串田和美が記憶が80分しかもたない数
学博士に 脚本・演出は加藤拓也、舞
台『博士の愛した数式』の上演が決定

2023年2月、長野県の松本と東京で、舞台『博士の愛した数式』が上演されることが決定した。
本作は、欠落や喪失をテーマとした作品を描き続けている芥川賞作家で、紫綬褒章も受章している小川洋子が03年に発表し、翌04年第55回読売文学賞を受賞、第1回本屋大賞を受賞したミリオンセラー作品。06年には映画化もされている。
交通事故による脳の損傷をきっかけに、記憶が80分しか持続しなくなってしまった元数学者「博士」と、彼の新しい家政婦である「私」と、その息子のぎこちないながらも驚きと歓びに満ちた日々を、美しい数式と共に描いた悲しくも温かな奇跡の愛の物語だ。
「博士」は、今年80歳を迎えた串田和美が演じる。俳優で演出家、また舞台美術家でもある串田は、1966年、劇団自由劇場を結成(後のオンシアター自由劇場)。85年から96年までは、東京のBunkamuraシアターコクーンの初代芸術監督を務め、コクーン歌舞伎やレパートリーシステムの導入で劇場運営の礎を築いた。2003年4月、まつもと市民芸術館館長兼芸術監督に就任(08年から芸術監督、21年より総監督)。なお、 本公演の企画制作は、まつもと市民芸術館が担当している。まつもと市民芸術館において、串田は『信州・まつもと大歌舞伎』『空中キャバレー』『K.テンペスト』など、劇場を自由自在に使いこなす演出や地域を巻き込んだ “松本ならでは”の事業を次々と実現してきた。16年には「Flying Theatre 空中劇場」、17年「トランクシアター」シリーズを始動し、劇場以外での上演にも精力的に取り組んでいる。07年に読売演劇大賞最優秀演出賞受賞。08年には紫綬褒章、13年に旭日小綬章を受章。15年には代表作のひとつである『スカパン』がルーマニアのシビウ国際演劇祭に正式招聘され、同年にシビウ・ウォーク・オブ・フェイム賞を受賞し、今秋、同作品の4都市ツアーが予定されている。
「私」役を担うのは、1990年に『アニー』でデビューを飾り、舞台・映像問わず活躍を続け演技には定評のある個性派俳優・安藤聖。「ルート」役は、元乃木坂46で、俳優に転身後、幅広く活躍をする井上小百合。そのほか、2007年に串田和美の呼びかけで結成された劇団「TC(Theater Company)アルプ」の旗揚げメンバーである近藤隼、串田作品ではすっかりおなじみの草光純太、そして「未亡人」役は82年より劇団青年座に所属し、コメディーからシリアスまで幅広い役どころをこなす増子倭文江が演じる。
(上段左から)串田和美、安藤聖、井上小百合(下段左から)近藤隼、草光純太、増子倭文江
脚本・演出を手掛けるのは、気鋭の演出家として注目を集める、「劇団た組」の加藤拓也。1993年生まれの加藤は、高校在学中に構成作家として創作活動をスタート。18歳でイタリアに渡りMVを作り始めた。2015年には、劇団た組で『博士の愛した数式』を上演している。その後も押見修造の『惡の華』、西原理恵子の『パーマネント野ばら』など有名原作を続々と舞台化。『平成物語』(フジテレビ系)、『俺のスカート、どこ行った?』(日本テレビ)、『きれいのくに』(NHK総合)など映像の脚本も担当し、2022年6月には、加藤のオリジナル脚本である『わたし達はおとな』で、映画監督デビューを飾っている。
なお、今回の『博士の愛した数式』は、劇団た組が上演したものとは異なるバージョンとなる。
【STORY】
[ぼくの記憶は80分しかもたない]博士の背広の袖には、そう書かれた古びたメモが留められていた──。
主人公である「私」は、 ある初老の男性「博士」の元へ家政婦として派遣される。「博士」とは、 交通事故の後遺症で記憶が80分しかもたない元大学教師の数学博士。彼の「私」への第一声は、「君の靴のサイズはいくつかね?」だった。 数字で物を語る博士に、 初めは戸惑う「私」だが、やがて安らぎを見出していく。
ある日、「私」に10歳の息子がいることを知った「博士」は、一人で留守番している息子を、学校が終わったら「博士」の家に向かわせるようにと「私」に告げる。「博士」は、息子の頭がルート記号のように平らだったことから、息子を「ルート」と名付けた。
こうして、「博士」と「私」、そして、「ルート」との、 やさしく、穏やかな生活が始まった。

「博士」役:串田和美 コメント
この小説を読んだとき、何故だか分からないけど、わぁ。この役をやってみたいなぁ。と、思ったのが最初の印象です。僕はずっと『記憶』と言う物に興味があって、記憶がなくなるって、どういう事なんだろうなぁと。
そしたら、加藤くんもこの作品が好きで、やったことがあるって聞いて、だったら、いつか一緒にやりたいねって話して……それがこうして実現して嬉しいです。
まだ若かった加藤くんがいきなり僕に電話をくれて、それなら会わなきゃ行けないねって、吉祥寺で待ち合わせをしました。そこには、かわいらしい顔の男の子が立っていて、「あれ? 君が加藤くん?」と(笑)それが加藤くんとの始まりでした。それからたくさん話をして、そして一緒に仕事をしました。ワークショップで松本に来てくれた時、加藤くんが「串田さんが松本に居るの分かる気がする」と松本を好きになってくれました。そんな加藤くんと、松本でどんな稽古になるのか、どんな舞台になるのか、今からとてもワクワクしています!
脚本・演出:加藤拓也(劇団た組) コメント
串田さんと初めて会ったのは吉祥寺の喫茶店でした。喫茶店が開店したばかりの、僕と串田さんの二人とマスターしか居ない静かな場所で、静かに話をしました。あまりに年齢の離れた僕に、少し照れているような仕草で僕を見つめる優しい眼差しが印象的でした。演劇を一緒にやりたいんですけれどというお誘いが直接的過ぎたのかもしれません。それから僕は串田さんに一緒に演劇をすることになりました。大量の台詞とバットで殴られ体を半分に折って冷蔵庫に詰められるというアクション付きです。とても大変な役回りでしたが、公演が終わる度にニコニコしながら演劇が楽しいんだと言っていました。はっきりと覚えています。僕はこの人のことが好きになりました!
『博士の愛した数式』は数年前に一度上演しました。小川洋子さんの柔らかな言葉と、思いがけない毒と、この小説のことが好きだったからです。水面に波を立てないように手を入れ、底から血液を拾う、そんな言葉達が好きになりました。そんな話を稽古中に串田さんにすると、串田さんもこの小説が好きだと言っていました。その時にもう一度やりたいと思いました。串田さんを博士で、串田さんと初めて会った時の、あの少し照れているような仕草と眼差しが博士なんだと思ったのです。そして演奏は谷川さんにお願いしました。俳優を見ながら音楽を作る、そして小川洋子さんの言葉に寄り添える人はこの人しか居ないと思ったからです。
この作品を上演できることが本当に嬉しいです。是非観に来てください。

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