【リフの惑星 インタビュー】
歌への意識が高まった
EP第三弾をリリース
音楽を始めた頃から好きな
胸を引っ掻かれる感じが出せた
音像との対比かもしれないですけど、今作は緒方さんのヴォーカルが儚いというか、“こんな繊細な印象だっけ?”と思ったんです。
良かった、嬉しいです。ヴォーカルを活かそうとは自分でも思ってて、ミックスの時も曲作りの時にもその意識はあったんです。今まではベースとギターとヴォーカルとドラムは自分の中で並列だったんですけど、何かそうじゃないというか。ドラムはそう思ってていいんですけど、自分の中ではヴォーカルが一番だと思っていないとダメだなと。歌を歌としてちゃんと出そうっていうのを、準備の段階から考えてました。
ヴォーカルに対して自覚的になってきたということですか?
そうですね。やっぱり思うようにライヴができなかったからっていうのと、他のバンドのライヴも観れてもないんですよ。最後に観に行ったのが2月の女王蜂の武道館なので。そういう中で家で音楽聴く時間が圧倒的に増えたから、歌にフォーカスしていったのかもしれない。
他のアーティストの曲を聴いてても歌に耳がいく?
はい。それもサブスクを使ってるからですけど、Spotifyのプレイリストの『New Music Wednesday』をめっちゃ聴くようになって、Official髭男dismや星野源を聴くと、やっぱり歌の力ってあるなぁと改めて思うんです。それに最近、歌番組が増えてきたことも重なって、どんどん“歌”を聴く機会が増えて、大事だと思うようになりました。ライヴだとリズムで乗れるか乗れないかが大事なんですけど、家で聴いているとリズムよりメロディーに耳がいきがちなので、そういうのが自分の作る曲にも表れてきたのかなと。
リスナーにとってのジャンルの縛りがなくなってきてるのは感じますが、緒方さんも素直に反映してるのが面白いですね。
自分らでレーベルをやっているから、レコーディングもリリースの日も自分たちで決められて、曲を作って録って出すことが早いスパンでできるので、自分がその時に思ったことをダイレクトに出やすいんですよね。もちろん大変なこともあるんですけど。
弾き語りをやってる影響も?
あるかもしれないです。特にこの一年は思うような活動ができない間にちゃんと歌えるようにしようと思ってました。カラオケでうまい歌というより、自分の歌を一番うまく歌える人になりたいと思っていたので、それが徐々にパフォーマンスにも出てきたのかもしれないです。
バンドアンサンブルは相変わらず、バリバリにオルタナになってますけど(笑)。
あははは。今回はドラムの松丸怜吾が曲作りにガッツリ入ってきてくれて、「spangle」ではほぼプロデューサーみたいな感じだったんです。具体的にリファレンスで出してきたバンドがSPARTA LOCALSとかで。でも、メンバーが主張するようになったことで、演奏面でメンバーのやりたいことも出たのかなと。だから、今作は歌とドラムのEPかなという感じはしています。個人的にはギターを重ねたMy Bloody ValentineとかOasisみたいな感じが好きなんですけど、自分は歌をやろうとも思ってたし、今作はこの4曲でいくって決まった時に“これはドラムだな”と。今まではギターも録ったあとに重ねたり、オルガンが後ろで鳴ってたりしたんですけど、今回はそういうのはいらなかったです。そのあたりがオルタナ感につながってるのかもしれないですね。
最近のドラムサウンドの潮流はわりとデッドだし。
そうですね。フェスで4つ打ちが流行った時はパッツンパッツンな…まぁ、あれはあれで嫌いじゃなかったですけど、ドラマーにとっては窮屈だったと思います。今は日本で流行ってるリズムってパッと言えるほど決まったパターンがなくて、ドラマーの存在感が強くなってますよね。King Gnuしかり、石若 駿さんもすごい好きなんですけど。
バックボーンがジャズの人が多いですよね。
うちのドラムもそういった音楽が好きなんです。俺はOasisから入ってるのもあるんですけど、ドラムに対する知識があんまりないので、その中でドラムが活きてきてくれたことは大きいですね。
『sampler EP III』はヴォーカルが聴こえやすくなったことで、歌詞もよく耳に入るようになっていて。今は大変な状況ではあるけど、それに関係なく突破していくようなニュアンスの内容が多いですね。
今、自分の感情としてはそんなに暗くないんですよね。まぁ、ヘコむことはあるし、世の中のムードに反して自分がどうしようっていうわけではないんですけど。昨年からメンバーもいろいろあった中で、今はなんとか生活できてるし、バンドが楽しいと思えてる最近の心情が自然と歌詞に出てるから、意図して暗くする必要はなかったんだと思います。能天気に明るくやろうとしたわけじゃないですけど、そんなにマイナスではない精神状態が出ている作品ですね。でも、今、まじまじと歌詞を見たら、そんなに明るくもないのかな(笑)。
歌われてることは儚さもあるし、個性が出てきたんじゃないかと。
その儚い感じは音楽を聴き始めた頃からずっと好きなんです。ワードとしてというより、曲を聴いた時の印象とか、胸を引っ掻かれるような感じが出せるようになってきたのかなと思います。特に「spangle」や「tonight」はそうですね。
改めてリフの惑星って普遍的なバンドだなと思いました。
そこは4人で共通してるところかもしれないです。クラシックなものにしがみついてるわけでもないけど、4人ともバンドが好きなんじゃないかな?
今の時代にバンドをやることを逆張りでやってる感じでもないですしね。
そうですね。20年前でも同じようにやってると思います。海外も行ってみたいし、この一年で聴いてくれる人も増えたから、また年内に何か出したいです。そうなってくると、未来に対してポジティブなことは多いですね。
取材:石角友香
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EP『sampler EP III』2021年7月7日発売
デススターレコード
- OGTR-0016
- ¥1,650(税込)
- ※CD+Tシャツセットは¥3,850(税込)
リフノワクセイ:元the ogtzの緒方とThe SALOVERSの小林を中心に2016年秋に結成された、UKロックの影響を色濃く感じさせる4人組ダンスロックバンド。17年2月にリリースしたEP『sampler EP』をTOWER RECORDS新宿店・オンライン限定で発売し好セールスを記録。20年11月に1stアルバム『odds and ends』、21年7月にEPシリーズ『sampler EP III』を発表。リフの惑星 オフィシャルTwitter
『samplerEP Ⅲ』トレーラー