未発表曲やジュディマリ&カヨコのカ
バー曲も披露 初のソロライブ『MAR
iA Live 2021「うたものがたり」』ラ
イブレポ

2021.6.5(Sat)MARiA Live 2021「うたものがたり」@チームスマイル豊洲PIT
5月26日(水)、GARNiDELiA(以下「ガルニデ」)のMARiAが、初のソロアルバムとなる「うたものがり」をリリースした。楽曲制作には草野華余子、TAKUYA(JUDY AND MARY)、山崎まさよしなど豪華作家陣を迎え、ソロシンガー・MARiAとしての“魅せる”音楽表現の幅の広がりに注目が集まっている。今回は6月5日(土)東京・チームスマイル豊洲PITにて開催された『MARiA Live 2021「うたものがたり」』を現地にて取材。新しい試みで溢れた初のソロライブの模様をレポートしていく。
■モノローグから「歌劇」が開幕!早くも会場は一体に
ライブの冒頭はMARiAのモノローグからスタート。舞台の両端からはそれぞれバレリーナの衣装に身を包んだバトントワラー・黒木和花子、平野恵の二人が現れ、バトンを回しながら舞台中央に寄る。やがて少しずつ開いていく緞帳(どんちょう)の向こうから、スポットライトに照らされたMARiAが登場した。
舞台の真ん中に座った姿勢で、1曲目から悲しげな「憐哀感情」を歌う。金のドレスは、フリルの重なった丈の長いスカート。ゴージャスさもありながら、どことなく儚さを感じさせる。ライブのコンセプトについて「演じる私がそこに居る」とかつてのインタビューでも語っていた通り、「歌劇」のようなドラマチックな演出で、一気に観客の注目を舞台へ集めた。続く2曲目にも温かさと冷たさの両方を併せ持つスローテンポな楽曲「マチルダ」を歌い、しっとりとしたステージを作り上げていく。
鐘の鳴る音が響き、3曲目には「ガラスの鐘」を披露。舞台には白いドレスのダンサー二人と、黒いハットとワイシャツで男装したダンサー二人が登場。MAKO、Kaoru、Ayaka Horie、Annaの4人である。MARiAのスカートの丈も短くなり、5人揃ってダンスをキメる。曲の中盤では「みんな立って!」のかけ声で、会場はオールスタンディングに。情熱的な楽曲に、いくつもの赤いペンライトが客席で揺れていた。
4曲目では未発表曲「手探る夢、繋ぐ糸」を初披露。ジャジーで軽快な曲を、白いドレスで揃えた四人のダンサーと共に踊り、歌う。誰もが初めて聴く曲なのにも関わらず、客席からは曲に合わせて手拍子が鳴り響き、早くも会場は一体となった。
■ゲストコーナーに草野華余子・TAKUYAが登場 伝説を目の当たりにするような初共演
MCを挟んで、続いてはゲストコーナーがスタート。舞台の中央に設置されたバーカウンター風のセットにMARiAが立って呼び鈴を鳴らすと、バーの客として一人目のゲスト・草野華余子が舞台に訪れた。
二人の馴れ初めの話から、「うたものがたり」に提供した楽曲についての話などトークも盛り上がった後、草野もフォークギターを持って演奏に参加。5曲目に「おわりものがたり」、6曲目に「おろかものがたり」をMARiAとのダブルボーカルで披露した。ブレスも無い激しい曲を、全身全霊で2曲も歌い上げる二人。「楽しすぎて、MARiAと出会ってから今までの走馬灯が見えた……」と、草野は独特な感想を述べた。
草野華余子
ここで一旦、草野と共にMARiAも舞台を離れ、バンドオンリーの演奏がスタート。ドラムス・海老原諒、ベース・ハピネス徳永、1stキーボード・清水信之、2ndキーボード・本間照光、ギター・和田建一郎と、それぞれソロの場面も魅せる中で、最後に二人目のゲストとしてTAKUYA(JUDY AND MARY)が舞台セットの高台へと躍り出た。
エレキギターをかき鳴らし、どことなく聞き覚えのあるイントロを奏でたと思えば、その期待通りジュディマリの名曲「そばかす」を披露。MARiAも「もっと盛り上がっていこうよー!」と叫び、黒いドレス姿で高台に現れ、TAKUYAと並んで元気いっぱいに歌い上げる。
懐かしさも感じさせながら、歌声はMARiA独自の個性が輝き、まったく新しい楽曲にも聴こえる、何とも贅沢なカバー演奏だ。すごいものを聴いてしまった……と、余韻に浸ってる間もなく、続けて「over drive」までもカバー。サビではもちろん、TAKUYAもマイクに向かってコーラスする。
TAKUYA
MCを挟んで、最後にはMARiAへの提供曲「キスしてみようか」を披露。それもCDには入っていないTAKUYAのコーラス付きで演奏された。3曲続けて演奏を聴くと、この楽曲にあるTAKUYA節がよりくっきりと際立って面白い。
そもそも各提供楽曲は、アルバムの中で聴いても、どれもそれぞれの作家の節が効いた強烈な楽曲だと感じていた。それがライブで作家自身らの名曲と並べて歌われると、彼らのDNAがしっかりMARiAに注ぎ込まれたのだということを改めて実感できた。
後に伝説として語り継がれる瞬間をリアルタイムで目の当たりにしているように感じる、奇跡のゲストコーナーが幕を閉じた。
■ダンスも、歌オンリーも全力 皆の願い・祈りを受け、MARiAは歌う
TAKUYAと共にMARiAも去った舞台には、ダンサー四人が登場。会場に流れる曲に合わせて、それぞれ情熱的に、キレッキレの動きでダンスを披露する。最後にはバトントワラーの二人も登場し、息の合ったバトントワリングを披露した。
ステージは一度暗転。結婚に憧れるOLを描く短いボイスドラマが差し込まれ、それに続いて「あー、今日もまた」が演奏された。舞台に現れたダンサー四人は、それぞれフォーマルだったりカジュアルだったり、バラバラのオフィススタイルの衣装。やがて登場したMARiAは、アルバム通常盤のジャケットと同じシックなドレスをまとっていた。まるでミュージカルの一場面のように、明るく楽し気に、孤独な女子の悲哀を歌とダンスで表現する。
続く演目ではダンサーたちが一旦はけ、MARiA一人で「光」を歌う。失恋の痛みを孕んだ歌詞ながらも、それでも立ち直って未来へと進んでいくように、明るく伸びやかな歌声。あえてダンスではなく、体を揺らし手を伸ばすことで歌い方に表情を付け、まっすぐ声を会場に響かせていく。シンガー・MARiAとしての真骨頂を見た気がした。
再びダンサー四人がステージに登場。披露したのは、未発表曲2曲目となる「Heart Breaker」。クールでダンサブルな楽曲を、MARiAも合わせた五人そろった動きで踊り、歌う。見ているだけで、こちらも自然と体が揺れてくる。続けて「Brand new me」も、五人の楽し気なダンスと共に披露された。これには観客全員もそろって右へ左へと手を振り、再び会場が一つに結ばれた。
続くMCでは、しっとりとしたバンドのBGMが奏でられる中、MARiAからこの日一日の感謝が述べられる。その中には、「ちょっとずつかもしれないけど、確かに、私たち、ちゃんと前に進めてるよね」という印象的なセリフも。ライブ前のインタビューでは、「ぜんぜん一歩も進めてない」という意外な言葉も本人から飛び出していたが、今ここで明確に、「進めている」という確信を持って、MARiA自身も語ってくれたように思えた。
最後は“新しい季節も必ずやってくる”という願いに乗せて、「ハルガレ」が歌われた。曲に合わせて、観客の手拍子が会場中に響き渡る。そんな一人ひとりの表情を見ながら、100%の喜びに満ちた笑顔で、MARiAが舞い、歌う。彼女が力いっぱい掲げる拳に、観客全員も応えて拳を高く挙げる。
声は出せない、マスクは外せない。しかしこれが今日という日で行えるライブの100%だ。今はこれで充分。やがてやってくる季節への願いを込めて、それぞれが心の中で歌い、MARiAの声に祈りを託しているかのように思えた。
■アンコールにはリード曲「コンコース」を披露 17カ月ぶりとなる大きなステージに幕
これでライブは終了、ではない。アンコールでは、アルバムリード曲の「コンコース」が披露された。想いの詰まった初のソロライブで、最後に一番想いが詰まっているだろう曲を、優しく伸びやかに歌い上げるMARiA。「今日は、本当に、本当に、ありがとうございました!」歌い終わってそう叫んだ声は、少しだけ涙が込められているような気がした。ライブを通してさまざまな「演じる」姿を見せてきたMARiAだが、そこではっきりいつも通りの素の自分を出してくれたのだろう。
MARiAがこのように広い会場でライブを実施できたのは、実に17カ月ぶりだと言う。世間がコロナ禍に入って、もうそんなに経ってしまったのかと驚く。確かに思い出してみると、過去に大きなステージで開催されたライブは、2020年1月に昭和女子大学人見記念講堂で開催された『stellacage tour 2020「star trail」』が最後だった。
そして前回、この豊洲PITの舞台にMARiAたちが立ったのを見たのも、2019年10月の『HALLOWEEN MiRACLE WONDER PARTY』のことだ。あれからさまざまな局面を乗り越え、再び同じ場所へ戻ってきたMARiAの歌が聴けただけでも、まるで奇跡のようだと思えてしまう。
もちろん、まだまだかつての日常が戻ってきたわけではない。会場にファンの声援や歌声は響き渡らない。そしてやはり、会場へ行きたくても、配信という選択肢を取ったファンも多かったはずだ。今回もオンラインでも鑑賞できたとは言え、その選択には悔しい想いもあっただろう。
けれどMARiAが語ったように、「どんなに苦しいことも、悲しいことも、必ず終わりがやってきます」。その一歩一歩は着実に進めているということを、MARiA自身も語っていたように、ファンの一人ひとりにも実感してほしいと願う。MARiAが、ガルニデが起こした奇跡を、皆も起こせるはずと信じてほしいと思う。
今回のライブを観て、心を動かされたならば、僕たちはまだ大丈夫。そのはずだ。次の季節へ、足並み揃えてまた向かって行こう。
取材・文:平原学

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