鈴木康博

鈴木康博

【鈴木康博 インタビュー】
カッコ悪くてもいいから、
その時の自分を
そのまま歌っていきたい

歳をとっても、
まだまだ前に進んでいきたい

話を50周年記念ライヴに戻しますが、バンド形態もあれば、アコースティックギターの弾き語りや、ゲストの方との2ショットもあるなど、幅広い見せ方も楽しめました。どれも聴き応えがありましたし、特にアコースティックギターの弾き語りは本当に素晴らしかったです。

ギターがうまい人はいっぱいいるし、歌がうまい人もたくさんいますよね。その両方がすごいというところにいくのが自分の到達点だろうなと思うけど、なかなか難しい。指は動かないし、速弾きはできないし(笑)。でも、やりたいんですよ。ちょっとずつでもできるようになりたくて、とにかく日々練習しています。歳をとっても、まだまだ前に進んでいきたいと思うから。それにギターというのは、工夫次第で世界を広げていけるというのがあって、弾いていると“あっ!”という気づきがいっぱいあるんですよね。それを広げていくということもしています。

アコースティックギター1本と歌だけで深みのある世界を作れることは、鈴木さんの大きな強みと言えます。

“弾き語りは言葉がちゃんと聴こえるからより伝わる”とミュージシャンの人に言われたことがあって。自分が尊敬しているミュージシャンに自分のライヴを観に来てもらって、“いいものを観た”と言ってもらえるのはすごく嬉しいんですよ。でも、そんなふうに感じてもらえているとは、自分ではあまり分かっていなかったので、自分には自分の世界観があると尊敬している方たちに教えてもらったような気がして、少し自信を持てるようになったというのはあります。それで、より一曲一曲をしっかり聴かせようという気持ちになったんです。

鈴木さんは魅力的な世界観を持たれていますし、今なお進化したいという意欲があるというのは本当に素敵なことです。

私は優れたミュージシャンを尊敬しているんです。スタジオミュージシャンだったり、長年にわたって音楽で名を馳せている人だったり。例えば、坪倉惟子さんがリードヴォーカルをやっているカバーバンドがあって、定期的にライヴをしているんですけど、彼らなりのかたちにアレンジして演奏していて、ライヴを観ると感動するんですよ。しかも、聴くたびにうまくなっているんです。私と同じ年代の人もいれば、ちょっと下の世代の人もいるけど、みんなめちゃくちゃうまい。彼らに“ずっと音楽をやり続けている原動力はなんですか?”と訊くと、“やっぱりうまくなりたいからだよな”と言うんですよ。若い頃はただリズムがいいとか、速弾きができるといった技術的なことにとらわれることが多かったけど、このバンドの人たちは音楽全部を分かった上で伝えてくれるからすごくいい感じになる。そういうことに刺激を受けて、自分ももっと上に行きたいという気持ちになるんです。

音楽人としてずっと突き詰め続けている方々のすごさは、ライヴにゲスト出演された方からも感じました。

この日のゲストもそういう人に来てもらいました。杉田二郎さんは本当に恩人なので、とにかくあの人は呼ばないと話にならないというのがあって。あと、岡崎倫典さんというギタリストと白鳥英美子(ex.トワ・エ・モア)さん、それにオフコースの松尾一彦(Gu)。オフコース関係ではいろんな人にお世話になっているから悩みましたけど、松尾は僕のラジオにも出てくれて、それなりにつながりがあったので、彼にお願いすることにしたんです。あと、「夕山風」でピアノを弾いてもらった榊原 大ちゃんは、もうピアノがめちゃくちゃうまいのでお願いしました。

ゲストのみなさんとのコラボレートは素晴らしい瞬間の連続でした。綿密にリハーサルをされたのでしょうか?

いや、みんな一回しかリハはしなかったんです。

えっ、本当ですか!?

はい(笑)。二郎さんに至っては“リハはやらなくていい”と言って、当日のリハで合わせただけで本番という(笑)。

杉田さんと歌われた「戦争を知らない子供たち」は、おふたりの絶妙なハーモニーも大きな聴きどころになっていました。当日のリハだけで、あの仕上がりというのは本当に驚きです。

まぁ、あの曲は前からいろいろなところで演奏していますからね。

でも、ここ最近のモードや歌い回しなどがあるかと思います。

確かに、ここ3、4年はやっていなかったですね。でも、「戦争を知らない子供たち」は特に問題なかったです。私は白鳥さんには、本当にびっくりしました。声が全然変わらないし、若々しくて、現役感があふれ出ていましたよね。トークゲストとして来ていただいた林家木久蔵さんは、私が昨年10月に出したアルバム『十里の九里』に入っている「現実ってヤツは」の歌詞を書いていただいたんです。本当はふきのとうの細坪基佳くんにも来てもらいたかったんですよ。実際、2年前にアニバーサリーライヴをやろうと決めた時は、二郎さんの次くらいに声をかけたんですけど、延期になったことで彼のライヴと被ってしまったんです。でも、僕のパンフレットに寄稿してくれたり、当日も花を贈ってくれていました。彼は私にとって本当に大きな存在なんですよ。それぞれのソロ活動をやるにあたっても、お互いに影響し合っていたと思う。だから、参加してもらえなかったのは残念でしたね。

機会がありましたら、ぜひ細坪さんとのコラボレートも実現させてほしいです。ゲストのみなさんとの共演はもちろん、曲間のやり取りも楽しかったです。

ちょっと冗長なところがありましたけど(笑)。

そんなことはないです。みなさんの素顔に触れることができて嬉しかったですよ。

だったら良かった(笑)。時間を気にして素っ気ない感じになったりしないように心がけました。DVDにはゲストの方々とのやり取りもほとんどノーカットで入っているので、そこも楽しんでもらえると嬉しいです。

同感です。また、このDVDは音と画像の群を抜いたクリアーさも大きな魅力になっています。

音質に関しては録っていた音がすごく良かったので、ミックスも大変ではなかったです。昔と比べるとやっぱり声の質が違っていて、声が掠れてしまったりしているんですよ。それが聴いていて不快に感じないようにちょっと手を入れたくらいで、歌を録り直したりは一切しなかったです。

流石です。それに、会場で観ている時は声の掠れはまったく気にならなくて、むしろ年輪みたいなものを感じていいなぁと思いました。

本当ですか? 歌っているほうはすごく気になるんですよね。画像は思ったよりもきれいで、私もちょっとびっくりしました。おっしゃってくださったように音も画像もクリアーで、すごく臨場感のあるライヴDVDに仕上げることができて良かったと思います。

OKMusic編集部

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