【門脇更紗 インタビュー】
今までの自分自身を
全て出せたような一枚になった
エヴァーグリーンなサウンドと等身大の歌詞、さらに中毒性のある歌声が魅力の門脇更紗。待望のメジャーデビューアルバム『ファウンテンブルーに染まって』には、彼女がデビュー前から温めていたナンバー、いしわたり淳二や佐伯youthKのプロデュースのもと作られた楽曲など、聴き応え十分な作品に。そんな今作の制作について話を訊いた。
ちょっとずつ自分との共有点を
見つけて成長していきたい
メジャーデビューアルバムとなる『ファウンテンブルーに染まって』はどのような作品になりましたか?
デビューする前から制作していたメロディーが完成したり、デビュー後にリリースした曲、そしてこのアルバムのために作った曲がギュッと詰められているので、今までの自分自身を全て出せたような一枚になりました。
デビューしてからはどんな心境の変化がありました?
最近は“昨日や明日を見ないで、今を生きる”を軸にメッセージを伝えていきたいと思うようになったんです。恋愛も悔いがあったとしても、それを糧にして今を生きるということを伝えていきたいと、この一年くらいで思うようになりました。
それはどんなきっかけがあったのでしょうか?
コロナ禍に入って、家にいる時間が増えたからこそ自分と向き合い、気づくことができたんです。私自身、ポジティブではありますが、どうしてもそう思いきれない時もあるんですけど、そこも良いところなのかなって思えるようになったんですよね。
他にも気づいたことはありますか?
…めちゃくちゃプライドが高いことに気がつきました(笑)。
そうなんですか!?
はい(笑)。できないことに関しては、プライドはまったくないんですよ。例えば勉強は苦手なので、自分ができないことが分かっているから、どんなに自分より頭がいい子がいても何とも思わなかったんです。でも、他の人の曲をカバーする時に、流行っている曲を歌うのが苦手なので、それはなぜかと考えたら、やっぱり悔しい気持ちがあるからなんですよね。そこで勝手に“自分っぽくない”って判断してしまうこともあるんです。それはダメだなって思っていて。
でも、そうやって言葉にできるということは、それを乗り越えようとしているところですし、悪いことではないですよね。
そうですね。それこそTikTokもすごく苦手で壁があったのですが、今は絶対にやるべきだと思って、ちょっとずつやり始めているんです。これからもちょっとずつ自分との共有点を見つけて成長していきたいですね。
そういった心境の変化があると書く歌詞も変わってきますよね。
そうですね。以前はメロディーから作ることが多かったんですけど、メッセージを伝えたいと思うようになってからは歌詞を先に作ることが増えたんです。
それが色濃く出た曲はありますか?
「きれいだ」かな? 最初の《頑張れ以上の言葉があるなら/想いをちゃんと伝えられるのに》という言葉は、私が中学を卒業する時に友達からもらったものなんですよ。すでに周りは私が音楽活動をしていることを知っていて、仲の良い友達がこの言葉を手紙で書いてくれたんです。“もし、“頑張れ!”以上の言葉が見つかったら、更紗ちゃんに一番最初に伝えるね”って言ってくれて。
そのエピソードだけで泣けます…。
あははは。友達にこの曲を作ったことは恥ずかしくて伝えていないので、気づいてもらえたら嬉しいですね。
楽曲と歌詞のプロデュースでいしわたり淳二さんや佐伯youthKさんの名前が並んでいますが、どんな作業をしたのでしょうか?
佐伯さんとは「scroll」を共作させてもらったのですが、一緒に作ることで私だけでは絶対に出てこない言葉が出てきたのですごくいい経験になりました。特に“たゆたう”は自分では使わないし、すごくいい言葉ですよね。いしわたりさんとはいろいろ教えてもらう中で、情景描写や時間帯、その人が何歳なのか…脚本ではないですが、そういった細かいところまで考えるようになりました。
「私にして」はwacciの橋口洋平さんが歌詞を手がけているんですね。
はい。本当に驚くほど切ない曲なんですよ。橋口さんとは年齢も離れているし、性別も違うのに、“なんでこんなに刺さる言葉を持っているんだろう?”と思って感動したんです。物語を想像させてくれるような歌詞だったので、歌詞を書く身として勉強になりました。
実際に歌ってみていかがでしたか?
誰かの歌詞で歌うのは初めてでしたし、メロディーは私が作っているからカバー曲とはまた違うので、すごく不思議な感覚でした。ただ、歌詞をいただいている身として、“絶対に間違えてはいけない”という使命感がすごかったんですよ。ライヴで披露する時も他の曲より一歩飛び抜けて緊張するんです。
橋口さんの歌詞はひと文字違うだけで意味が変わってきますからね。
そうなんですよね。なので、この曲を早く自分のものにしたいと思っています。
「真夏のサイダー」はすごく夏らしいワードが詰まった楽曲になりましたね。
これは数年前に作った曲なんですが、7月にリリースするということで引っ張り出してきました(笑)。歌詞の《しゅあしゅわ》がポイントなんですよ。
あえての《しゅあしゅわ》なんですね。
はい。私は歌詞をスマホで書いているんですが、入力を間違えて《しゅあしゅわ》になっていて。そのままにしていたら、改めて聴いた時に“こっちのほうが面白いな”ってなったんです。
ライヴですごく楽しめそうな曲ですね。改めてサウンドや歌詞で大事にしたいと思ったことはどんなことですか?
今だからこそ書ける曲を残したいと思うようになりました。「東京は」という曲もそうなんですが、上京する前に兵庫と東京を行ったり来たりしている時に書いた曲なので、今だったら絶対に書けない言葉が並んでいるんです。というのも、今は上京して2年が経っているから、今の気持ちでしか歌詞がかけないんですよね。だからこそ、今は毎日の小さな幸せ、小さな不幸も見逃さないように、ひとつずつ曲にしていきたいと思っています。
年々書きたいことは変化していきますよね。
そうですね。場所や見る景色、解釈なども、気づかないうちに変化していると思います。