Editor's Talk Session

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【Editor's Talk Session】
今月のテーマ:
コロナ禍における
アイドル運営の葛藤と秘策

ステージスキルが上がった
オーダーメイドライヴ

岩田
2020年からのコロナ禍ではどんな打撃がありましたか? アイドルは特に収入源のひとつである特典会もできなくなってしまったと思いますが。
西川
うちが運営しているグループではCDの複数購入をさせていないんですね。売上げの中心はチェキなので、うちの会社の音楽部門はずっと赤字です。他の事業もやっていて、今はそこで黒になっているので、アイドルに投資していると思っています。ビルの1階がライヴハウスで、2階が楽屋、3階が事務所とスタジオ、4階がダンススタジオになっているんですけど、全グループ共通で本人たちが負担するのはこのビルまでの交通費だけで、それ以外は全部会社が出すようにしているから、もともと赤なんですけど。だから、“あぁ、赤やな”くらいの感覚でした。
岩田
特に身動きがとれなかった最初の緊急事態宣言中(2020年4〜5月)は、どのように活動されていましたか?
西川
全員休ませていました。でも、家にひとりでこもっていたら気持ちが病むじゃないですか。だから、スタジオを解放して、練習しなくてもいいから息抜きに来てもらっていましたね。あとは、メンバーそれぞれに短い歌詞を書かせて、Pocochaで配信しながら、その場で僕が曲を作るっていうのもやっていました。“西川、先に曲作ってるやろ!”と言われるのが嫌だったので、その場で本人にどんな曲にしたいか要望を訊きながら(笑)。で、曲を作ったらそのままレコーディングして、ハモリも入れ、修正もして全部で2時間くらいで完成させるっていうのを週に何回かやって、その様子を各々がTikTokにアップするっていう。バズらなかったけど、それは結構評判が良かったです。緊急事態宣言が明けてからは、自社のライヴハウスで感染対策をすると定員が11人だったので、11人のみのライヴを開催して、最前列から順にチケット代を変えてみたり。そうやってなんとか売上げを作ってやっていましたけど、出演者も会社の中だけでやっていたので、お客さんは減っていきましたね。代わり映えがしないから、やっぱり飽きてくるんですよ。それだとメンバーのモチベーションも下がってしまうので、途中からはMVばっかり作っていましたね。どうやったら本人たちのモチベーションを保ってあげられるかっていうのが、ずっと心配でした。
岡部
CANDY GO!GO!は収録したライヴを届けるサービスを始めたんですよ。注文してくれたお客さんが考えたセットリストでライヴを収録してお渡しするという、オーダーメイドライヴというもので、簡単に言うと顧客フォローに走りました。リードヴォーカルやフォーメーションも好きなようにオーダーができるので、ものすごい手間がかかったんですけど、400通りくらい撮りましたね。持ち曲も100曲くらいあるので、最初はメンバーからも大ブーイングで“こんなことできるわけない!”と言われたんですけど(笑)。生でライヴをやる機会が減ったぶん、ほぼ毎日ライヴ収録をしていました。あとは、通販にも力を入れて、これを機に注文から発注までを全部社内でやるようにしたんです。チェキは普段のライヴでは撮れないような私服とかコスプレにして、そこにサインやメッセージを書いたりと、その面倒なことをやっている感じが共感を得たのか、たくさん注文をいただいて、まさかの前年比アップという(笑)。
千々和
オーダーメイドライヴを始められた2020年夏頃にインタビューでメンバーのみなさんにお会いした時に、ものすごく元気というか、“すごく忙しいです!”という感じで活き活きしていたのを覚えています。
岡部
そうですね。大変だったんですけど、そのおかげでひとりひとりのステージスキルが上がったのは本当に良かったです。自分だけじゃなくて、他のメンバーがどういう動きをしているのかが分かるようになるので、オーダーメイドライヴは今も継続しています。なかなかライヴに来られないお客さんも楽しんでくれているのも嬉しいですね。なので、CDリリースも例年と変わらないペースでやっていたし、インストアライヴも店舗の方と相談してみたりと、いろいろ挑戦していました。
西川
僕の周りの成功例で言うと、配信ライヴオンリーに切り替えて、カメラを5台くらい使って、しっかりチームを組んだ状態で大きい会場を押さえているところもありました。今ではアイドルに会えるのが普通ですけど、昔ってテレビの向こう側の人だったじゃないですか。そこのグループは、いち早くクオリティーの高い配信ライヴに力を入れたから、お客さんがその感覚になってくれて、売上げも上がったみたいです。メンバーの意識も目の前のお客さんだけじゃなくて、その向こう側も意識するようにもなって。うちはライヴハウスを運営していることもあって、そういった距離感のところはうまく使えなかったんですけど。
石田
それぞれの持っている個性をどう活かせるかっていうところが、結局は重要になりましたよね。ライヴでのパフォーマンスや楽曲の良さ、MVのクオリティーとかも含めて、何でお客さんを惹きつけるのかって。
岡部
そうですね。最初にライヴができなくなった時は、接触できない中でいかに接触するかっていう、音楽よりもコミュニケーションで切り抜けていこうとするグループが多かったんですけど、なかなか難しかったみたいで。
西川
配信も最初は反響があるんですけど、だんだん同じ人ばっかりが観てくれているだけで、お客さんも飽きてしまうのでやめました。あと、1対1でタレントとお話しできるサービスとかも試してみました。確かに売上げは作れるけど、お客さんとアイドルの距離が近くなりすぎてしまうから、それはあまり良くないなと。それに、今まではライヴ会場まで行って、物販を買って、チェキを撮って、やっと少し話せるくらいだったのが、今ではスマートフォンでコメント打ったら反応してくれるじゃないですか。そこのバランスも難しいなと。
岡部
まったく同じ流れでうちもやめたんですよ。お客さんも疲弊してきちゃうんですよね。逆にお客さんが離れていってしまうので、先にメンバーから“これはやめましょう”と言われました。

OKMusic編集部

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