ロック界 異端の巨人 フランク・ザッ
パのドキュメンタリー映画『ZAPPA』
、いよいよ公開

アメリカが生んだ異端のロック・ミュージシャン、フランク・ザッパ(1940年12月21日-1993年12月4日)。ジャンルを超えた作曲家、編曲家、ギタリスト、そして思想家とさえいってもいいかもしれない。そんな彼の圧倒的な独創性と革新的人生に迫る、初の遺族公認ドキュメンタリー映画『ZAPPA』がいよいよ2022年4月22日(金)より日本で公開される。
【動画】『ZAPPA』予告編

本作『ZAPPA』の監督を務めたのが、アレックス・ウィンターである。彼はブロードウェイ俳優を経て、チャールズ・ブロンソンの当たり役ポール・カージーのシリーズ第三弾『スーパー・マグナム』(85)でブロンソンと争うギャング役で映画デビュー、『ビルとテッドの大冒険』シリーズではキアヌ・リーブスとともに主演を務めた。映画監督としては、『ミュータント・フリークス』(93)などの監督作品も誇る多才な映画人だ。近年は硬派なドキュメンタリー映画作家としての評価と実績を急速に高めている。そんな彼が5年以上の時間を制作に費やした作品こそ『ZAPPA』なのである。
フランク・ザッパといえば遺した作品の数的および内容的な凄まじさと、変態・奇人変人といったイメージにより全体像を把握することは非常に困難であり、ザッパをまだ聴いたことのない人のなかには、音楽史において決して触れることのできない、触れてはいけない領域と感じている人々も少なくない。
しかしアレックス・ウィンター監督は、「フランク・ザッパ」という巨人に恐れ戦かず、一人の芸術家の人生を、映画を通して感じてほしいという願いを『ZAPPA』に込めた。すなわち、彼が『ZAPPA』において試みたことは、歴史的事実を描く一般的な音楽ドキュメンタリーのフォーマットではなく、フランク・ザッパという人間の内面を、ザッパを知らない人にも理解できるようなるべく分かりやすいかたちで制作するということだった。
『ZAPPA』 (c) 2020 Roxbourne Media Limited, All Rights Reserved.
音楽家としてのザッパ、社会問題を反映させた歌詞や発言と政治的主張、そして個人の自由と表現の自由の脅威にひとり敢然と立ち向かうザッパ。どんな創作物にも<笑い>の要素を盛り込みつつ、考えは真っ直ぐでブレなかったザッパの心情・思考を、どんな人でも分かり得るよう紐解いた。そんなアレックス・ウィンター監督から日本公開に向けてメッセージが届いたので紹介する。

■アレックス・ウィンター監督メッセージ
私は歴史を追ったスタンダードなミュージシャンの伝記映画には興味はなく、その時代のアメリカという国において妥協なく芸術家としての道を歩んだ、とても難しく、大変な困難に立ち向かったアーティストの人生の道のりを描きたいと思ったのです。制作にあたり、まずはスタッフと協力して、我々の作りたいと思っている作品の方向性やムードを示す短いフッテージを作り、フランク・ザッパの遺族に提示しました。
ザッパ家は皆、この映像を気に入ってくれて、フランクの未亡人であるゲイルと実際に会うことが実現し、その場でドキュメンタリー映画の企画について打診してみました。ゲイルは私のアイデアにとても共感してくれてプロジェクトを承認し、フランクの個人的なアーカイヴ素材へのアクセスも許可してくれたのです。また私は100%のクリエイティブ・コントロールと最終編集権を与えられ、外部からの指示は一切なく、自分の当初のビジョン通りに作品を作り上げることができました。ゲイルには本当に感謝しています。

『ZAPPA』制作の過程で私は毎日、フランク・ザッパに関しての新たな発見と出会っていました。素材として特にありがたかったのは、ギャリック劇場の映像と晩年、生前最後のビデオ素材です。フランク・ザッパ自身の言葉で、首尾一貫した作品の芯を作り上げることが私にとって非常に重要なことでした。映画自体がザッパの死後の告白のように感じられるように作りたかった。

私は人々がフランク・ザッパの作品を好きであるか、フランクのことを人間的に好きであるかに関係なく、映画を観た人がこの芸術家としてのフランク・ザッパと、彼の挑戦的な人生の旅に魅了されることを望んでいます。そして、『ZAPPA』が日本で公開されることにとても感謝しています。日本の皆さまが楽しんでくれることを願っています。

アレックス・ウィンター
【アレックス・ウィンター プロフィール】
アレックス・ウィンターは、子役として『王様と私』や『ピーターパン』をブロードウェイの舞台で演じ芸能界に入った。そして、ワーナーブラザースのヒット作『ロストボーイ』や大人気のビルとテッドシリーズによって映画界で一躍有名になる。映画監督としては、人気カルト映画『ミュータント・フリークス』(20世紀フォックス)や、カンヌ国際映画祭の公式セレクションに選ばれ監督週間に上映された『悪魔の棲む家』(ライオンズゲート)などの長編を手掛けている。また、自身の映画を製作するためにTrouper Productionsを設立、2019年に2本の長編ドキュメンタリー映画をリリースした。1本は、史上最大の世界的スキャンダル、パナマ文書事件と、それを報道するため大きな危険を冒して秘密裏に活動したジャーナリストを追った『The Panama Papers(原題)』。多くの賞を受賞したこの映画は、ローラ・ポイトラスが製作総指揮を務め、ロッテントマトでは100%の高評価を得た。同様に、ビットコインとブロックチェーンの台頭を描いた『Trust Machine : The Story of Blockchain(原題)』も公開され世界の映画祭を巡っている。映画『ZAPPA』は、フランク・ザッパの人生と彼の時代をあらゆる面で網羅した、初のドキュメンタリー作品であり、『ZAPPA』のために、クラウドファンディング史上最も高額な資金を集めたドキュメンタリーにする、というキックスターターのキャンペーンが行われた。待望のビルとテッドシリーズ第3弾、『ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!』は2020年に全世界で公開され、同年、ウィンターは『Showbiz Kids(原題)』(HBO)というドキュメンタリーを撮っている。プロデューサーは、頻繁に共同制作しているグレン・ジッパーとRinger films のビル・シモンズ。
フランク・ザッパは、60年代にロック史上初の2枚組アルバム『フリーク・アウト』でデビュー。以後、ロックにとどまらずドゥーワップからリズム&ブルースといった大衆音楽からジャズ、現代音楽などの芸術音楽までを取り込んだ雑食的なスタイルに、舌鋒鋭い政治批判と強烈なシモネタが同居する歌詞世界で死後30年近くが経過したいまでもなお存在感を失わない異端のミュージシャンである。商業芸術、商業的な成功とは別次元の世界に存在し、ビートルズ、デヴィッド・ボウイ、エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、トム・ウェイツほか数えきれないミュージシャンに多大な影響を与え、ローリング・ストーンの「史上最も偉大な100人のギタリスト」において第22位に選出されたロック史上の巨人だ。その生涯を、何千時間にもおよぶザッパ本人が遺したアーカイヴ素材を駆使して綴るドキュメンタリーこそ『ZAPPA』なのだが、このアーカイヴ素材が公となるのは初。
『ZAPPA』 (c) 2020 Roxbourne Media Limited, All Rights Reserved.
多方向に回路を解放していたザッパならではのジャンルを超えた貴重な映像も満載だ。舞踊ファンならば、ザッパ生前最後の作品『The Yellow Shark』の1992年9月フランクフルト公演の映像においてラ・ラ・ラ・ヒューマンステップスの迫力あるダンスと再会できて感涙することだろうし、現代音楽好きならば、エドガー・ヴァレーズやピエール・ブーレーズの姿を見出して微笑むことだろう。
そして何よりも、チェコスロバキア(当時)の民主化を果たした「ビロード革命」後に同国を訪れてライブをおこなったザッパへの熱烈歓迎ぶりやザッパによる挨拶に触れることは、ウクライナ危機のいま、観る者に新たな感慨をもたらすことだろう。
『ZAPPA』 (c) 2020 Roxbourne Media Limited, All Rights Reserved.
もちろん、これらは氷山の一角にすぎない。上映時間は128分だが、その凝縮度は凄まじく高い。単なるミュージシャンのドキュメンタリー映画とは一線を画した内容と、伝説的なアーティストの妥協なき精神を見事に描き、ザッパ・フリークはもちろん、ザッパ入門者にも最適という、実に待望のドキュメンタリー作品といえる。
なお、本作の日本公開にあわせ、素晴らしい音源満載の映画『ZAPPA』サントラと『200モーテルズ』50周年盤の日本盤CDも発売された。さらに、バリー・マイルズ著の新たな評伝本『フランク・ザッパ』も先日発売された。過去にも興味深いザッパ関連書籍は多数出版されている。この機にザッパの世界にどっぷり浸かってみてはいかがだろうか。
『ZAPPA』 (c) 2020 Roxbourne Media Limited, All Rights Reserved.

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