、静かに、淡々と、落ち着いた声で思いを綴っていく彼女。喜怒哀楽だけじゃない、気付きを知る音楽は圧倒的な存在感を持っていて、歌唱が終わってもなお彼女の強い思いに心が揺り動かされていた。

『Chillin’ Vibes 2022』
『Chillin’ Vibes』はステージの転換中も音楽が鳴り止むことはない。会場後方では「GOOD MUSIC LOUNGE」なるDJセットも登場。twilightclubs、SENDA、HALFBY、AGEISHIらが、ライブの流れを繋げるようなご機嫌な音楽を届けてくれた。
山本 彩
イベントもいよいよ終盤。夕暮れが近づき、秋雲がオレンジに染まる頃、地元大阪出身の山本彩の登場に会場からは大きな拍手が沸き起こった。パンツスタイルにワンピースのようなロングシャツ、黒のロングブーツと、キリっとした出で立ちで登場した彼女は「JOKER」から抜け感のある繊細な歌声を響かせていく。次曲「feel the night」ではイスに座っての歌唱ながらも、しなやかに手を舞い、表現力豊かに歌いあげる。
山本 彩
昨年報告された体調不良もあり、地元大阪でのライブはもちろん、有観客でのライブは約1年ぶりだという彼女。緊張感を持っての出演だったが、観客の温かい気持ちが嬉しいと柔らかな表情を見せると、観客も拍手で彼女の思いに応える。そして気合いも新たに、続く「yonder」では足元で力強くリズムを取り、「イチリンソウ」ではブレのない芯の強い意志を丁寧に綴っていく。
山本 彩
MCではちびっ子の掛け声に満面の笑みで応えたり、ステージの合間には歌唱に熱が入ってか腕まくりする姿も見えて、この日のステージに懸ける彼女の強い思いがうかがえる。ライブ後半にはアコースティックセットでのライブながら、「まだまだいきますよ!」と「TRUE BLUE」からアッパーなライブパフォーマンスを展開。最終曲の前には「これからも自分の可能性を信じて、音楽を奏で、届けていきたい」と、熱い思いを語り「レインボーローズ」まで全8曲を駆け抜けた。
田島貴男
ポップスからロック、フォークにヒップホップにと、多彩な音楽がアコースティックセットで鳴り続けた『Chillin’ Vibes』もいよいよ大トリのステージへ。日は沈み、空は淡い夜の色へと変わっていくなか、真っ赤なシャツを羽織った田島貴男がステージに登場。この日のライブはここ数年、彼のライフワークにもなっている「ひとりソウルショウ」でのパフォーマンスだ。ギター片手にループマシンを使って音を重ね、ステージをキックしてリズムを生み出すフットスタンプや、ギターのボディをタップして音を生み出すボディ・ヒットなど、「ひとりバンド」でのライブ。1曲目「優しい手」から唯一無二の歌声を響かせる。
田島貴男
「フリーライド」ではリゾネーターギターをかき鳴らし、複雑に音を重ねていく。卓越したプレイ、日本人離れしたソウルフルな歌声、全身で音を生み出すブルースマンの圧巻のプレイに観客はただただ夢中になって聴き入っている。そして、名曲「接吻」もこの日は武骨なアレンジでお届け。歌声はより濃厚に、ギターのメロも甘いけれど武骨なアレンジに仕上がっていて、聴くほどに渋みが増していく。
「座ってじっとしてる音じゃない! 体を動かして、バンドがいる幻影を見て!」と観客を煽り、「フィエスタ」へ。血が滾るようなソウルフルで多幸感に満ちた楽曲は祭りで賑わった1日を締めるのにぴったりな選曲だ。極上の音で満たされる喜びに浸っていると、ステージはあっという間に最終曲「希望のバネ」に。高まる情熱を音にぶつけ、アグレッシブにギターをかき鳴らし続ける彼。ジャズにソウルにブルースに、幅広い音楽性を以て、観客を自らの世界に引きこんだライブが終わると、心地よい高揚感が全身を纏っていた。
田島貴男
2日間に渡って開催された今年の『Chillin’ Vibes』はこれにて終幕。次はどこの公園で至福の時を過ごせるのか。来年の開催を楽しみに待ちたい。
取材・文=黒田奈保子 写真=オフィシャル撮影(撮影:渡邉一生)

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