【鈴木みのり インタビュー】
リスナーの背中を押せるような
楽曲になったら嬉しい
こんな可愛い曲も久々だったので、
とにかく可愛らしく歌った
そして、カップリングには表題とはまったくテイストの異なる2曲が収録されていますが、3曲目の「ときめきの時空と林檎」には度肝を抜かれました。“この曲の構成は、いったいどうなっているの!?”って。
サラッと歌っているように聴こえて、実はとんでもなく複雑な構成とメロディーなんですよね。でも、事前にディレクターさんが“いや〜、難しいね、この曲”と何回もおっしゃるので、自分の中で勝手にハードルが上がっていって! 実際に聴いてみたらキャッチーではあるし、“あっ、そこまで難しくはないぞ”って安心しました(笑)。
雰囲気自体は80年代アイドル風で、非常に可愛い曲ですもんね。
そもそも曲を提供してくださった無果汁団さんが、80年代の雰囲気を持った楽曲を作られる方々なんです。最近、デビュー当時のような可愛い曲をやっていなかったので、そこで好きになってくださった方を置いてけぼりにはしたくないという話から、ディレクターさんが無果汁団さんにオファーしてくださって。そしたら“こういう曲を”とかっていう打ち合わせをする前に、私のことを調べて一曲作ってくださったんですよ! デビュー作の『マクロスΔ』の印象が強いのもあるでしょうし、声優デビューから6年経ってるとはいえ年齢的にはまだ24歳ですし、すごく明るい印象を持ってくださったのかもしれないです。
タイトルも“ときめきの時空と林檎”ですからね。なかなか少女マンガチックだなと。
私も“魔法少女感がある!”って思いました。歌っている時も魔法少女的なキャラクターを頭に置いて、その子がアニメのオープニング映像みたいに、いろんなところに行くような場面を想像しながら歌ったんです。レコーディングには無果汁団さんも来てくださって、ディレクションしてくださったんですけど、本当に自由にやらせていただけて。こういう可愛い曲を自分名義で歌うのも久々だったから、もう楽しくて、とにかく可愛らしく歌いました(笑)。《恋の素粒子》とかっていう歌詞も懐かしい感じがするし、これはレコードで欲しいですね。
この曲が“少女”の歌なら、2曲目の「リップ」は“女性”の歌だなと感じました。曲中で台詞を囁いていたり、すごく大人のムードがあって。
以前、キャラソンですりぃさんの曲を歌わせていただいた時に、とても楽しかったので、今回は鈴木みのり名義でお願いしたんです。で、すりぃさんって曲を提供するアーティストから直接聞き取りをして作っていくスタイルの方で、リモートでお話した際に“どんな曲にしたいですか?”と訊かれたんですね。そこで答えたのが“ダークな恋愛の曲も歌ってみたい”っていうことだったんです。
なぜ、そういった曲を歌ってみたかったんですか?
ファンの人を安心させるのが「ときめきの時空と林檎」だとするなら、その真逆を…というわけではないんですが、私は声優としても活動しているので、曲を歌うと演じているキャラクターや私自身を当てはめて楽しんでくださる方も多いんですね。もちろんそれも嬉しいんですけど、一度“鈴木みのり”というのを抜きにして、楽曲に聴き手の方それぞれの経験や感情を重ねて楽しんでほしかったんです。
曲にアーティストやキャラを投影するのではなく、純粋に曲として聴いて、リスナー自身と紐づけて感じてほしいと。
そうですね。自分自身、捻くれた恋愛の歌とかバッドエンドな楽曲が好きなので、ちょっと切なかったりつらい想いをしているくせに、それを雑に“もういい、どうにでもなれ!”って投げ捨ててしまうような歌を作っていただきたいとお願いしました。なので、自分のイメージとしてはバンド系のサウンドでくるのかなと思っていたら、いい意味で予想を裏切られて。曲調や声色の部分では今までにもある曲なんですけど、こんなに電子音が前に出ている曲…いわゆる最近のネット文化に寄り添った楽曲はなかったので、そこは新たな挑戦だと思います。
ライヴだったらお部屋のセットで聴いてみたいですね。
あっ、確かに! ちょっと紫とかピンク系のライトで歌いたい。
ソファに座ったりしてね。以前よりはライヴもやりやすい状況になってきましたが、2022年はどんな年にしていきたいと考えてますか?
今年は10月の誕生日が来たら25歳になるんですけど、よくお姉様方から“25歳を過ぎると体調に変化が出る”って聞くせいか、自分の中ではひとつの節目のように感じているんです。なので、より将来の自分のことを考えながら、どんな音楽をやっていきたいのかを改めて見つめていきたいですね。デビューの頃は“自分の武器って何だろう?”って考えていたんですが、先輩から“武器は自分で考えて作るものじゃない”という言葉をいただいたり、ファンの方からお声がけいただくうちに思ったんです。“声優としても活動しつつ、歌をしっかり届ける歌手でありたい”って。その上で、自分が今届けたい歌というものを、しっかりと出していきたいですね。
では、今、タイアップ関係なく自由に曲を作れるとしたらどんな曲にします?
そうですね…もしかしたら「BROKEN IDENTITY」みたいなロックな曲になるのかもしれないですね。これをきっかけに、こういったパワーのある曲が増えていったらいいなと思います。
取材:清水素子