OLDCODEX Painter YORKE.
『WHY I PAINT
～なぜボクがえをかくのか～』
- 第103回
♪Yuki Kajiura / 希望の光
（NHKドラマ連続テレビ小説
「花子とアン」）-

小学生の頃、
図工の授業の中で
小刀を扱う授業があって
僕は右手の親指を切った。
保健室じゃどうにもならないから
学校を早退して病院へ行かされた。
僕はわざと自分の手を狙って授業をサボろうとしたのに、
図工の先生は優しく怒って心配してくれた。
６年生になって、掃除の時間、
厳しい女子や先生から逃げ惑って
図工室にある謎の仮面を被って
友達とバレないように息を潜めた。
先生にすぐ見つかって、
その日から図工室の掃除を１週間くらいだったかな？

図工のその女の先生は、いつもおしゃれで可愛くて
他の先生と何か雰囲気が違って
友達みたいな口調で話す悪戯坊主の話も
聞いてるのか聞いてないのか
それもわかんない雰囲気で
でも、とにかく話終わるまで付き合ってくれた。

僕は褒められるような子どもじゃなかったのに、
時々走るのが早いこととか、絵が上手だとか、
挨拶をちゃんと出来て偉いわね、
なんて褒めてくれたりして。

2021年の６月、僕は舞浜のアンフィシアター、
７月は大阪のNHKホールのステージにいた。
本気で何かに向き合ってる自分よりも先輩たちが
きらきらしてて、そして意味がわからないくらい
優しく受け入れてくれた。
梶浦由記という音楽家が作り上げる世界と
その世界の中にいる全てのミュージシャンたち、スタッフ、
一個が欠けても成立しない感じの世界。
この曲を背中に受けながら、なぜだろう。
目頭が熱い。
自分の生きてきた道が正しいと言ってくれてるみたい。
それでその瞬間、その広い空間で僕はまた
希望の光を浴びて、強い影をキャンバスに落としてる。
音が何かを洗い流すような時間。
あの日の雨みたいだ。

SNSでそれをうまく表現できるやつだったら
いいのになあ、と思いながら今、ここにだらだら書いてる。
２日間の東京公演を終えた夜、
僕は少女のまま、みたいなおしゃれで可愛い座長がくれた
愛情たっぷりのバスソルトでバスタブに埋まった。
親指にうっすら残った傷が幼かった日を
教えてくれるみたいな夜だ。
なんかくすぐったいんだけどね。
おやすみ。

YORKE. / July, 2021 ♪梶浦由記 / 希望の光