Absolute areaが3か月連続リリースと
2年ぶりワンマンの先に見据える未来
予想図とは?

2021年5月から3か月連続で「いつか忘れてしまっても」「記憶の海を泳ぐ貴方は」「SABOTEN」の3曲をデジタルリリースし、それと併せて2マンライブを行ってきた、3ピースバンド・Absolute area。「ポップバンドとして前に進んでいきたい」という意識のもと、精力的に活動を行っている彼らは一体どんなバンドなのか? バンドのAbsolute area(=絶対領域)に踏み込むべく、メンバー全員に話を訊いてきた。
――Absolute areaは、2019年にリリースした2ndミニアルバム『無限遠点』を境に、ギターロックからポップバンドへと変わったように思います。それは意識的な変革ですか?
山口諒也(Vo/Gt):僕が音楽を始めたきっかけがMr.Childrenということもあって、元々J-POPというか、ポップな音楽をやりたかったんです。その上で、自分たちが成長するにつれて少しずつイメージ通りの音楽ができるようになってきた、という実感を得られたのが『無限遠点』ですね。
――時期を同じくして、楽曲の中にストリングや鍵盤の音も加わり、より大きいスケールになっていったと思いますが、その変化には柔軟に適応できたのでしょうか?
高橋響(Dr):いや、めちゃくちゃ苦労しましたね。それまではギターロックだったし、ライブでバーン!と鳴らすというモチベーションでプレイしていたので、音楽性が変化したことによって「ライブとは?」っていうことまで深堀りしていました。
萩原知也(Ba):ギターロックをやっていた時って、上物の目立つ部分はベースのフレーズを動かすことによって補っていたんです。だからこそ、ストリングスやピアノが入ることによって生じる差し引きや、加減の付け方には苦戦しましたね。デモの段階でダメ出しを食らったこともありましたし、自分のやってみたいプレイとの擦り合わせ方が難しかったです。
山口:でも、僕は知也が作るベースラインがすごく好きですし、僕らはあくまでも3ピースバンドなので、今でもギターロックを鳴らしていた頃の役割は果たしてくれていると思っています。バンドだからこそ、それぞれの良さをしっかり出していかなきゃいけないとも思っていますね。
――山口さんは、そうしたアレンジを含めた「ポップス」という音楽性が、自分がやりたいことのどういう部分とリンクしたと思いますか?
山口:うーん。音が加わることで表現の幅が広がるということも勿論あるんですけど、最大の理由は、自分が聴きたい音楽がそういうアレンジをしているものだから、ですね。だからこそ、王道のポップミュージックに近づいていきたいと思っているし、単純に自分が聴きたい音楽を自分が作っているという感覚です。
――その「自分の為」という意識は歌詞からも感じられるところがあって、山口さんの深層心理に自ら触れていくような歌詞が、最近はより多くなってきているように思います。
山口:その意識は徐々に見出してきたものなんですけど、「カフネ」をリリースした頃からよりはっきりしたように思います。Absolute areaって「絶対的な領域」という意味で、これは脱退したメンバーが「ニーハイとスカートの間の部分が好きだったから」という理由でつけられたものなんですけど(笑)。でも、自分たちがどういう音楽を作っていきたいか?を考えていく中で、僕たちの音楽をひとつのツールとして、聴いてくれる人自らが心の中にある“他人が踏み込めない領域”に踏み込んで、自分自身との対話をしてほしいと思うようになったんです。だからこそ、作詞に於いては、とにかく自分のことを書こうと思っていますし、恥ずかしいくらいに自分のことを歌っていきたいんですよね。
――なるほど。今回、5月から7月まで、「いつか忘れてしまっても」「記憶の海を泳ぐ貴方は」「SABOTEN」の3曲を連続リリースされていましたけど、これは何か意図があってのチャレンジだったんですか?
山口:3か月連続で出すことによって、インパクトとアグレッシブさを打ち出したかったという思いがありました(笑)。リリースから時間も経ってしまっていたので。
――メロディのテイストはもちろんなのですが、歌詞に関しても、「回顧」「恋愛」「葛藤」という、Absolute areaの三本柱ともいえるテーマごとの3曲になっていますよね。
山口:そうですね。テーマや曲調も含めて、3作品それぞれの顔を見せたいなとは思っていました。
――この3曲については、Instagramの公式アカウントにて、リスナーからのアンケートを基にしたランキングを行っていましたが、皆さんの中でのランキングとの相違はありました? 1位が「記憶の海を泳ぐ貴方は」、2位は「いつか忘れてしまっても」、3位は「SABOTEN」でしたよね。
高橋:僕は「SABOTEN」が一位ですね。ドラムのフレーズを考える時に、前は諒也と言い合ったりもしていたんですけど、「SABOTEN」と「いつか忘れてしまっても」に関しては、変えてほしくないフレーズを事前に訊いた上で、それ以外の部分を自由に作り込めたんです。その中で、いい感じに作れたのが「SABOTEN」だと思ってます。ライブで叩いていても気持ち良いですし。
萩原:僕は「記憶の海を泳ぐ貴方は」、「SABOTEN」、「いつか忘れてしまっても」の順ですね。「記憶の海を泳ぐ貴方は」は、リズミカルでありつつも、歌とメロディは繊細で切ないじゃないですか? そのどちらに寄り添うべきなのかを考えるのに苦労したんですけど、結果的には、リズムを出しつつもストリングスに上手く絡めたフレーズが作れたと思っていますし、達成感はかなりありましたね。だからこそ「記憶の海を泳ぐ貴方は」は自信がありますし、色んな人に聴いてもらいたいと思っています。この曲には、岸田勇気さんにストリングス・アレンジャーとして入って頂いたんですけど、レコーディング直前にアレンジが変わったりもしたんです。
――おお、土壇場での変更は焦りそうですね。
萩原:でも逆に、その変化に触発されて新しいベースフレーズが浮かんだりもして、そうした相乗効果がすごく気持ちよかったです。
山口:余裕そうに話してますけど、知也はレコーディング当日に知恵熱を出したんですよ(笑)。
萩原:ははは! そうそう。準備期間中に頑張り過ぎちゃったんだよね(笑)。
高橋:あと二日耐えられたら良かったんだけど、我慢できなかったんだな(笑)。
――ははは! それだけ充実した制作だったということですね。山口さんはどうですか?
山口:僕は「記憶の海を泳ぐ貴方は」、「いつか忘れてしまっても」、「SABOTEN」ですね。「記憶の海を泳ぐ貴方は」は、歌詞の世界観もそうですけど、自分が聴きたい音楽を作ることができたなという手応えがめちゃくちゃあるんです。Bメロから始まるビート感についても、今の音楽シーンの流行を取り入れられたように感じましたし、こういう音楽って知也がめちゃくちゃ好きだよね?
萩原:好きだね。R&Bまではいかないけど、それに近いビート感だよね。
山口:そうそう。それを上手く絡めることができた楽曲だったので、Absolute areaの新しい一面を見せられるものになったと思います。
――ドラムパッドの少しこもったような質感の音は、歌詞の世界と相まって、水中にいるかのような感覚にさせますよね。
高橋:これは諒也のこだわりの賜物ですね。この音じゃなきゃやらせないってくらいの勢いがあったので……
山口:いやいやいや! お互いしっくりきたじゃん!(笑)
高橋:(笑)。この音に関しては、諒也が持っているイメージが共有できていたので、すんなり決まりました。
――最初にMr.Childrenが好きというお話がありましたけど、このジャケットはやっぱり『Q』や『深海』のオマージュ?
山口:まさにそうです。
――ああ、やっぱり。海というモチーフと人間の深層心理というテーマをリンクさせた曲にしたいという構想は、元々あったんですか?
山口:そうですね。今まで自分の過去を掘り下げる歌詞を書いてきたんですけど、この曲に関しては、相手の過去をテーマにしているんです。相手の過去を知るというのは、恋愛面でもそうですけど、胸が痛いことでもあると思うんです。でも、今目の前にいる“貴方”という存在を作った過去は素晴らしいものだと思うし、それらを丸ごと愛するくらいの心の広さを持って、色んな人と向き合いたいと思えたんです。そう思うことで、周りの人への接し方もより優しいものになると思いますし、そうした考え方をそのまま歌にしました。
――それはコロナ禍という人に会えない期間が影響した考え方ですか?
山口:元々考えていたことではあったので、直接的な影響はないと思います。でもやっぱり、こういう気持ちは曲を書いていく上で見つかってきていますね。「いつか忘れてしまっても」は自分の過去のことであり、あの曲があったからこそ生まれた曲でもあると思うので。
――バンド活動をしていくからこそ見えてくるものを、ひとつひとつ掬い上げて、曲にしているんですね。10月には、2年振りとなるワンマンライブも予定されていますが、イメージは出来上がっているんですか?
高橋:ワンマンライブに向けては、一歩一歩着実に動いてます。
萩原:今回の3曲って、コロナ禍を経ているということも含めて、個人的にもバンド的にもすごく成長できた曲たちだと思うんです。そうした楽曲たちを、WWW Xという大きな会場でしっかりと届けられる演奏をしなければいけないと思っていますし、そこに向けて準備もしているので楽しみにしていてほしいです。
山口:リスナーの方にワンマンで聴きたい楽曲のアンケートを取りつつ、その結果を踏まえたセットリストを組もうと思っていますし、今回の3曲以外の新曲もやろうと思っているんですよ。だから、この3か月で新しくなったAbsolute areaを見せることが出来たと思うんですけど、更にもっと先の僕らを見てもらえたらと思っています。
――今だけでなく、Absolute areaの未来を感じられるライブになると。
山口:僕らは普段、キャパ100人くらいのライブハウスでライブをしているんですけど、今回のWWW Xでのワンマンライブは、タイトルに「あの約束の埋め合わせを」とあるように、昨年4月に開催する予定だったライブのリベンジも兼ねているんです。曲作りをしている時に想定している会場はもっともっと大きいところで、ホール、アリーナ、スタジアムといった、壮大な場所で鳴らすことを考えながら作っていますし、今回のWWW Xもそうですけど、とにかく大きいステージで鳴らすことを目指していきたいし、だからこのWWW Xワンマンをその一歩として進んでいきたいですね!

取材・文=峯岸利恵 撮影=高田梓

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