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【映画コラム】“生きること”を強調
したところに、この映画の真骨頂があ
る『トップガン マーヴェリック』

『トップガン マーヴェリック』(5月27日公開)
 トム・クルーズ主演の大ヒット作『トップガン』(86)の続編。アメリカ海軍のエリートパイロット養成学校に、伝説の男マーベリック(クルーズ)が教官として戻ってくる。だが、訓練生たちは彼の型破りな指導に戸惑い反発する。その中には、かつてマーベリックとの訓練飛行中に命を落とした相棒グースの息子ルースター(マイルズ・テラー)もいた。ルースターはマーベリックを恨み、彼と対立する。そんな中、彼らに重大なミッションが下る。
 製作は前作に続いてジェリー・ブラッカイマー(今回はクルーズも参加)。クルーズ主演の『オブリビオン』(13)のジョセフ・コジンスキーが監督をし、『ミッション:インポッシブル』シリーズの監督としても知られるクリストファー・マッカリーが脚本に参加と、まさにクルーズ御用達映画の感がある。
 クルーズは、年に似合わず、『ミッション:インポッシブル』シリーズなどで、常軌を逸したとも思えるアクションを披露しているが、今回も自ら戦闘機に乗り込んで演技をするという離れ業に挑んでいる。同年代としては驚くばかりだ。
 24歳だった前作から36年、間もなく60歳になるとはとても思えない彼は、相変わらずカッコいいが、顔に刻まれたしわや、時折見せる憂いのある表情から年相応に見えるところもある。
 そんな彼が、自らの任務や、相棒の息子との確執、かつての恋人(ジェニファー・コネリー)との関係に悩む姿を見ていると、今回はいろいろな意味で“大人のトップガン”という感じがしたし、極限状態を映しながら、とにかく“生きること”を強調したところに、この映画の真骨頂があると思った。
 見る前は、正直なところ、ウクライナ問題が叫ばれる今、ある意味、戦闘機が主役のこの映画がどう映るのか、という危惧があった。
 だが、アクション、サスペンス、ユーモア、人間ドラマといったさまざまな要素を取り込み、圧倒的な飛行シーンと空中の風景を映すこの映画を見ていると、あくまでこれは娯楽作であり、映画館で上映されるべき映画、大画面で見るべき映画だと素直に思えた。
 ところで、前作との接点だが、前作でマーべリックのライバル、アイスマンを演じたバル・キルマーが将軍役で再出演している。実際に咽頭がんを患った彼が、それを反映させた設定で出ていることに、時の流れを感じて感慨深いものがあった。 
 また音楽は、前作同様、ケニー・ロギンスの「デンジャー・ゾーン」が流れ、グース(アンソニー・エドワーズ)がピアノの弾き語りで歌った「火の玉ロック」(ジェリー・リー・ルイス)を息子のルースターが歌う場面があるなど、前作を意識したところが多分に見られた。
 ただし、前作でマーベリックと恋に落ちたシャーロット(ケリー・マクギリス)は今回は出てこないので、2人のテーマ曲ともいうべき「愛は吐息のように」(ベルリン)は流れない。今回のテーマ曲を歌うのはレディー・ガガだ。
(田中雄二)

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