T-BOLANが
大ヒット量産した秘訣を
彼らの代表作『SO BAD』から
模索する

『SO BAD』('92)/T-BOLAN

『SO BAD』('92)/T-BOLAN

オリジナルアルバムとしては、なんと28年振り! “ビーイングブーム”の渦中にあった1990年代からこれまで何度もさまざまなアクシデントに見舞われてきたT-BOLANだが、実に四半世紀以上の時を経て、3月14日に5th『LOOZ』に次ぐニューアルバム『愛の爆弾=CHERISH ~アインシュタインからの伝言~』を発売した。改めて“T-BOLANとは何であったか?”と向き合うため、彼らのオリジナルアルバムで最高セールスを記録した『SO BAD』をピックアップし、当方なりに彼らの魅力を分析する。

脊髄反射的にT-BOLANと認識

このアルバムは初めて聴いた。だけど、初めて耳にした気がしない。それがとても不思議だった。もっとも、ここに収録されたシングル曲のM1「じれったい愛」とM10「サヨナラから始めよう」はともに本作が発売された年の大ヒットシングルであって、M1に至っては年間チャートの36位にランクインしたほどだから、自発的には聴かずとも間違いなく、どこかで耳にしていたことだろう。何しろT-BOLANは俗に言う“ビーイング系”である。1990年代初めから、T-BOLANの他にも、B'z、ZARD、WANDS、大黒摩季、DEENら、レコード会社兼マネジメント会社であるビーイングに所属しているアーティストたちがヒット曲を連発している。当時をリアルタイムで過ごした音楽ファンならば、彼らが巻き起こした旋風のすごさはよくご存知だろう。[1993年においては、不況のさなかビーイング系アーティストは合計450億円前後を売上げ、業界の7%を占めた]というから、客観的なデータもそれを示している([]はWikipediaからの引用)。ちなみに今回調べたら、“ビーイングブーム”でWikipediaのページがあるくらいなので、この現象は完全なる歴史の1ページとなっていると言ってもいいようだ。

そんなことだから、シングル曲を知っているのは仕方がないし、この『SO BAD』もT-BOLANのオリジナルアルバムでは最高セールスを記録したものであるから、自然と耳にしていたのかもしれない。それもあながち否定できないけれど、だとしても、発売から30年も経って、どの曲も聴き覚えがあるような気がするのはすごいことだと思う。もう一回言うが、自分はこのアルバムを初めて聴いた。それでも、聴いたことがあるように感じたのはーーもっと突き止めて言えば、これがT-BOLANであることを当たり前のように認識できたのは、それだけこのバンドの旋律が大衆感にあふれており、しかも、そこにはそれを聴いた者が脊髄反射的に“T-BOLANだ!”と認識できるだけの個性があるということではなかろうか。スムーズにキャラクタライズできる音楽性──は変な言い方かもしれないが、そんな気もする。

OKMusic編集部

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