【猫田ねたこ インタビュー】
どんなお花でも、どんな人でも、
光の当たり方で見え方は違う
ピアノに説得力がなかったら、
全てが台なしになる
続いて『Strange bouquet』のヴォーカルについて話しましょう。本作は表現力に富んだ歌声も大きな魅力になっています。
シンガーとしての私はドラマチックに歌い上げるタイプではないので、少しずつニュアンスを変えて表現していくというのが自分の中の課題ではあって。なので、もしかしたら本当に微妙に違うくらいかもしれないですけど、イヤフォンやスピーカーで聴いていただければ、ニュアンスを変えていることを聴き取っていただけると思います。なので、ケータイとかパソコンのスピーカーではなくて、イヤフォンやしっかりとしたスピーカーで聴いてほしいですね。
同感です。特に最初に聴く時はいい環境で、じっくり聴いてほしいと思います。では、歌唱面で特に印象の強い曲を挙げるとしたら?
一番難しかったのは…「Minimize」かな? 英語なので、それがちょっと難しかったです(笑)。
そっちですか!?(笑)
はい(笑)。海外の友達にアクセントが変になっていないかを確認してもらって、何度も練習して、ヴォイスメモを録って確認しました。歌そのものよりも発音のほうで頑張ったという(笑)。ニュアンスの面で言うと、最後に入っている「あなたが主役」が難しかったですね。今回の7曲の中で一番元気づけないといけない曲だったけど、今作は声を張り上げたりはしないスタンスだったので、地声とファルセットの間でいかにドラマチックに歌うかというのが課題でした。
確かに。ただ単に繊細だったり、ウォームな歌ではなくて、芯にある強さが感じられる歌になっています。
本当ですか? 良かったです(笑)。私は今までこういうサウンドの楽曲は全然作ったことがなくて、ベースもエレクトリックアップライトベースを弾いてもらっているんですよね。ジャズっぽいアプローチというか、ちょっと動きのあるベースになっていて、ここまで全体が動く感じの曲はソロでは作ってこなかったので、それと合わせて歌うのが難しかったです。
歌から少し話が反れますが、「あなたが主役」はこういう楽曲でフレットレスベースを使うというアイディアが光っていますし、ベースのフレージングも注目です。ウッドベースでハーモニクスを使ったリズミカルなフレーズを弾いたりしていて驚きました。
やっていますね(笑)。ドラムをつけずに、いかにメロディーのバックでリズムを出すかが今回のテーマでもあったので、ウッドベースにたくさん動いてもらうことにしたんです。私がウッドベースを弾ける人じゃないのにフレーズを決めていったので、いざ佐藤さんに弾いてもらったら動きが不可能なところとかがあったんです。でも、めちゃくちゃ練習してもらって、私がイメージしたとおりに弾いてくださいました。アコギといい、アップライトベースといい、佐藤さんには無茶な要望をたくさんお願いしました(笑)。
こういうベースアプローチを考える猫田さんも、それに応える佐藤さんも本当にすごいです。もうひとつ、今作はピアノの音色や質感の素晴らしさもポイントで。ピアノはどういう環境で録音されたのでしょう?
えっ!? 本当ですか?
はい(笑)。自分で弾いてはいるんですけど、音はソフト音源なので、生では弾いていないです。本当はグランドピアノで録りたかったんですけど、いろいろ環境的に難しくて。それで、いくつもいくつもピアノ音源を聴き比べて、最終的に海外のメーカーのプラグインを導入したんです。日本語の対応をしていないメーカーなので、めっちゃ英語を勉強しましたよ(笑)。やっぱり自分はピアノを弾いているアーティストなので、ピアノに説得力がなかったら、どれだけアップライトベースに頑張っていただいても、他の楽器をいい音で録っていただいても全てが台なしになると思って、ピアノの音質には本当にこだわりました。
その甲斐があった音になっています。とりあえず適当な音で録って、あとから加工するのではなく、そのソフトの音を聴きながらピアノを弾かれたんですね?
そうです。タッチしたあとの音の立ち上がりとか、重み、ダンパーペダルを切り替える時のカコンッという音まで再現されているソフトだったので、その音で弾かないとタイム感とかが分からなかったんですよ。だから、あとから音を変えるんじゃなくて、ちゃんとそういう録り方ができて良かったです。そして、これはピアノパートだけでなく全パートについてですが、ミックスとマスタリングで美濃さんに仕上げていただいたことで、アルバム全体を通してサウンド面もとっても気に入っています。
細かいところまで気を配り、なおかつ妥協しなかったことで『Strange bouquet』は音数が少ないにもかかわらず、とても生き生きとしていたり、深く染みたりする良質な作品に仕上がりましたね。そして、アルバムのリリースに加えて、6月11日に高円寺U-hAで行なわれるレコ発ライヴも楽しみです。
冒頭にも話したように、『Strange bouquet』はライヴで再現することとかは考えずにやりたい放題やってしまったので、ちゃんと再現しようと思ったら何十人来ていただかないといけなくなるんですよね(笑)。なので、アコースティックバージョンとして、ここからさらに私が編曲をします。単純に音源から音を抜くんじゃなくて、私とゲストの方とふたりだけで演奏できるように作り直します。音源とはちょっと違ったニュアンスにはなりますが、満足していただけるように頑張ります。いつも私の弾き語りを聴きに来てくださるお客さんが言うには、弾き語りだとより歌詞が染み込むみたいなんですよね。6月のライヴではそういった面でも、また違った楽しみ方をしていただければと思っています。
取材:村上孝之
・・・
配信アルバム『Strange bouquet』2022年4月27日配信
日本コロムビア
- COKM-43786
-
- ※詳細はオフィシャルSNS等をチェック
『Strange bouquet』レコ発ライヴ
6/11(土) 東京・高円寺U-hA
ネコタネタコ:プログレッシブポップ、オルタナティブ、ハードコア等の幅広いフィールドにて活動し、多数の海外公演を経て国内外への発信を続けるシンガーソングライター。プログレッシブポップバンド『JYOCHO』、ピアノロックバンド『heliotrope』ではヴォーカル&キーボードを担当。TSUTAYA企画のイベント やVILLAGE VANGUARD製品へのCM 曲を手がける等、楽曲提供も行なっている。2020年5月にEP『犬にも猫にもなれない』、22年4月には配信アルバム『Strange bouquet』をリリース。猫田ねたこ オフィシャルTwitter
猫田ねたこ オフィシャルInstagram
「Strange bouquet」
(Official Lyric Video)
「Minimize」
(Official Lyric Video)