小田和正

小田和正

【小田和正 リコメンド】
2022年、初夏、
小田和正の歌が聴こえる。

日本ポップス史のリビングレジェンドが送り出す、およそ8年振りソロ10作目となるニューアルバム『early summer 2022』。大型タイアップ、時代の流れ、自身の心境など、さまざまな要素を組み合わせた楽曲は、どれも珠玉の輝きを放つ名曲揃い。どこまでもやさしく美しく、エバーグリーンな輝きにあふれた充実の一作だ。

最新曲を網羅した
現在進行形のベスト

 小田和正が動くたびに“史上最年長”という形容詞がつけられるようになってから、どのくらい経つだろう? “史上最年長の5大ドーム公演”の開催は2011年だった。同じ年、『どーも』(4月発表のアルバム)がオリコンウィークリーアルバムチャートで1位を獲得したのも“史上最年長”で、2016年にはベスト盤『あの日 あの時』(4月発表)でその記録をさらに上回った。そして、2022年6月3日にスタートした3年振りの全国アリーナツアー『明治安田生命 Presents Kazumasa Oda Tour 2022 「こんど、君と」』で、“74歳8カ月でのアリーナツアー開催は、国内アーティスト史上最年長”という記録を打ち立てた。そのパワー、バイタリティー、そして衰えを知らぬ美しいハイトーンヴォイス。まさにリビングレジェンドと呼ぶに相応しい、日本の音楽シーンにおいてかけがえのない、“宝物”のような存在だ。

 そんな彼から実に8年振りとなるオリジナルアルバムが届けられた。タイトルは“early summer 2022”。シンプルに“今”を表現するタイトルのもと、収録された全9曲のうち8曲が大型タイアップ付きで、2018年以降にテレビや映画でよく聴いた耳馴染みの曲ばかり。それは平成から令和にかけてのリリースを網羅した、現在進行形のベスト盤と言っていい。

 冒頭に登場するのは「風を待って」。小田にとって初の配信シングルで、明治安田生命新企業イメージCM『風を待って』シリーズのため書き下ろしたオリジナル楽曲であり、のちにテレビ朝日系連続ドラマ『遺留捜査』主題歌にも使用された。アコースティックギターのたおやかな響きを中心に、そっと寄り添うリズム、流麗なストリングスに彩られたやさしい一曲。注目は豪華ゲストコーラスの面々で、根本 要(スターダスト☆レビュー)、和田 唱(TRICERATOPS)、JUJU、松たか子、大橋卓弥(スキマスイッチ)、矢井田瞳、熊木杏里、水野良樹(いきものがかり)と、TBS音楽特番『クリスマスの約束』でも常連のメンバーが参加して、楽曲を盛り上げてくれる。透明感あふれるメインヴォーカルと、個性豊かなコーラスとの相性は抜群だ。

 続いては映画『坂道のアポロン』主題歌「坂道を上って」。『坂道のアポロン』は、漫画、アニメ、実写版映画とさまざまなメディアミックスで話題を呼んだ人気作品で、恋愛ストーリーであり、主人公たちがジャズを演奏する音楽劇でもある。「坂道を上って」は歪んだエレクトリックギターが鳴り響く緊張感あるイントロから、ピアノと歌で進行する切ないメロディーのパートへと進んで、コーラスがゆっくりと舞い降り、ドラムのビートが高まっていく。そんな刻々と変わるアレンジが素晴らしい。少年が大人になるにつれて感じる恐れと喜びを詩的に描く歌詞が、まるで昨日のことのようにみずみずしく響くのは、自身が中学高校と6年間、海を見下ろす高台にあった学校へと坂道を上って通い、“この曲を書きながらその頃のあれこれを思い出すことになりました”というコメントを寄せていることからも分かるだろう。思い出と物語が手を取り合い、聴くたびに深く感情が揺さぶられる曲だ。
小田和正
アルバム『early summer 2022』

OKMusic編集部

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