『クラシック・キャラバン2022』大阪
公演に登場するクラリネット奏者・赤
坂達三に聞く意気込み

クラシックのそうそうたるアーティストと名曲を乗せた「コンサート」という名のキャラバンが、北は北海道、南は沖縄まで、13地域21公演に渡り開催される。オーケストラやオペラアリアなど、各地のために用意された豪華な特別プログラムを展開していく『クラシック・キャラバン2022』は、一般社団法人日本クラシック音楽事業協会が企画した大規模プロジェクトだ。今年は昨年に続いて2回目を迎える。
大阪公演は10月22日(土)にザ・シンフォニーホールで行われる。モーツァルトの2作品に始まり、ロマン派の華麗なる協奏曲が続き、ビゼーとプッチーニらのオペラの名曲などが華麗に歌われ、シベリウスの交響詩「フィンランディア」で幕を閉じる。
今回は、大阪公演に登場するクラリネット奏者の赤坂達三にインタビュー。公演ではモーツァルトのクラリネット協奏曲第1楽章を演奏予定だ。今回の大規模企画にかける思いや、コロナ禍を経ての心境、そして作品へのこだわりを聴いた。
■新たな希望を提示するキャラバン企画
――『クラシック・キャラバン2022』への出演を決めた背景を教えてください。
所属事務所から「大規模なイベントがあるから出演しないか」と働きかけていただいたのがきっかけでした。ザ・シンフォニーホールという大きなホールで、たくさんのミュージシャンやスタッフが集まるということで、新しい出会いに期待し、「こんなに素晴らしいコンサート、ぜひ参加したい」と希望を持ったのが決め手でした。
――新型コロナウイルスを乗り越え、再び業界を強く動かしていく。それが今回の企画のコンセプトかと思います。赤坂さんご自身、コロナ禍以降に音楽活動や心持ちについて変化はありましたか?
コロナ禍を迎えて、はや2年半が経ちますね。この間、イベントが延期や中止になったり、無事に開催できたとしても半分の人数しか収容できなかったり、生々しい話をすると開催すればするほど赤字になってしまうこともあったりで、一時は「これからどうなってしまうのだろう」と不安になることもありました。
――改めて音楽の存在意義を考え直す音楽関係者が多かったのではないかと思います。
そうですね。今は100%とは言えないものの、状況は良くなった印象があります。最近、たくさんの演奏家と共演できる全国ツアーに参加する機会があったのですが、多くの方と懇親を深めて輪が広がった印象があって。そうした機会が戻ってきたのだなと思います。おかげさまで、自分の中でも明るい気持ちになれた気がします。
そんな折に今回の『クラシック・キャラバン』に出演することになって。まだまだ縮小傾向のある公演も少なくない中、逆にこれほど大きいことをやるのだという心意気に感動しましたね。
■国・地域と音楽の関係性
――赤坂さんは大阪公演にご出演されますが、大阪という土地に対して何か印象はありますか?
僕は大阪府高槻市で生まれたんです。高槻市でのイベントにも何度か呼んでいただいたり、大阪でリサイタルを開催したり、ザ・シンフォニーホールにも出演経験があったりで、たくさんの思い出があります。
――大阪と東京では聴衆の反応やノリが違う……という演奏家の方もいらっしゃいますが、赤坂さんはいかがでしょうか。
コンサートの印象というよりも、やはり方言や人柄に違いを感じますね。
僕は広島にも8、9年ほど住んでいたことがあるのですが、やはり広島も広島で特色がある。住み始めた当初は方言や文化の違いに戸惑うこともありましたが、だんだん慣れていくと同時に、その町に貢献したい気持ちも芽生えたりしていました。
――日本国内の地域に限らず、ドイツ人作曲家やフランス人作曲家など、国の言語が作風や音楽の作り方に表れると言われることもありますよね。赤坂さんご自身、フランス留学や日本国内のいくつかの地域に住んできた経験から、国や地域の違いは音楽づくりに影響があると思いますか?
ないとは言えないと思います。フランスはおしゃれだけれどもちょっとツンとしていたり、ドイツはきちっとしていたり……そんな印象がありますね。ただ国や地域に限らず、私がご一緒してきた演奏家には共通点があります。それは、「いい音楽が作りたい」「いい演奏がしたい」という強い思いです。
かつて初めてベルリンに行った際に、「一緒に演奏しようよ」と言ってくれたベルリンやウィーンの演奏家がいて、最初は「自分はドイツ語は話せないし」と心配していたら、「何言ってるんだよ。音楽は世界共通なんだよ」と励ましてくれたのが忘れられません。
――国や地域が違っていても、音楽を追求する姿勢は同じ。たくさんの地域にクラシックを届ける「クラシック・キャラバン」に通じるものがありますね。
■モーツァルトのあらゆる表現が詰まったクラリネット協奏曲
――今回はモーツァルトのクラリネット協奏曲第1楽章を披露されますが、クラリネット奏者にとっては特別なレパートリーなのではないでしょうか。
その通りです。僕自身、CDで録音もしたことがあります。僕個人の思いを語るよりも、作品の存在が偉大すぎますね。これはモーツァルトが亡くなる数ヶ月前に残した曲。親友でクラリネット奏者のシュタードラーの深く聡明な音に感激して作ったそうです。たまたま最晩年の作品になってしまったわけですが、それでもモーツァルトのいろんな表現が詰まっていると思います。楽しさ、華麗さ、悲しみ、音楽を慈しむ心。何度も吹いてきましたが、毎回たくさんの発見がありますね。
それにしても、モーツァルトの歌劇「フィガロの結婚」序曲で古典から始まり、だんだんロマン派の派手さを増して、シベリウスで収めていく。すごくよくできたプログラムだと思います。
――今回の演奏会に期待を膨らませているお客様も多いのではないかと思います。
そうですね。名曲がたくさん入っていますし、クラシック通の方はもちろんのこと、クラシックに縁のないお客様でも「クラシックってこんなに楽しいんだ」「別の作品も聴いてみよう」と思っていただくのが奏者として本望です。世代の若い演奏家の方も多く、僕自身新たな広がりやつながりが持てるのも楽しみです。
取材・文=桒田萌

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