【Dortmund Moon Sliders
インタビュー】
世の中のネガティブなことから
離れられるような
アルバムを作りたかった
「Life Is Beautiful」で
アルバムを軽やかに締め括りたかった
JIPONさんとTATSUさんは今作で特に印象的な曲はありますか?
JIPON
僕の中でも「Jubilee」は強いですね。このバンドは「Night Walk」ができたことで、次に書く曲の方向性が決まったようなところがあるんです。そんなダンサブルな「Night Walk」から、それをさらに発展させた「Jubilee」という流れだったから、「Jubilee」はリズムセクションを頑張らないといけないと思ったし、ドラムもアシッドジャズとかファンクを意識したようなものだったけど、そこにMARUがUK感のあるギターを入れてくれたことで、ベースの落としどころが見えたんです。そういう流れや、また新しいところに行くことができたという意味で「Jubilee」は印象が強いですね。
TATSU
僕は4曲目の「Delio」です。このバンドの中でもすごく異質な曲で、最初に聴いた時には“こんなに泥臭い曲やるの?”と思いました(笑)。でも、すごく奥が深い曲で、ドラムのアプローチは結構迷いましたね。レコーディングも古いドラムセットを使って、本当に60年代の人達みたいな感じでやったんです。最終的にいい仕上がりになったし、アルバムのいいアクセントになっているんじゃないかなというのもあって、すごく思い入れがあります。
メンバー全員のプレイが楽曲の世界観作りを担っていることもDortmund Moon Slidersの魅力になっていると思います。冒頭に話が出た「Life Is Beautiful」についても話していただけますか?
PETAS
この曲はタイトルとサビだけ、すごく昔からあったんです。以前に僕が仕事でドイツに行った時にお世話になった方がいて、その方が“人生は素晴らしいもので、お前はそんなに抱え込む必要はないんだ”と、景色のいいところに連れて行ってくれたことがあったんですよ。その時、何事も前向きな気持ちで取り組んでいるほうが絶対にいいということを学んで、そんな曲を作ろうと思ったんです。僕は“Life Is Beautiful”みたいなシンプルな英語はあまり使いたがらないタイプの人間ですけど、一周回っていいかなと思えて、そのままタイトルにしました。タイトルとサビしかできてない状態だったけど、アルバムには絶対に入れたいと思っていて、それは先ほど話した“音楽だけでも明るいものを聴きたい”というテーマが自分の中にあったから。そのテーマを締めるのは絶対にこの曲だと思っていました。
MARU
コロナで集まって音を合わせられない状態になった中、やっとスタジオに入れた時に、JIPONが「Life Is Beautiful」の展開パートに“こういうベースはどう?”と聴かせてくれたことがあって。“だったら、ドラムはこうしたらいいんじゃない?”とか、どんどん話が進んでいって、すごくクリエイティブな瞬間がきて一気に完成しました。
メンバー4人が同じ場にいることで生まれるものが絶対的にあることを、改めて感じます。
PETAS
僕がひとりで音楽をやっていたら、この曲は着地できなかったと思う。メンバーと顔を合わせて実際に音を出すことが本当に重要だったし、「Life Is Beautiful」ができたことでアルバムが完成すると思いました。歌詞もドイツで会った人たちとのストーリーが僕の中にあったので、それをきちんと咀嚼して落とし込んだものにするために妥協せずに書き上げました。
裏側にストーリーがある場合は、いろいろなことを説明したくなりがちだと思うんですね。でも、この曲ではそうせずに、ありふれた日常の素晴らしさを描いた普遍的な歌詞に仕上がっているのは流石です。
PETAS
僕のビハインドストーリーみたいなものを聴いてくれる人に押しつけても仕方ないとは思っていました。もし知ってくれたらそれはそれでいいけど、軽やかにアルバムが終わるということを一番の目的として作った曲だったので、重かったり、ウェットなものにする気はなかったです。