Quubi、「みんなと一緒にもっともっ
と高いところに行きたい」初の東京ワ
ンマンに見た光

Quubi ONEMAN LIVE 「G.O.A.T」 2022.06.19(sun) Shibuya eggman
いま、大阪のアイドルシーンが大きく動いている。PassCodeやKolokolが所属するwe-B studiosからAxelightが5月にデビューし、we-B studiosと、uijinを手がけていた事務所sakebiの共同プロジェクトによって結成されたyosugalaが今月デビューしたばかりで、いずれも話題になっている。そんな2組に先行して、昨年関西を中心にライブ制作などを行っているKiTSUNE WORKSから昨年9月にデビューを果たした4人組がQuubiである。
鈴猫りさ、藤宮紬、村上華花、川原みなみによるエネルギッシュかつ、キレのあるパフォーマンスは瞬く間に話題となり、結成から1年経たずして、東京でワンマンライブを行うことになった。会場はShibuya eggman。なんとソールドアウトである。各種配信サービスで音源が聴けるとはいえ、全国流通盤が1枚もリリースされていない状態でこの結果は驚き。しかも、彼女たちが所属しているのは大手事務所ではない。地道なライブ活動と楽曲の力でここまでのし上がってきたのだ。実際、観るたびに別のグループかと思うぐらい急成長を遂げていたのは確か。本公演のソールドアウトは不思議でも奇跡でもないのである。
Quubi
会場前には長蛇の列ができ、オープンと同時に次々と地下へと吸い込まれていく。場内は熱気と興奮で溢れていて、これから繰り広げられる4人のステージへの期待感の高まりが伝わってきた。
定刻から5分遅れで客電が落ちると盛大な拍手。オープニングSEが鳴ると拍手の音は一層高まった。耳が痛いぐらいの大音量は無事にこの日を迎えることができた4人へ向けた祝福の意味もあったかもしれない。
Quubi
ライブは「G.O.A.T」からスタート。Quubiの楽曲はロックをベースとし、シンセを多用したサウンドが基本スタイル。彼女たちの場合はスクラッチを効果的に取り入れているところが特徴的である。わかりやすく例を挙げるとMAN WITH A MISSION的な方向性だと言える。「G.O.A.T」はまさにそういう楽曲だ。
ボーカルは村上と鈴猫が中心となって牽引し、ラップパートは川原と藤宮がメインで担うという形が明確に出来上がっているため、グループとしての個性が伝わりやすい。さらに、歌は生歌に重きを置いている。ボーカルを被せることで聞こえのよくする手法を否定はしないが、Quubiの場合は、生々しさや熱量をよりダイレクトに届けることを可能にする生歌での歌唱が合っていると思う。

Quubi

イントロのリフが印象的な「Empathy」はQuubiで最も人気のある曲のひとつ。サビでパッと明るく弾けるメロディがいい。正直、人数制限をしているとは言え、本当に盛況だったため、ステージの様子をしっかり見届けることができなかったのだが、4人のダンスもいい。動きにキレがあって、スポーティ。楽曲の世界観を活かした振付はQuubiのパフォーマンスを構成する大事な要素のひとつになっている。ここで中心人物になるのは川原。Quubiのキレは彼女の存在によるところが大きい。

ライブの勢いを落とさないよう、楽曲はテンポよく投入されていく。「Still Walking」「Break of dawn」と続くなかで気づいたのは、4人とも全力で踊り、歌いながらもフロアの様子をしっかり見ているということ。記念すべき初の東京ワンマンにどんな人たちが集まったのか、その目にすべてを焼き付けようとしているようだった。声出しは禁止だが、彼女たちのそんな姿勢はフロアとの間に気持ちのコールアンドレスポンスを十分成り立たせていた。結成から1年に満たないながらも多くのライブを重ねてきた成果がこんなところに表れる。もちろん、「全員手ぇ挙げろ!」「クラップ!」という煽りも欠かさない。
藤宮紬
川原みなみ

4曲を立て続けに披露したところでようやくMC。「今日は来てくれて本当にありがとうございます! 楽しんでくれてますか?」という村上の問いかけにフロアは盛大な拍手で応える。「こんなに人が集まってくれてうれしい」という藤宮の言葉はシンプルだからこそストレートに感動が伝わってきた。

藤宮は喋りこそふんわりとしているのだが、曲が始まると別人のようになる。後半ブロックの1曲目「Horizon」は彼女のラップがやたらとカッコよかった。このあとに続く「Ragnarok」もそうなのだが、ただ歌詞を吐き出すのではない。リズムや発音がいいし、声質がとにかくいい。ラップのカッコよさというのは持って生まれた声に左右されるところが大きい。練習だけではどうにもならない素質を持っていると言える。切り込み隊長が藤宮なら、温かみのある声でどっしり構えるのが川原、という感じだろうか。ラップ担当が2人いる意味がしっかりある。彼女たちの大事な武器だ。
鈴猫りさ
村上華花

歌に関しても棲み分けがある。Quubiのメロディを牽引するのは鈴猫だ。声に甘さがありながらも安定して歌を紡ぎ出す姿には安心感がある。一方、村上は力強いボーカルでQuubiの楽曲に力強さを加えている。楽曲ありきでメンバーを選んだのか、メンバーを選んでから楽曲の方向性を決めたのかはわからないが、いずれにせよこのメンバーだからこそこの音楽なんだという説得力がある。Quubiというグループがこの音楽を届ける必然性がある。そんなことを思ってしまうぐらい、グループとしての個が確立されているのである。
ラストは結成後初めて世に放った名曲「Legendary」。この楽曲の作詞作曲を手掛けたのは、PassCodeのサウンドプロデューサーとしても知られる平地孝次。この1曲が彼女たちへの注目を高めたところもある。そういう意味でもQuubiにとって大切な存在になっていることだろう。ファンにとってもそれは同じで、フロアのあちこちで振りコピが発生し、「全員跳べ!」の合図で一斉に飛び跳ねるというこの日一番の盛り上がりとなった。しかし、このグループの魅力はここまでで全部出切ったわけではなかった。
Quubi
アンコールを求める手拍子に迎えられた4人は、「うわーい! アンコールありがとうございます!」という村上のひと言のあと、1人ずつ最後の挨拶をしていった。最初に話し始めたのは川原。長くなることを予想して、「座ってもらってもけっこうなんで」と観客に促したのはちょっとおもしろかった。「『東京拠点なの?』って言われることがあるけど、それは東京で待っていてくれたり、東京まで来てくれる人たちがいるからです。これからも前を向いて進んでいきたいと思っています」という力強い挨拶のあと、藤宮が話し始める。内容としては「(昨年の)10月2日に東京デビューして、こうしてワンマンができるようになったのはみんなのおかけです。いろんな人が関わってくれていて、全部全部無駄にしたくないし、私は承認欲求のためにアイドルになったわけじゃないから、みんなと一緒にもっともっと高いところに行きたい。一緒に歩んでくれるとうれしいです」というものだったのだが、途中で感極まって言葉上手く出なくなってしまう。そんな彼女にそっと寄り添ったのは隣にいた川原。ここまではわかる。でも、反対の下手側で村上と鈴猫が半ばふざけて抱き合っていたのはわからない。普通なら感動の瞬間になるところを自然と笑いに変えてしまうのが関西のグループらしい。そんな笑いの隙間からは4人のチームワークも感じられて、非常にいい時間だった。
「Quubiになってからたくさんのライブをしてきたんですけど、同じライブはひとつもない」と話し始めた鈴猫は、途中からスマホのメモを見ながら話し出し、これもまた笑いを誘った。でも、「Quubiはひとつの塊で、誰が欠けてもダメなので頑張っていきます」という言葉はグッときた。
Quubi
感動と笑いが混ざった挨拶の最後、村上は「私たちがこんな感じで話せているのも、みんなからの愛を感じているからです。その分返せているか不安になっていたけど、このライブハウス(のフロア)を見てて、『ああ、よかったな。楽しいな』と思ってます。これからも信じてついてきてほしいです!」と締めた。そして、「私たちとあなたたちにとって光の曲を」という曲紹介のあと、Quubi唯一のパワーバラード「Lights」を歌い上げ、ラストはもう一度「Empathy」を披露したのだった。
すべての曲を歌い終え、最後に集合写真を撮り、これで終了かと思いきや、川原からいくつもの大切な発表が。9月16日から東名阪対バンツアーが始めるということ、最終日の大阪公演は初のバンドセットで行うということ、そして初の全国流通盤となるアルバムが発売されることが告げられた。さあ、これから多数のイベントやフェスの出演を経て、4人は新たなステージへと足を踏み出す。ツアーで会うときにはさらに成長した姿を見せてくれるはずだ。その瞬間を楽しみに待ちたい。

取材・文=阿刀"DA"大志 撮影=真島洸
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