ゆいにしお

ゆいにしお

【ゆいにしお インタビュー】
一緒に作ってみたい人と、
その時に作りたい楽曲を作っていった

25歳になったゆいにしおが感じる葛藤や不安、そして喜び。さまざまな心境と向き合いながら挑戦し続ける彼女が完成させたメジャー1stフルアルバム『tasty city』は、まさに明日を生きる私たちへのエールだった。聴いた人が前向きになれる、そんな今作について話を訊いた。

25歳の自分だからこそ
届けられるリアル

メジャーデビューをされて心境の変化はありましたか?

インディーズ時代とは違う責任感はありますが、気負いしすぎていることもないので、いい緊張感の中でやれています。生活に寄り添えることや、同世代の女性を応援したいという想いがこれまでも一番にありましたし、今後はそこをより強く出していきたいと思っています。ありがたいことに、それができる環境でありチームなので、今作もリラックスしながら制作できました。

今作には新曲も多く収録されていますが、制作当初には“こうしたい”というイメージがあったんですか?

特にコンセプトは決めていなかったです。純粋に一緒に作ってみたい人と、その時に作りたい楽曲を作っていったという感覚でしたね。“tasty city”というタイトルも、ファンクラブ名であることや、楽曲の中に食べ物の名前が多く出てくることから決めたものなので。でも、いつもよりも悩まずに制作できたように思います。

今までは結構悩んでいたのでしょうか?

そうですね。3rdミニアルバム『うつくしい日々』(2021年11月発表)を作っていた頃は結構スランプ状態だったのですが、最近はそこから抜け出せたように思います。言いたいこともスルッと歌詞にできるようになったし、メロディーも自分好みのものが生まれるようになってきたので。抜け出せたきっかけというか、これは荒療治だと思うんですけど、スランプであろうが関係なく、ひたすら楽曲を作り続けていったことが効いたんだと思います。うちのチーム、かなり体育会系なので(笑)。

なるほど。以前のインタビューで、“今まで書いてこなかった不倫をテーマにした曲もある”とお話されていましたが、それってもしかして「チートデイ」ですか?

そうです! 「チートデイ」はアルバムを作るにあたって最初にできた楽曲ですね。

「チートデイ」も異色ではありますが、今作1曲目の「CITY LIFE」も《1音目から完璧な音楽》というフレーズで始まりますし、今までのゆいにしおさんにはなかった一面が垣間見えました。

ほのぼのした楽曲ですが、1行目がパンチありますよね。でも、そのパンチラインがトップにある楽曲を作品の最初に持ってくることで、“名刺代わりの作品にするぞ!”という気概を示したかった意味もあります。《30になれば望んでいないような/呪いも晴れて解けてくるはずでしょう/張り付いたままの笑顔で/また別の呪いがかかる》というフレーズも攻めていると思っていて。今、私は25歳なんですけど、この年齢っていろんなことの境目なんじゃないかと思うんです。結婚する人もいれば、別れる人もいるし、仕事に専念しようと意気込む人もいる。そういう分岐の歳だなと。なので、そういった同年代の方に響くように、具体性のある歌詞を書いた楽曲です。

確かに20代半ばって、いろいろと環境や心境も変わるタイミングではありますよね。先ほど出していただいたフレーズでは、“呪い”という言葉をキーワードにしてポジティブ/ネガティブの双方を描いていると思うのですが、その表裏一体というテーマは「sun shade」にも通じていると思いました。

ふたりの女子高生が主人公になっているノベルゲームのタイアップとして制作した楽曲なので、その世界観をイメージしながら歌詞を書きました。10代の頃って思い返せば楽しいことばかりのように見えるけれど、10代特有の悩みもあったし、行動も制限されているからこその閉塞感もあったと思うんです。そうした二面性を光と陰に例えて書いていきました。

なるほど。タイアップとしての楽曲提供も増えてきましたね。

ありがたいことです。自分がオタクなので、アニメの楽曲を聴いた時に、その中にちゃんと物語のエッセンスが入っているとアガるんですよね。なので、タイアップのお話をいただいた時には、ゆいにしおのファンの方だけでなく、アニメやドラマの視聴者の方にも“おっ!”と思ってもらえるように意識しています。「息を吸う ここで吸う 生きてく」もアニメのタイアップとして書いた楽曲なんですけど、その作品に出る声優さんの名前に引っかけるような歌詞にしているんですよ。

聴いていてそこに気がついたらテンションが上がりそうですね! そうしたタイアップ楽曲を通じて得た新たな視点だったり挑戦だったりというのは、今作にも活きていると思います。「mid-20s」やピアノバラード「パレード」は、サウンドとしても今までにないものになっていますし。

そうですね。今回は初対面の方から友人まで総勢8名のアレンジャーにお世話になったので、楽曲ごとにいろいろな挑戦や変化が込められています。その人ごとに取り組み方も違うので、すごく刺激になりました。特に「パレード」は思い出深いです。私が以前から好きだったシンガーソングライターのmekakusheさんと共作したのですが、お互い共作するのが初めてだったので、“どうします?”と探り探り作っていきました。その会話の中で、互いの楽曲の中にCコードをキーにしたものがないという共通点があることに気づいて、“じゃあ、それで作ろう!”ということで制作していきました。

歌詞にもメロディーにも包容力があって、こちらの解釈に委ねてくれるような余白の多いストーリーになっていますよね。

mekakusheさんが弾いたピアノのフレーズからインスピレーションをもらって、あとから私がちゃんとしたメロディーと歌詞を作るという、今までにない作り方をしたんですよ。歌詞にはmekakusheさんが飼ってらっしゃるペットロボットと、彼女の生活を描いているんです。その中でいろいろな方の生活にも寄り添えるような余白を含ませました。その点でも、今までの書き方とは違いますね。今までは生々しい歌詞が多かったんですが、江國香織さんの文体に近しいといいますか、詩的な仕上がりにしました。この作り方で楽曲制作をしたという経験は、自分にとっても大きな自信になりましたし、今後の制作にもどんどん取り入れていけたらいいなと思います。
ゆいにしお
アルバム『tasty city』

OKMusic編集部

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