市川海老蔵「古典の面白さを改めて伝
えたい」~『六本木歌舞伎2022』イン
タビュー

2015年、市川海老蔵が歌舞伎への熱い思いによってスタートさせた『六本木歌舞伎』。これまで、宮藤官九郎やリリー・フランキーが脚本を手掛けたり、三宅健らが出演するなど、様々な分野の第一人者とダッグを組み、『地球投五郎宇宙荒事』、『座頭市』、『羅生門』といった題材を描いてきた。今回、これまでの六本木歌舞伎で演出を手掛けてきた三池崇史の監修のもと、日本舞踊の宗家藤間流八世宗家・藤間勘十郎が演出を務める。また、ジャニーズグループA.B.C-Z戸塚祥太が歌舞伎に初挑戦。
開幕が迫る中、市川海老蔵に話を聞いた。
ーーまずは海老蔵さんより、作品の説明をお願いいたします。
今回のタイトルは『ハナゾチル』。通称『白浪五人男』でお馴染みの河竹黙阿弥の名作『青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)』をベースにしています。戦隊物の元となったと言われているこの作品を中心にしつつ、その中に現代の戸塚さんがタイムリープして、その時代の人たちとコミュニケーションを取りながら話が進んでいきます。『六本木歌舞伎』は今まで新しいことに挑戦してきたのですが、今回は歌舞伎の古典作品を新しい角度で観られるようにしています。『白浪五人男』が描いているのは、男たちが悪の華として咲き、生きる姿。海の白波って、ザーッと寄せてきてさっと引いていく。その潔さや儚さを表現しているんです。「散ることを知りながら咲くことを恐れない」という言葉もあるように、白波と桜が散っていく様は当時の若者たちの粋・生き様に似ている部分もあるので、題名を『ハナゾチル』としました。
ーー今回は戸塚さん、前回の『六本木歌舞伎』では三宅健さんと、『ABKAI』では中山優馬さんやSnow Man宮舘涼太さん、阿部亮平さんと共演されています。ジャニーズの方に対するイメージはどんなものでしょうか。
皆さんやっぱり情熱があり、諦めないですよね。目指すところに対してどこまでできるかという努力をすごくされる。中山優馬さんなどもそうですが、何が足りないかを聞いて、努力を継続されるんです。歌舞伎は演出方法が独特なので、すぐにはできないのです。それに対して何十回も練習を繰り返している姿にはやはり胸を打たれます。
市川海老蔵
ーー初めて歌舞伎を観る方も多いと思うので、ポイントを教えてください。
戸塚さんは戸塚さんとして舞台に現れるので分かりやすいと思います。歌舞伎の部分も、浜松屋など分かりやすい部分を選んでいます。僕が弁天小僧菊之助という役で、女装をして、ゆすり・たかりをして、バレる。普通はバレたら謝ったり、二度としませんって言ったりしますよね。でも弁天小僧菊之助は、明らかに自分が悪いのに、「すみません」じゃなくて「君たち私のこと知らないの? だったら教えてあげるよ」となるんです。例えば、ダイヤモンドを盗んで捕まったのに、警察に向かって「私はダイヤモンド強盗としてすごく有名なんだ。今から私のことを説明するからまず聞いてください」といって唖然とさせて、堂々とそこからいなくなる。初めて観る方にも、古典作品ならではの面白さも楽しんでいただくのが今回のコンセプトです。
ーー作中で戸塚さんがタイムリープするとのことですが。
演出家ではないので大きなことは言えませんが、イメージとしては『東京卍リベンジャーズ』。あの作品は、主人公が恋人を守るために未来から過去に行って色々と頑張るんです。そこまではいかないにしても、戸塚さんがタイムリープし、昔の若者が持っていたポテンシャルや心構えを受け取って現代に生きるような話になっていると思います。
ーー製作発表会見では、アクロバットの要素も入れたいとおっしゃっていました。
最初のシーンが博物館のようなところで始まるんです。舞台セットがどうなっているかまだ分かりませんが、戸塚さんが泥棒のようなことをする場面なので、できればここをパルクール的な感じで追手から切り抜けてほしいなと思っています。
ーー『六本木歌舞伎』の題材の選び方やコンセプトを教えてください。
最初の『地球投五郎宇宙荒事』は十八代目中村勘三郎さんが私に下さった「地球を投げるくらいの荒事をしないと」という言葉から決まりました。その後は『座頭市』や『羅生門』など、新しくてキャッチーなことを目指して挑戦してきました。コロナ禍で何をしようかと考えた時に、今回は歌舞伎の古典作品を好きな方にも楽しんでいただけるようにしようと考えました。古典作品を広く多くの方に楽しんでいただくには『青砥稿花紅彩画』が一番いいのではと思い選びました。
ーー『六本木歌舞伎』ですが、印象に残っているお客さんの反応などはありますか?
劇場がEXシアター六本木ということもあって、盛り上がりが直に感じられたというのが印象的でしたね。一作目からスタンディングオベーションがありましたし、六本木という立地もあるのか、若い方も多く観にいらしてくださいました。お客様と一緒に盛り上がれる空間で、自分達が何か新しいことをやっているのかもしれないという感覚も味わいました。
六本木歌舞伎2022 『ハナゾチル』
ーー監修の三池崇史さんの印象、三池さんから学んだことを教えてください。
すごく優しいんですよ。映画作品でも、撮影を終えて家に帰ったスタッフさんがビールを飲んで「今日もいい仕事をした」と思えるかどうかというところにまで気を遣われる繊細さがあるんです。最初は監督の映像作品とは全く違う優しさが意外に思えましたが、だからこそ作品も魅力的なんだと思います。また、『白浪五人男』は言うなれば不良の物語。三池監督の作品でいうと『クローズZERO』などもありますから、いいアドバイスをいただけるかと思っています。
ーー今回はその三池さんに藤間勘十郎さんが加わります。
勘十郎さんとは10年以上の付き合いがあり、何度も一緒にお仕事をしております。音楽的なセンスが素晴らしい方です。また、歌舞伎以外に宝塚歌劇団の作品なども演出されていて、脚本を読む力が、彼なりの世界観に繋がっていると感じます。それもあって、普段私は台本にも演出にも口を出すタイプなのですが、今回はお任せしようと思っています。
ーー海老蔵さんが一番観てほしいシーンはどこでしょうか。
やはり、『白浪五人男』の物語の中で女性(女装)から男性に変わる場面です。あとは「どんたっぽ」ですね。最後のクライマックスで行われる屋根の上での立廻りも観ていただきたいです。感染対策をしっかりした上で花道も作りますので、お客様と近い距離で、歌舞伎らしさを感じていただけると思います。

古典の名作をベースに、初めて歌舞伎に触れる方でも楽しめるだろうと感じられる『ハナゾチル』。本作は2022年2月18日(金)よりEXシアター六本木にて開幕。その後、福岡と大阪でも公演が行われる。
取材・文=吉田沙奈

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