アイランド所属の
異色の面子が顔を揃え、
ケヴィン・エアーズの
絶頂期をとらえたライヴ。
『June 1, 1974 〜
ケヴィン・エアーズ
&ジョン・ケイル、イーノ、ニコ』

ワイアット、オールドフィールド

実に惜しい点もある。ケヴィンのサポートで参加したロバート・ワイアットがやはりこの年に名作『Rock Bottom 』(‘74)を出している。そしてマイク・オールドフィールドは傑作『Tubular Bells』(‘73)を出し、じわじわと評判を高め、ちょうどこのコンサート出演時にはアルバムが全英チャートのトップ10に入ろうとしている時期だった。最終的には『Tubular Bells』は全英チャート1位、米国においてさえBillboard 200で最高3位を記録するという、今でも信じられないようなセールスを記録した作品なのだが、そのオールドフィールドが、かつて自分が世話になったバンマス、ケヴィンを盛り立てるべく参加している。もしかしたらワイアット、オールドフィールドにスポットライトが当てられた時間があったかもしれない。が、ふたりとも当日はまだ新興のレーベル、あのヴァージンに所属していたのだ(オールドフィールドは所属アーティスト第一号だ)。仮に音源があってもアルバムに収められるわけがない。今ならレーベルの垣根も越えた完全版リリースも不可能ではないと思うのだが。

というふうに、惜しい点ばかり書いてしまったが、このアルバムがいまいちなのかと言えばそうではなく、むしろケヴィン・エアーズに関しては珠玉のライヴなのだ。私自身、東京九段会館で行なわれた彼の初来日コンサートを観ているのだが、このアルバムでもケヴィンを見事にサポートしているオリー・ハリソール(ギター)を伴ってのライヴは、ハリソールはともかく、主役のケヴィンは普段は楽器も触ってないんじゃないかと思わせるほどに素人っぽく、ユルい演奏だった。だから、ダメだったというわけではなく、彼らしいボヘミアンぶり、微睡んでいる吟遊詩人みたいな魅力にはさすがと思わせられたものだ。だが、大体はライヴはいつもぶっつけ本番なのか、まあまあの評価が大半だ。それがスタジオ作ではどこにやる気を隠していたのか、こちらの裏をかくような傑作、佳作をスッと出したりするから驚きなのだ。で、このコンサートでは、なかなか気合いの入った引き締まった演奏で、歌も色気たっぷりと、ケヴィン節が冴えている。誰かも書いていたが、彼のライヴとしてはベストの出来なのだから参る。これを聴いてケヴィンに惹かれない人、ことに女子なんていないんじゃないかと思う。

さて、このアルバムのキャッチコピーだが、難渋した。こんな感じでどうだろうか。

『June 1, 1974 聖人たちの饗宴』〜ケヴィン・エアーズ&ジョン・ケイル、イーノ、ニコ

TEXT:片山 明

アルバム『June 1st 1974』1974年発表作品
    • ※詳細はリンク先をチェック
『June 1st 1974』('74)

OKMusic編集部

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