バーチャルタレント夢の共演 『V-C
arnival VOL.2』DAY2レポート

2022.6.12(sun)V-Carnival VOL.2 DAY2
6月11日(土)12日(日)の2日間にかけて、いまVTuber・バーチャルタレントシーンでトップを走る面々が集まった『V-Carnival VOL.2』が開催された。
第2回となる今回、ホロライブからはときのそら、さくらみこ、星街すいせい、湊あくあ、Mori Calliope(森カリオペ)ら10名が出演。にじさんじからは月ノ美兎、笹木咲、椎名唯華ら6名が登場。そのほかにも、電脳少女シロ、朝ノ瑠璃、HIMEHINA、MaiRといった面々が集った。
豪華なるライブでメインMCを務めるのはニッポン放送の一翔剣とともに、DAY2のMCをときのそらが担当。昨年につづく今年の開催で2度目となる『V-Carnival』は、現実空間のステージにAR・CG技術を使ってリアルタイムに象られたVTuberが、それぞれにパフォーマンスを披露する音楽ライブとなっている。
実際のステージセットに降り立ち、バーチャルな存在である彼女らに生の照明がしっかりとあてられ、AR・CG技術を使ってリアルタイムで再現・融合する。そんな全く新しいライブ演出は昨年大きな衝撃を与え、強い関心を集めた。本レポートでは2日目の模様を記していく。
初日と同じように、フジテレビ球体展望室「はちたま」からMCを務める一翔剣と、ときのそらが届けていくという形でスタート。夕焼けに染まった東京都心の空模様をバックにし、ウキウキなテンションで会話していく一翔剣とときのそら、スマートフォンから放送当日のリアルタイムな反応を楽しみながら、DAY2開幕をアナウンスした。
(c)V-Carnival
トップバッターで登場したのは、Hololive ENからやってきたMori Calliopeだ。デビュー以来日本語圏・英語圏のファンを多数集め続け、YouTube登録者数は200万人を超えるVTuber・バーチャルタレントシーン屈指の人気者として注目を集めてきた。
彼女を一躍有名にした要因のひとつが、彼女のラップ~ヒップホップ流儀に沿ったオリジナル曲である。今日は「失礼しますが、RIP♡」「Scuffed Up Age」の2曲をトップバッターとして披露したが、サウンドのスタイリッシュさやフロウの素晴らしさを含め、圧倒的なクオリティを見せてくれた。「死神」という彼女のバックグラウンドを活かし、シャンデリア・地獄の門に死神が飛び交うという3D演出も粋だ。
(c)V-Carnival
本日登場するメンバーでホロライブファンが期待していたのは、Mori Calliopeと星街すいせいのコラボであろう。なんと序盤の3曲目にして、彼女ら2人のデュエットが実現した。
ともにホロライブからメジャーデビューを果たし、高クオリティなボーカルや音楽性で注目を集めている2人。互いにリスペクトを送りあう2人によるデュエットソング「CapSule」を披露、ラップのMori、歌の星街でうまくリレーしていくクールなナンバーで、序盤のムードをバッチリとキメてみせた。「私も英語覚えたい!」という星街に対して「私が先生になりますよ!」と返すMori、リスペクトし合うトークも盛り上がり、最初からライブの温度を上げていく。
(c)V-Carnival
クールなムードにもしっかりと音楽に仕上げられる存在がVTuber/バーチャルタレントのなかでも何人かいるが、2番手に登場したHACHIは間違いなくそこに入るであろう。ステージにズラっとならんだ風鈴の数々、イントロには蝉の声とピアノの音が印象的に響く「八月の蛍」だ。ファルセットを活かしたハイトーンな声に導かれるように、サビに入ると花火が打ちあがり、蛍のように光が舞い飛んでいく。
つづいて歌う「バスタイムプラネタリウム」はイベント初公開の一曲、持ち前のシルキーな歌声でステージいっぱいに広がっていくようなパフォーマンスを見せてくれた。DAY1序盤ではパワフルでイケイケなムードだったのとは全く異なり、心のセンチメンタルなところを引っかいていくようなステージングに胸打たれる。
(c)V-Carnival
(c)V-Carnival
間髪入れず3番手に登場したレヴィ・エリファは、Adoの「阿修羅ちゃん」と中島美嘉の「僕が死のうと思ったのは」の2曲をカバー。Adoと中島、両者とも低めのトーンやくすんだ声色で多くのファンを獲得した2人であり、特に「僕が死のうと思ったのは」で声量の大小をうまく使い分け、シリアスな内容の歌詞をよりドラマティックに表現していた。MCの時に見せる可愛い雰囲気とのギャップに心奪われそうになる。
(c)V-Carnival
Mori Calliopeが作ったドープなスタートから、HACHIがしっとりとしたムードへ変え、バトンを受けたレヴィ・エリファのシリアスなムードへと、演者により趣きが変わっていくなか、一気にポップで軽快なムードへと変えていったのはSIROだ。手拍子とトラップ系なビートが織りなす大胆な曲展開と彼女のバイオグラフィに沿う奔放な1曲「叩ケ 叩ケ 手ェ叩ケ」で盛り上がると、ホロライブの角巻わためを呼び込む、いきなり「ついておいで~!」と追いかけっこを展開するなど、2人の自由奔放なMCで見ている者を笑わせてくれた。
2人がデュエットするのは八王子P✕Giga「Gimme✕Gimme」。キュートな声のSIRO、芯の通った声のわため、2人の声が好対照に映えるデュエットであり、実際の舞台照明と、3Dによる照明演出がこれでもか!とばかりにステージを彩っていく。
(c)V-Carnival
前半戦を締めるのは、「RAINBOW」「My Song」と自身のソロ曲を披露した角巻わためだ。ホロライブ内でも実力派のシンガーとしての側面を持つ彼女が、大舞台でも持ち前の歌唱力を発揮してくれた。先程のSIROとの和気あいあいとしたやり取りから、この堂々としたステージングに目が離せなくなる。VTuberたちは日々自分の配信を行っているが、雑談やゲーム実況などで、パーソナルな部分が見えるのが彼女たちにシンパシーを覚えてしまう理由の一つかもしれない、人の持つ多面性を感じられるからこそ、応援したくなるのだろう。
後半戦最初に登場したのは、大人気のメディアミックスコンテンツ『ウマ娘 プリティーダービー』から和氣あず未(スペシャルウィーク役)、木村千咲(ダイワスカーレット役)、首藤志奈(ハルウララ役)の3名だ。
(c)V-Carnival
4月末に開催された『VTuber Fes Japan』DAY2では、同作品の宣伝を担当してきたゴールドシップが参加して大きな話題を集めたが、今回は声優3人が登場しての歌唱となった。ときのそらの「出走です!」の合図から登場したのはまさかの競馬評論家の井崎脩五郎。井崎の曲フリから、にじさんじに所属する魔界ノりりむと天宮こころ、SIROを加え、声優✕VTuber合計6人による「うまぴょい伝説」で後半レースの火蓋が切られた。
続いて、魔界ノりりむがYOASOBI「群青」をソロで披露し、さらに天宮こころとともに「恋愛サーキュレーション」を2人で歌ってみせる。ウィスパー気味で線の細い彼女らの声は、この曲を歌うにはピッタリな甘いトーンを含んでいる。りりむから天宮へとボーカルをリレーしても質感が変わったと感じないほど、2人の声が強くシンクロしたデュエットであった。
(c)V-Carnival
(c)V-Carnival
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そして天宮こころがソロでsupercellの「君の知らない物語」、すりぃ「テレキャスタービーボーイ」をカバーする。本来の楽曲とは違った天宮の甘いトーンで歌い、前者はその声色が切なさを、後者では必死に歌うがゆえの可愛らしさを表現していく。

続いて登場したのは、ホロライブ0期生として黎明期から活躍し続けるときのそら。アイドルとしてホロライブを引っ張り続けてきた彼女が最初に歌うのは、HoneyWorksが『告白実行委員会 ~恋愛シリーズ~』を通してリリースした名曲「ファンサ」だ。アイドルとしてひたむきに努力しつづける姿を描いたこの曲を彼女が歌う、それ自体がすでに強いメッセージとなって響いていく。
(c)V-Carnival
「今日はこうして多くの人の前で歌ってみてもらって、たくさんのコメントをもらって嬉しいです!」とMCで語るときのそら、「みなさんにお返しをしたいです!」と手でハートを作って画面の向こうの視聴者に届けてくれる、オリジナルのエフェクトがつくのもこのイベントだからこそできる演出だ。
そしてオリジナル楽曲「Step and Go!!」は、彼女のディスコグラフィでも希望にあふれたポップナンバーだ。溌溂としたパフォーマンス一つ一つは、「ファンを元気づけよう!」という彼女らしさに溢れたものだった。
(c)V-Carnival
VTuber/バーチャルタレントのなかで、音楽をウリにしたユニットは当然存在する。アイドル・ヒップホップ・ボーカルグループとその音楽性は多彩であるが、HIMEHINAは数あるユニットのなかでも根強い人気を誇る2人である。「Hello,Hologram」「うたかたよいかないで」を通し、明るいトーンの声が軽やかに絡み合っていくのがよく伝わってくる。パッション溢れる2人らしさを音楽という形にソリッド化して届ける。
「Hello,Hologram」で2人は浮かんだ宇宙船の上部に乗ってダンスし、メロディに詰め込まれた数多くの歌詞が3D演出と舞台演出と両方で示され、「うたかたよいかないで」ではスクリーンのなかにHIMEHINAの2人が撮影された写真が投影されるという演出で、楽曲のメッセージをよりよく提示してくれる。
(c)V-Carnival
DAY2のトリを務めたのは、ホロライブが誇る歌姫へと成長を遂げた星街すいせい。作詞を星街本人が、作曲をTAKU INOUEが担当した「Stellar Stellar」からスタート。
星街が抱えている音楽への愛情・希望・夢を詰め込んだ歌詞を、オペラのような壮大さをともなって飾り立てたTAKU INOUEのダンストラックに乗せたこの曲には、音楽を信じてやまないロマンティズムがある。星街はその深く伸びやかな歌声を響かせることで、ステージ演出は「星」「宇宙」を照明と3D演出で見せることで、そのメッセージ性を表現してくれているように感じる。
(c)V-Carnival
(c)V-Carnival
本編を締めるのは「SOS」。星街すいせいとTAKU INOUEによるプロジェクトMidnight Grand Orchestraによる楽曲は、ダンスチューンでありながら、その質感はサイバーでトランシーさに溢れている。舞台演出も3D演出も、青を基調にしてステージを彩る。見ているものをどこか遠く世界へと連れて行ってしまうようなスペクタルなムードだ。
最後は出演者全員が集まり、livetuneの名曲「Tell your world」を披露してくれた。リリースから10年がたった今も、新鮮さを失わず響き続けるマスターピースである一曲。繋がっていくことの尊さと喜びを歌ったこの楽曲は今回の『V-Carnival VOL.2』の締めくくりに最適だったように思う。こうして2日間に渡ったライブも無事にフィナーレを迎えた。
メインMCの一翔剣は何度となく「テレビ番組を制作するプロとVTuberの演出を手掛けているプロが手を組むと、こんなに素晴らしいものができるんだと分かってもらえたかと思う」と語りかけていた。
数々のライブステージ演出を担当してきたLATEGRA社とFIREWORKS社のスタッフ陣、会場のセットや照明を素晴らしいものに仕上げたフジテレビの制作陣のこのイベントにかける熱量は画面越しにも伝わるものがあった。それはどこか新しいものを作り出す楽しみと情熱のようなものなのかもしれない。
その熱量の中心には今回出演したバーチャルタレントたちがいる。本当にもうバーチャルと現実の垣根は無くなりつつあるんだと実感できた『V-Carnival VOL.2』。昨年よりもクオリティを上がった今回を見て、もう次回が待ち遠しくなった。そこには新たな発見と興奮があるに違いない。今回のVOL.2は7月10日までeplusのStreaming+にてアーカイブ配信が提供されている。ぜひ新しい表現と興奮の扉を開き、チェックしてもらいたい。
レポート・文=草野虹

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