『爆裂都市(BURST CITY)
オリジナルサウンドトラック』は、
陣内孝則、大江慎也らが
自ら音をかき鳴らした規格外の劇伴
“博多のロック”のスーパーセッション
[今の現代社会、東京もだけど、「野生」っていうものは、見えない。というか‥‥本来ぼくらは地球の上に住んでて、巨大な宇宙の中の「地球」という惑星の中に住んでて。地球の、「ある所」に住んでるんですよね。そういう当たり前の「野生」というか、ワイルドな力の中に、奇跡的に生きてるんだけど、都会の24時間の世界に生きてると、「野生」とかそういうものって、一切必要ないですよね。いらないんですけど‥‥俺は必要としてると思うんです。「ロックにひかれる」とか、「うわーこのベースかっこいい!」「ドラムの音がズンズンくる!」とか、「ガムランいいねー」とか。そういうことを、「本能」っていうのが、求めてるんだと思うんですよね。]([]は『ほぼ日刊イトイ新聞/インディーズ映画の冒険野郎。石井聰亙監督の話をふむふむ聴く。』からの引用)。
これは浅野忠信、永瀬正敏が主演した2001年7月公開の短編特撮アクション映画『ELECTRIC DRAGON 80000V』についてのコメントではあるが、そのまま『爆裂都市 BURST CITY』にも当てはまると思う。都会において“野生の本能”が求めるもの──引いては都会において“野生の本能”を呼び覚ますものとして石井監督はロックミュージックを用いているのだ。本作の舞台は近未来の架空の都市であるのものの、サイバーっぽさがほとんどなく、圧倒的に野蛮で粗野なイメージを強く感じさせる。それは劇伴の影響が大きいのかもしれない。
で、その肝心な劇伴。出演してるザ・ロッカーズ、ザ・ルースターズ、ザ・スターリンの楽曲も使われているが、いくつかの楽曲が劇中に登場するバンド“バトル・ロッカーズ”名義である。ここまで説明して来なかったので一応説明しておくと、“バトル・ロッカーズ”とは本作の主役のひとつと言っていい存在で、前述した陣内、鶴川、大江、池畑に、オーディションで選ばれた伊勢田勇人(Ba)を加えた5人編成のバンド。つまり、本映画用に結成されたバンドである。しかも、1980年代の“博多のロック”の第二世代≒いわゆる“めんたいロック”の2バンド、ザ・ロッカーズとザ・ルースターズとのタッグだった。当時のシーンをど真ん中で浴びていた人たちにとってはかなりのニュースだったかもしれない。映画の公開と当サントラの発売告知を兼ねたフライヤーがネットに上がっているのを見つけたが、そこには“超話題! 旋律のスーパーセッション、バトルロッカーズ登場!!”との惹句が踊っていた。界隈ではまさに“バトル”と呼べるような顔合わせだったのだろう。