『OSAKA NIGHT PARADE〜vol.3〜』th
e engy、FIVE NEW OLDら次世代アーテ
ィストが味園ユニバースでともした希
望の灯

『OSAKA NIGHT PARADE~vol.3~ supported by SUPPLIER』2021.11.28(SUN)味園ユニバース
11月28日(日)、大阪・味園ユニバースにて『OSAKA NIGHT PARADE~vol.3~ supported by SUPPLIER』が開催された。本イベントは、コロナの影響で人と会い、音楽を楽しみ、思いを共有することが当たり前にできなくなった日々の中で、それでも当たり前の日々が戻ってくることを信じ、今はまだ暗いけれど「音楽・芸術の力で大阪のネオンサインのように、世界をちょっと明るく!」という願いを込めて行われるもの。会場の味園ユニバースでもライブが激減していたが、消えた灯をともそうと今年3月に2度開催され、今回で3度目のイベントとなる。
『OSAKA NIGHT PARADE』
サポートするSUPPLIERは、次世代のストリートファッションブランドを扱うセレクトストアとして2018年に発足、2020年に東京発のオリジナルブランド「SUPPLIER」をスタート。日本のストリートファッションシーンを牽引する人気ブランドで、国内外問わず多くのアーティストからも支持を得ている。出演はthe engyDoulFIVE NEW OLD、そしてオープニングアクト(OA)としてSPENSR。これからの音楽業界で活躍を期待されるアーティストが顔を揃えた。今回はそんなライブの模様をレポートしよう。
もちろん当日はマスク着用、検温、消毒、新型コロナ追跡システムCOCOAの登録、ディスタンスをとっての鑑賞と、感染対策をしっかりととられた上で行われた。開演を待つオーディエンスは、皆どこかファッショナブル。ようやく解禁されたお酒やドリンクを手に、DJを聴きながらゆったりと過ごしていた。
心地良いグルーヴ感で魅了した若き才能、SPENSR
SPENSR
定刻の15分前にOAとして登場したのはSPENSR。シンガーソングライターでトラックメイカーのカズキ_ ウツミが2019年に始動したソロ・プロジェクトだ。作詞作曲、アレンジ、楽器演奏、録音、ミックス、アートワーク、MV制作まで、全てを1人で行う新進気鋭のアーティストで、ライブはバンド編成で行うスタイル。
SPENSR
静かにステージに登場し、1曲目は「ill」を披露。ステージをラフにゆらゆら歩きながらラップを吐き出してゆく。「どうもSPENSRですよろしく」と挨拶し、「EQUALS」へ。ベースとドラムのリズム隊に支えられて、高音の歌声を響かせる。スモークとVJの演出が相まって楽曲の雰囲気を引き立てていた。続いて「いい感じに揺らせます」と、12月8日(水)リリースの新EP「Beats In The Morning」から先行配信された「Screaming, but dreaming」をプレイ。英語と日本語を織り交ぜた緩急のある気持ち良いナンバーだ。愛を歌った「Navy Slumbers」では、言葉をはっきりと伝えるようにフロウを紡いでゆく。グルーヴィで心地よいサウンドに、客席も大きく身体を揺らして応える。ラストは都会的なポップチューン「どうしようもないな」で一気に駆け抜けた。曲を重ねるごとに声の伸びが増し、歌唱力の高さと意思の強さを感じるライブだった。「Thank you so much」と笑顔で挨拶し、会場を良い温度にあたためてステージを後にした。
演奏力の高さと爆発力で、ライブの醍醐味をみせたthe engy
the engy
本編トップバッターは京都の4人組バンドthe engy。SEが流れると客席からクラップが起こる。1曲目は「Sleeping on the bedroom floor」。ドラムカウントから山路洸至(Vo.Gt.Prog)のパワフルな歌声が会場全体に響き渡る。身体に感じるドラムとベースのビート感。のっけからかなりの熱量で挑みかけてくる。山路はとにかく楽しそうで、境井祐人(Dr)のスティックを使い、シンバルを叩きまくる。「今日は熱いライブをして帰ります、よろしくお願いします」と山路。続く2曲目は「Touch me」。濱田周作(Ba)のベースラインが全身を震わせ、境井の躍動感あるドラムがさらに盛り上げる。
the engy
山路が1曲目で叩いていたスティックが勢い余って折れてしまったことを告白。「折れた先はどこにいきました? 誰か当たってないですか? そこ飛んでいった? うわーすいません!」と、客席とコミュニケーションを取りながら、演奏のグルーヴとは正反対のゆるいMCを繰り広げる。そして「髪型ガチガチに固めて気合入れてきたんでよろしくお願いします!」と「Funny ghost」へ。藤田恭輔(Gt.Cho.Key)が操るシンセがアーバンさを醸し出す。山路はギターを手にし、一曲入魂といった感じで叫ぶように歌う。フロントマンの3人も呼応するように大きく動き、ステージの温度を上げる。
the engy
ミドルナンバー「Hey」では、優しく広がるサウンドスケープに客席も心地よさそうに身を委ねる。とても上質で、時間を忘れるほど贅沢だった。「She makes me wonder」ではステージ上に設置されたモニターに、リアルタイムのライブ映像とVJが混ざり合い、効果的な演出を果たしていた。ここで境井のバスドラが前に滑り落ちそうになるトラブルが発生。「待っていただくのもなんなので、弾き語りと僕の高校生の話とどっちがいいですか?」と山路。会場を笑いに包み込む。この緩急もthe engyの魅力のひとつだ。
the engy
そして「遊んでってください」とエレクトロ要素とラップ満載の「When you're with me」をドロップ。ギターリフが冴え渡り、山路はサンプラーで遊ぶ。轟音をあげて4人の熱量は最高潮に。フロアもしっかり巻き込まれて会場が一つになる。と、今度は山路の機材にトラブルが発生。予定していた1曲ができなくなってしまったが、ゴスペル感のある「Lay me down」、山路のスモーキーなラップが爆発した「Headphones」をこれでもかと全力でぶつけ、ステージを後にした。ライブは生モノだと感じさせられた素晴らしいライブだった。
大阪初ライブ、初のバンドスタイルでカリスマ性を発揮したDoul
Doul
続いては福岡出身で18歳のDoul。完全自己プロデュースアーティストで、Spotifyが2021年に躍進を期待する次世代アーティストを決める『RADAR:Early Noise 2021』に抜擢、NikeJapanとアンバサダー契約を結ぶなど、音楽のみならずファッション分野でも注目を浴びている。この日はDoulの記念すべき大阪初ライブ。ドラムのカウントでステージがパッと明るくなり、目に飛び込んできたDoulの出で立ちに驚いた。ライオンみたいな金髪、バチバチのメイク、革ジャン、ショートパンツに穴あき網タイツ。バンドメンバーもデヴィッド・ボウイや80年代ハードロックバンドを彷彿とさせるファッションとメイクに身を包んでいる。
Doul
驚いたのはビジュアルだけではない。「The Time Has Come」の低く落ち着いた歌声で客席を魅了する。大阪の観客は反応が正直だと言われるが、ほんの2~3分でフロア全体がDoulに心を掴まれたのがはっきりとわかった。続く「Howl」ではハンドマイクでラップを披露。腹まで響くベースに合わせて手の平で振り付けをする姿はチャーミングだ。MCでは「大阪の皆さん初めまして。Nice to meet you!」と流暢な英語で挨拶。「Doulの風を感じて暴れて帰ってください」の言葉に大きな拍手が贈られた。
Doul
初めて書いたというラブバラード「My Mr.Right」、1人だけで最後まで歌いきる「Infinity」で歌唱力の高さと圧倒的な存在感を放つ。その場の全員が釘付けになっていたと思う。「Heart is Breaking」ではさらに表現力で会場を魅了。オーディエンスの反応から「すごい奴が来たぞ」感をひしひしと肌で感じた。曲に合わせてゆっくり革ジャンを脱ぐ姿すらもカッコ良くて美しい。大人っぽいが、時折見せるはにかんだ笑顔にはあどけなさも残る。
Doul
「Bada Bing Bada Boom」「From The Bottom」で客席の熱を上げ、2度目のMCでは「How was it? Good? 大阪最高です!」と無邪気に笑う。「自分のしたいことをして、それを皆にも愛してもらえるように、自分を愛してやっていこうと思うのでぜひついてきてください」と、デビュー曲「16yrs」を歌い上げ、最高の一体感で会場を巻き込んで曲を終えると、大きく礼をしスキップでステージを去っていった。Doulの持つカリスマ性を存分に発揮した、パワフルで新鮮で、どこか懐かしさも感じるライブ。時代もジャンルもジェンダーも超えた、ハイブリッドな次世代アーティスト。とにかく最高の一言だった。

大阪では年内ラストライブ。表現力の幅で貫禄を感じさせたFIVE NEW OLD
FIVE NEW OLD
トリを飾るのは、今年結成11周年を迎えたFIVE NEW OLD。1曲目は「Fast Car」。疾走感のあるサウンドに身体が勝手に揺れる。HIROSHI(Vo.Gt)のソウルフルな歌声が会場の後ろまで抜けてゆく。これまでに登場したバンドのバトンを引き継ぐように、初っ端から熱がこもる。続けざまに披露された「Black & Blue」では、WATARU(Gt.Key)、SHUN(Ba)、HAYATO(Dr)のコーラスワークがサウンドに厚みを加え、4人のアンサンブルがステージを彩った。
FIVE NEW OLD
WATARUがキーボードを奏でる「Liberty」では、「大阪踊ろう」とのHIROSHIの声を合図にフロアはダンスホールに。サビ前で自然発生的にクラップが起こり、サビでは一斉にハンズアップ! メンバーも嬉しそうに笑顔を浮かべる。ギターソロを経て、HIROSHIは高速ラップ、ゾクゾクするビブラートを聴かせ、ボーカルの表現の幅広さを見せつけた。続いて、「Don’ t Be Someone Else」へ。HIROSHI自身も踊りながら表現力たっぷりに歌い上げる。SHUN(Ba)が手拍子を煽ると、会場の一体感はさらにアップした。HAYATOのタイトなリズムからアーバンな「The Dream」へ、そしてSHUNがシンセに、WATARUがキーボードに向き合い「My House」をプレイ。重く歪んだサウンドが耳を満たしてゆく。スモークとVJ、歪んだギターの音、真剣なメンバーの表情。ただ音を浴びる没入空間。今のFIVE NEW OLDのこだわりと意思を感じるようだった。
FIVE NEW OLD
味園ユニバースでのライブが2年前のツアーぶり、2度目となることから「呼んでくださってありがとうございます」とHIROSHIが挨拶。対バンライブができるようになったことを喜びつつ、「音楽は聴いててお腹が膨れるわけじゃないけど、心の足りない部分を満たしてくれるものだと思うんですよ。あなたにとって明日の新しい彩りになっていれば嬉しいです。来年もどこかでお会いしましょう!」と今年最後の大阪でのライブを締め括った。明るく多幸感のある「Ghost In My Place」、ギターのリフが印象的な「Breathin’ 」で加速度的に会場を一体にし、余すことなく全力で演奏と歌唱を出し尽くし、ライブの幕を閉じた。
いくら配信ライブが便利だといっても、やはり生音に敵うものはない。きっと久々の生ライブだった人もいるだろう。アンコールを求める拍手がいつまでも鳴り止まなかったことが、この日のライブが素晴らしかったことを物語っていた。そして、「これからどんな音楽を聴かせてくれるんだろう」とワクワクするような、可能性と新しさに満ち溢れたアーティストと出会えたことに、感謝の気持ちを送りたい。
そして次回の『OSAKA NIGHT PARADE~vol.4~ supported by SUPPLIER』が早くも決定! 2022年1月22日(土)、今回と同じく味園ユニバースにて開催する。現在発表されている出演者は、YONA YONA WEEKENDERSと浪漫革命。チケットは現在発売中。続報・詳細はHPをチェックしよう。
取材・文=ERI KUBOTA 撮影=中田トモエ

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