ARGONAVISプロジェクト伊藤昌弘×小
笠原仁ボーカル対談「プロジェクトに
関わる全員で空に向かっている感じ―
―」

5月30日(日)に富士急ハイランド・コニファーフォレストにて開催される『ARGONAVIS LIVE 2021 JUNCTION A-G(以後JUNCTION A-G)』にて、初の野外ステージを体験する伊藤昌弘(Argonavis Vo 七星蓮役)と小笠原仁(GYROAXIA Vo 旭那由多役)に、お互いの第一印象から『JUNCTION A-G』への意気込みまで約1時間半、みっちりと話を訊いた。
■職業も考え方も違うのにアウトプットは同じボーカリスト二人
――まずは改めてお互いの第一印象からお聞きしたいのですが、最初の出会いから印象って変わっていますか?
伊藤:一番最初に会ったのはライブを観に来てくれて、あいさつをさせてもらったときだよね?
小笠原:うん、そう。でも俺はYouTubeとかでもうライブ映像を先に観てたから。
伊藤:前から?
小笠原:普通にBanG Dream!を知ってて、男性バージョンが始まったとなって、YouTubeにライブ映像が上がってて、この人がArgonavisのボーカルやってるんだって。たしかオーディションと同時期くらいかな。うーん、それで最初の印象は…最初に聞いた曲がたぶん「ゴールライン」だった気がするから、すごい人がメインボーカルに据えられてるなっていうのと、きっとオシャレさんなんだろうなって。最初は衣装もそうだったけど今と比べて細身だったじゃん? 今が太ってるとかじゃなくて、この1年でパンプアップしてしまった(笑)。
伊藤:あなたもですよ? 肩が(笑)。
小笠原:僕もね。で、すごくスラッとしていて、インテリな印象があって。
伊藤:本当!? インテリな印象あるの? ウソでしょ?
小笠原:頭良さそうだなと思ったし、代官山に通ってそうだなって(笑)。
伊藤:かぶれてるっていうこと?(笑)
小笠原:かぶれてるっていうか(笑)、なんかそういうエリアを歩いていそうなオシャレボーイで、音楽もずっと好きでやってきたハイブリットオシャレインテリ青年なんだろうなと思ってたら、違った。
伊藤:違うねえ。そんな人生になりたかったけど(笑)。仁君に最初に会ったとき、たぶんDIESELの青いトートバッグ持ってたよね?
小笠原:そうだ! なんでそれ覚えてんの(笑)。
伊藤:トートバッグ持って「小笠原仁です」って。背も高くて、あぁなんか爽やかな青年で、声が聞き取りやすいなって。俺もね、この人は頭いいんだろうなって思った。
小笠原:お互いにインテリだと思ったと。でも蓋を開けてみたらパワータイプだった(笑)。
伊藤:間違いない(笑)。右脳・左脳タイプでいうと右脳タイプだから。
小笠原:二人とも超右脳タイプだった(笑)。
撮影:池上夢貢
――その後、一緒にお仕事を、ライブの対バンもあったりするんですけど、最初の印象からどれぐらい変わりましたか?
伊藤:変わった部分しかないです(笑)。
小笠原:ほぼそうだよね(笑)。
伊藤:何もかもが変わったよね。でも、やっぱり面白い。第一印象ってたいがい違うよね? やっぱりペルソナじゃないけど、必ずその人のいちばん最初に周囲に与える印象ってなにかあるんだなと思ったし、しゃべったら変わることはやっぱりあるなっていうのもね。
小笠原:変わらない人のほうがやっぱり珍しいよね。
伊藤:確かに珍しい。
小笠原:GYROAXIAのドラムやってる(宮内)告典さんに関してはマジで変わらなくて、あれはあれですごいなと思うけど。いとまさ(伊藤昌弘)の変わったところは……繊細というよりは大胆なタイプだったのと、やっぱり体格(笑)。もう何回も言ってるけど、筋トレしすぎ。
伊藤:まだ足りません(笑)。まだベストパフォーマンスじゃありません。
小笠原:うるせえんだよなあ、マジで(笑)。
――(笑)伊藤さんはどうですか?
伊藤:僕もARGONAVISプロジェクトでいったらArgonavisのドラムの(橋本)祥平ちゃんはほぼ変わらずですね。それはすごいなって。同じドラムっていうところで。(小笠原)仁君はめちゃくちゃ熱いものを口から出したり、歌で表現したりするんだっていうのが思った以上だった。あとは同じボーカルなので、共感しやすいポイントで話せるっていうところですごく距離感が縮まったりとか。「あ、そうやって仁君は考えるんだ」って。自分との違いみたいなものを見せてくれるのが変わったっていうか。
小笠原:初めて二人で飲んだときは発見祭りだったよね。やっぱりシンガー・ソングライターと声優っていう、歩いてきた道がぜんぜん違うけど、今立っているポジションは一緒だから、お互いにじゃあ今見えているものが一緒なのかなっていう気持ちで意見交換会をお酒を飲みながらしたんです。もう何年前だ? ちょうど2年前くらいかな。
伊藤:もう2年か!
小笠原:あれは新鮮だったね。
伊藤:めちゃめちゃ新鮮だった。
小笠原:歌に対する見方一つとっても真逆だったしね。
伊藤:ぜんぜん違う。
小笠原:考え方とか。ただ、自分のなかの考えとか、ごちゃごちゃ煮詰まったものが外に出ていくときのアウトプットの仕方はやっぱり似てるんだよね。
伊藤:うん。似てる。
撮影:池上夢貢
――アウトプットの部分は共通点があると?
小笠原:そうなんですよ。二人ともゴジラ(笑)。
伊藤:ほんとそうかも。
小笠原:口からドォオオオーンって。
伊藤:あははは(笑)。
小笠原:吐き出す炎の生成過程は違ってもね。
伊藤:ほんとそうだよね。だから、今は似てるな、のほうが強いかもしれないです。「俺自分とはぜんぜん違うタイプの人間だろうな」と思ったのに、知れば知るほど近づいてくる。それこそ職業も違ったし、考え方も違うのに。
小笠原:そう、ついこの間、右脳-左脳テストをやって。
伊藤:腕を組むのと、手の親指っていうので。俺は右右脳で。
小笠原 最強のね。
伊藤:仁君は何? 左脳じゃね? とか言って調べたら、ふたりとも右右脳だった(笑)。
小笠原:びっくりしたね、あれは。マジかよ!って。
■Argonavisの「ゴールライン」というARGONAVISプロジェクトを背負う曲
――そんなアウトプットが似ているふたりが、このプロジェクトでArgonavisとGYROAXIAのフロントマンでいるっていうのが面白いです。プロジェクトの背骨になっているのかもしれないと。今度は枠を広げて、伊藤さんから見たGYROAXIA。小笠原さんから見たArgonavisというバンドの印象は?
伊藤:まずは「仲良し」ですね。
小笠原:仲いいね。
伊藤:とっても仲良しだし、いろんな畑から来た人たちが、そういうのを感じさせないと言うか。本当にバンドとして関係を構築しているなっていうのはすごく感じていて。なかでも、仁君とドラムのこうちゃん(宮内告典)。両輪じゃないけど、傍から見ていてすごく感じる。
小笠原:たしかにねえ。
――僕は前にGYROAXIAのインタビューをやらせていただいたときに、しいたけ栽培の話でめっちゃ盛り上がったのが忘れられないですね。
小笠原:懐かしいなあ~! 本当に怖かったなあれは。ある日大荷物が家に届いて、開けたら、開封後はすぐに栽培を初めてくださいっていうテープが張ってあってすべてを悟るっていう(笑)。マジで送ってきた。「アイツ、ウソだろ!?」みたいな。
――GYROAXIAって絶対王者じゃないですか、ARGONAVISの世界では。でもめちゃくちゃ和気あいあいとしているのが印象に残っていて。
伊藤:そのギャップがすごい。素敵ですよね。
――素敵でした。一気に好きになりました(笑)。
伊藤:オンオフじゃないけど、そのギャップの先にある音楽性とか攻撃性がある。僕は洋楽のギターのリフでけっこう曲が成立するみたいな曲が好きなので。そういうところで言えばすごくどストライクなというか。それは仁君の声もそうだし。スピッツの草野(マサムネ)さんも言っていたんですけど、「自分はだみ声になりたくて、だみ声を練習したけどもう無理だから諦めた」って。もれなく自分もそうで。だみ声が大好きなんですよ。ニルヴァーナのカート・コバーンから始まって、ミッシェル・ガン・エレファントとかもコピーしてましたね。あと、チャド・クルーガー(ニッケルバックのボーカル・ギター担当)とか。だから、こんなカッコいいバンドが同じプロジェクトにいるっていうのは、自分の立場からしたら「強力なライバルだ」って思うけど、シンプルに音楽ファンからしたら、メディアミックスコンテンツでもこんな音楽できるんだ、それ楽しみじゃんって。
――伊藤さんの口からチャド・クルーガーになりたい、っていう言葉が出たのは意外です。
伊藤:ずっと思ってましたね。
小笠原:言ってたね。
伊藤:洋楽だったら、エアロ・スミスとかも好きですし。ジャーニーも好きですし。自分がいちばん近づけるのはジャーニーだと思うので。
――いろんなアーティストにインタビューさせてもらってますけど、ニッケルバックが好きなアーティストは多いですね。
伊藤:多いですか?「Slow Motion」とか大好きなんですよ。♪ドゥダリドゥドゥル……最高すぎる。
小笠原:あははは。始まる始まる、伊藤昌弘劇場。
――男女ともに洋楽ロックが好きっていう人は、フー・ファイターズかニッケルバックが好きで、ああいうのがやりたいっていう人は多いですね。完全に脱線してますけど今(笑)。では小笠原さんから見たArgonavisというバンドはどうですか?
小笠原:でかいですね。やっぱりARGONAVISプロジェクトっていう看板を背負って引っさげて、初期からひとつひとつ歩みを進めて、今にいたる5人の関係性っていうものは、見るたびにすごい固いなって思います。たとえばGYROAXIAの「仲良さそうだな」っていう第一印象的なつながりというよりも、みんなでこう、艱難辛苦を乗り越えてきた職人たちが集まっているなって。僕は音楽の経験とかぜんぜんないところから初めて、GYROAXIAで初めてバンドを、みんなで音を作り上げていくっていうのを勉強している今も最中なんですけど、すごく勇気づけられる先輩バンドだなって思います。あとは最近、本当に輪をかけてええ曲ばっか増えて。もう本当にすこなんですよ。
――すこ(笑)。
伊藤:ふふっ。
小笠原:それでやっぱり僕はアニメコンテンツが大好きで、でも音楽が好きっていうところで、「ゴールライン」を聴いたときの衝撃ったらなかったですね。「うわ、すげえ! こういうのが来た!」って思った。
伊藤:それを言ったらGYROAXIAがそうじゃない? 今は。
小笠原:GYROAXIAは、より分かりやすさを伴ってると思う。「ゴールライン」は、ずっとそういうサウンドを求めていた人たちにとって本当に衝撃だったと思う。GYROAXIAは、ちょっと違って、ラウドロックバンドというものを声優がボーカルをやって世に出す曲としては今までなかった。
伊藤:絶対ないよ、歌い方もそうだし。それをバンドだけやるじゃなく、ほかのお仕事もしつつ歌も歌うっていうのはいろんなものが大変じゃん。喉の管理もそうだし、スケジュールの管理もそうだし。すごいよね。そして、スクリームとかどんどん歌唱法も身に着けていく。
小笠原:でも、俺最初「ゴールライン」ぜんぜん歌えなかったからね。
伊藤:本当?
小笠原:もう、全く歌えんかった。
伊藤:キーがってこと?
小笠原:キーもだし、やっぱり印象に残るラスサビの「見えないよ~」からの4連トンデモ伸ばし! やっぱそういうさ、分かりやすい「すげえ!」が好きだからさ、そういうのを真似して歌うわけよ、でも歌えないのよ。やっぱあの伊藤さんって人すげえって思って、カラオケに入ってからは行くたびに「ゴールライン」を歌ったりしてたし。「あれ、どうやって伸ばしてるんだろ?」とかずう~っと歌ってたら(GYROAXIAの)オーディションが来た。
伊藤:すごいね! 引き寄せたよそれは。
小笠原:「マジ!?」みたいな。だからオーディションが来て、うおおー、頑張るぞ! ってなって、受かった後がやっぱり大変だった。その「ゴールライン」が歌えなかったから。分かりやすいのよ、いろんな重圧も大きかったけど、GYROAXIAの旭那由多に受かった時点で、小笠原仁の中の伊藤昌弘っていうボーカリスト像がすっごいでっかくなってた。その圧倒的なボーカルが主人公バンドにいるっていうモチベーションだったから。
伊藤:立ち位置的にそうだよね、同じ場所だからこそ、そう見えがちだよね。
小笠原:本当に単純だけど、ただそれだけの理由ですごいプレッシャーだったし。その経験は今もめちゃくちゃ思い出深い。伊藤昌弘が歌っている「ゴールライン」というものは今でもデカいね。
――ある意味、旭那由多としてはその上にいなければいけないというキャラクターではありますもんね。
小笠原:そうですね。実力的にも印象値的にも上にいなきゃいけないから。じゃあそれをどうしたら行けるだろって。ミュージシャン的な技術だったり積み重ねでは絶対的に達していないものが大きい現時点で、僕ができることは何だろうと、いろいろこねくり回してレコーディングに挑んだのが「REVOLUTION」だったし「MANIFESTO」だったし、カバーの「現状ディストラクション」だったしっていう。あのときの音源を今聴き返すと、やっぱその、自分はまだまだ足りないっていうものをパッションで補おうとしていたのが、自分で聴くと分かる。
伊藤:そういうのはさ、時系列的に自分のなかで歴史があるよね。もう今、俺「ゴールライン」は恥ずかしくて聴けないもん。
小笠原:分かるよ、俺も「MANIFESTO」聴けないもん。ちょっともう1回なんか、Re Recみたいな……。
伊藤:実費でやらせてくれって言いたい(笑)。
撮影:池上夢貢
■自分とキャラクターが溶け合うほど自然になった
――僕はこのBanG Dream!やARGONAVISプロジェクトで面白いと思った、スゴイと思ったのは今まで声優さんのユニットってけっこうあったけれども、バンドってやっぱりなくて。劇中でバンドの音っていうのが流れたときって、やっぱり借り物感があったんですよね。でもBanG Dream!やARGONAVISって本当に弾くじゃないですか。スタジオに入って練習して、ステージでも披露してって。音作りが身体に染み込んできているというか。
伊藤:それは確かに。本当に反復練習でしかないなって。身体に染み込ませて、それが何も考えずに出るようにって。それは何にでも言えることだなと思っていて。1人でやる場合も5人でやる場合もそうで。最近やっとバンドとして自由になり始めてます。今までは、自分の話になっちゃうけど、キャラクターを背負ってライブをしなきゃと思っていて。今でも起きてから寝るまでArgonavisだったり七星蓮が記憶というか。意識から消えることはないし。それは良いときも悪いときもあるんですけど、そこにどんどん寄せなきゃとか、そういうことを考えつつやっていたんですけど、でもやっぱり回数だなとシンプルにと思って。そういうもので、自分のなかで納得した形が出せるようになってきたなという自覚があったんですね。みんなと意思疎通できはじめて、みんなもいろんなイメージを持っていて。やっと形に出せるようになってきましたね。演奏シーンだけじゃなくて、つなぎの雰囲気、演出だったりそこまで詰められるようになったのはすごく自信にもつながるし、みんなの信頼にもつながるし。
――それは先日の横浜パシフィコでの3rd LIVE「CROSSING」で感じました。バンドの不思議なグルーヴ感というか。弾いて歌っていなくても、そこにいるだけでグルーヴ感が出るバンドってあるじゃないですか。
伊藤:ありますね。
――ArgonavisもGYROAXIAもそれが生まれてきている感じがしたんですよね。
伊藤:それこそ、アコースティックツアーでROOKiEZ is PUNK'DのSHiNNOSUKEさんが来てくださったときに、ライブが終わってツイートで、なんだろう。カフェとか居酒屋でお酒を飲むより音楽をしたほうが一瞬でその人のことを知れる、仲良くなれるってツイートをされていて。まさしく自分もそうだな、なんて思ったんですけど。そこのアンテナみたいなのってあるじゃん、一緒に音楽をやってると。
小笠原:あるね。
伊藤:それがみんなに届いた気がするし、「CROSSING」の自分の課題としては、音楽面はひとつまず置いておいて、完璧にキャラよりにしようと思っていて。今と逆なんですけど。
小笠原:うんうん、やってたね(笑)。
伊藤:もう、なんか自分の音楽のこだわりたいポイントとかそういうのは置いておいて、とにかく1から100までキャラってやったら、得たものもすごく多いし、音楽というより見せ方ですごく勉強になった部分もあって。もちろん反省点もあるんですけど。今度のコニファーフォレストでは、自分としてもバンドとしてもまた真逆な。バンド、音楽のほうに振っているような気がしています。
――たしかに七星蓮だったなと思うし、でも、それでも借り物じゃないというか、ちゃんとArgonavisというバンドとしてそこにいたのは、僕は面白かったですね。面白かったという言い方は失礼かもしれないですけど。
伊藤:嬉しいです。
――観ていて、不思議なものではあるじゃないですか。伊藤という人がいて、七星という人がいて。同じだけど、キャラと演者でもあるし。でも近似値なところもあるし。声優さんってキャラで歌うときはそういう部分があるのかもしれないですけど。
小笠原:まあそうですね。でも、このプロジェクトほどキャラと演者が根深くつながっているというか、助け合える関係にキャラと演者があるのは珍しいかもしれないですね。あの「CROSSING」のDAY1のとき、ホテルに戻って反省会をしようとなって、GYROAXIA5人で部屋に集まってたら、そこにArgonavisの前ちゃん(的場航海役、前田誠二)が「あるよiPad」って、クソデカいiPadを持ってきてくれてみんなで反省会をしたんですけど。やっぱりいちばんみんな湧いたのは伊藤昌弘の笑顔だったんですよね。その日、伊藤昌弘がキャラとして振り切って挑むぞと言っていたのはみんな知っていたので、やっぱり本当にキャラとして立っているなとなって、みんなすごく感動して。とくにうちのGYROAXIAの橋本真一君(里塚賢汰役)は、もともと舞台俳優で今もやっている。そんな真一君が「すごいよこれは」と。伊藤昌弘がライブにどういうモチベーションで臨むか、という徹底している姿はみんな感銘を受けました。ただ、真野拓実(美園礼音役)はずっと後ろのベッドで『ヴァイスシュヴァルツ』の新パックを剥いてました(笑)。お前何やってんの!? みたいな。
伊藤:あはは(笑)。
小笠原:「お前さあ」「いや、ちゃんと観てる、ちゃんと観てる。カードも見てるから」って(笑)。1万円分くらい箱買いしてきて、後ろでずっとビリビリビリビリ(笑)。
――それも仲良しなところですよね。
小笠原:いやあ、彼はロックスターですよ(笑)。
――(笑)ということでいよいよ本題です。『ARGONAVIS LIVE 2021 JUNCTION A-G』、野外でのライブは初ですか?
二人:初です。
――そんな野外での大型ライブですが、やはり意気込みからお聞きしたいです。
小笠原 意気込みかあ、そうですね。やっぱりその、まだビジョンはないんですよ自分のなかで、どういう空気感になるかなとか。もちろん野外ライブを見たことはあっても立つのは人生で初めてだし。GYROAXIAとしてのライブも実はまだそんなに多くないし。だからといって弱気なわけではないんですけど、また新たな一歩としてやれること。今までのライブじゃなくてGYROAXIAとしてやれることって何かないかとなっているところです。さっきイトマサも言っていましたけど、今までショーとして見せる意識を強く持っていたんですよ、僕はとくに。これまでにやった4回のライブステージだったりとか、アニメのアフレコ、ゲームの収録、その他もろもろのいろんな旭那由多を演じる機会がこの2年間の間にあったなかで、そろそろその意識を強くしすぎなくても、自分が旭那由多としてお客さんに見てもらえる域に達しだしているのでは? と思いはじめて。それは僕に限らず、ほかのメンバーもみんなやっぱりそう感じだしていて。であれば、一旦そのキャラを意識しないっていうことではなく、1個のバンドとしてライブを楽しむモチベーションでドカンと出たら、そのときお客さんに僕らってどう見えるんだろう。GYROAXIAのライブパフォーマンスって、GYROAXIAの新たなエッセンスになるのかどうなのか。それって一回やってみたいね?っていう次元に今います。
――受け入れてもらえるか、という。
小笠原:これまでは自分とキャラクター二人でステージに立って、ショーとしてやっているという感じだったんですけど、ずっと手を取り合っていたキャラクターが自分のなかにある程度溶け出しているっていう。自分が意図せずとも、キャラっぽい瞬間が生まれることが増えてきた。バンド練習のさなかでもそうだし。なんなら日常でもちょっとねえ、なんか。キャラとして舞台に立っているときにやっている癖を日常でもやっちゃうみたいな。そういう自然と自分の中に生まれている、旭那由多としてのエッセンスって、たぶんライブにこう、ドンって何も考えずに立ったときって、にじみ出てくれるんじゃないかなって思っていて。それを試したい。
伊藤:前は「キャラで! 歌を! バンドを! 届けなきゃいけない!」って頭でっかちだったんですけど。今は「バンドじゃん」って。バンドとキャラってこうやるとうまく混ざるよね、みたいな。ブレンド方法が今はたぶんうまくなってきていて。だから、前みたいに頭でっかちに「俺は絶対、七星蓮だ!」じゃなくても、すごいできるようにはなってきているのかなっていう感覚が今はあって。野外で、たぶん僕たちが思っているより何倍もデカいだろうし、何倍もパワーが必要だと思うんですけど、それを届けられるのはやっぱり楽しみですね。
撮影:池上夢貢
■ARGONAVISプロジェクトにかける僕らの本気をぜひ観てほしい
――そして楽曲の話もお聞きしたいのですが、Argonavisは「JUNCTION/Y」がもうまもなくリリースですね。そして僕は先行して「可能性/Stand by me!!」(7月14日発売)も拝聴させていただいたのですが、お互い聴かれました?
小笠原:聴きました。ついさっき。
伊藤:つい先程聴かせていただきました。
――では聞きたてホヤホヤの感想もJUNCTIONしていこうかなと思うんですけど(笑)。
小笠原:いや「可能性」マジでイイ!
伊藤:あはは(笑)。
小笠原:もう、メロディも素晴らしいし、作中の、ARGONAVIS、アニメもそうですけど、今『アルゴナビス from BanG Dream! AAside』っていうアプリがあって。そのなかでもどんどん話が進んでいって、Argonavisが七星蓮を中心にどんどん成長している最中なんですけど、その成長してるArgonavisがわかる感じ。「可能性」の歌詞の雰囲気とかメロディの雰囲気のエモーショナルな感じに合わせて、イトマサの歌い方もちょっとだけアダルトというか、大人っぽい感じに寄ってるのもまた良いんですよね。
――確かに大人っぽい雰囲気がありますよね。
小笠原:僕、Argonavisの曲のなかで好きなのが「流星雨」と「Starry Line」と「リスタート」だったんですよ、今まで。エモくてピアノサウンドが美しくて、前向きだけど切なくてみたいなサウンドが好きなんですよ。そこに「可能性」入りましたねえ~。で、「流星雨」「Starry Line」まではまだArgonavisとして精神性がまだちょっと子供っぽいというか子供っぽさを残したまま、つらいこともいっぱいあるけど頑張ろうよっていう。前を向いて行くんだよっていうメッセージを感じていたんだけど、「リスタート」でちょっと大人っぽい憂いを帯びたじゃない。もともとそういうメッセージが込められている。上京してきてけっこう思い出しちゃうこともあるけど、無理して笑ったりして何してるんだろ、みたいな。
伊藤:ちょっと成長じゃないけど年代が変わった気がするよね。
小笠原:その成長を経て、「可能性」でさらに熟してんの! イイ!
伊藤:今、仁君が言ってくれたのがまさしく自分のやろうとしていたことで。無理してやるというよりはキャラクターと自分の音楽的なこだわりというか、やりたいことをどっちも削ることじゃなく、どっちも貪欲に詰め込みたいというのがあって。それをトライさせてもらったというところなんですけど。
撮影:池上夢貢
――逆に、伊藤さんはGYROAXIAの新曲「WITHOUT ME/BREAK IT DOWN」を聴かれてどうでしたか?
伊藤:いやあ「BREAK IT DOWN」を聴いて、どんどん俺の好きな洋楽に寄ってきてるなって思いました。だってめちゃめちゃ英語で洋楽バンドじゃんもう。
小笠原:そうなんですよ。デモ聴いたときに俺最初何言ってるのか分からなかったもん(笑)。
伊藤:日本語のほうが少なくなってきてるよ?
小笠原:ほんとビックリ。めちゃめちゃ英語の勉強してるもん、今。
伊藤:いやあ、あれはだから、すごくそういう意味でもどんどん音楽的な要素が強くなってきた気がしていて。自分ではできないスクリームだったりとか。そういうのはやっぱり、必殺技のR1+□みたいな。ああやっぱ持ってるなみたいな。ライフ削りながらも一撃当てたる! 的な。
小笠原:たしかに「BREAK IT DOWN」は多すぎ説ある。いきなり増えた。なんか「ONE」のときも新曲3曲でスクリームは増えたけどさ。
伊藤:もう量が違うよねし(笑)。
――面白いなって思ったのは、お互いに好きな楽曲を相手が歌っているんですね。
二人:そうなんですよ!
伊藤:しかも、キャラクターの立ち位置とか、生い立ちも逆なんですよ(笑)。
小笠原:そう! ずっと一人でカラオケに行って同じ曲ばっか歌ってたんですよ。中学生で初めてカラオケを知ったときから、友達とは行かないで。友達と行くと自分が歌う時間がなくなるから、ずう~っと自分の歌いたい曲が歌えるようになるまでやってるっていう。
伊藤:僕は3歳からず~っと今まで音楽しかしていなくて、他のことは何も続かなくて。それで大学まで行ってっていう人生だったので。
小笠原:真逆。意味わかんない。
――でも、真逆だからいいのかもしれないですね。
小笠原:まあ、理解はあるし。
撮影:池上夢貢
――自分と同じような道筋をたどったキャラだと、さっき言われていたキャラクターと溶け合うじゃないですけど、逆にそこまでいかないのかなと。
伊藤:最近Argonavisでやっぱり楽しいとか、笑顔とか、何十年も前に忘れていたものを今必死に取り返しています。自分の楽しいの価値観ってそこじゃないんですよ。難しいことができるようになったら楽しいし、その難解なものを解いていくことが楽しいし、それがアンサンブルで合ったときで。それって表情に出なくて、合ったっていう感覚と、演者感の意思疎通だけ。そういうのが好きなんで、笑顔です! とか楽しいでしょ、聴いて! みたいなやつ、そういやとうの昔にそういう楽しみ方だったりはなくなったなと思って。ああ、笑顔って人は楽しんでくれるんだな、みたいな。それはすごく蓮君に教わったなあ。
小笠原:それがスタートなのも那由多っぽいんだよなあ。
――クラシックの演奏家みたいというか、求道者というか、できないことができるようになっていくことに喜びを感じるというか。
伊藤:それでしかなかったですね。やっぱり、自分は一生生徒で修行者だし、もう本当によく聞く話でさ、ステージではいちばんうまいけど、ステージを降りたらいちばん下手だと思え。で、圧倒的にステージを降りた時間のほうが長いから、そこでどうやって自分に自信をつけるかとか、説得力をつけるかとか、それをずっと考えてたんで。失ったものも大きかったけど、そこでの価値観だったり人生経験がすごく、自分の根幹だし、かけがえのないものだよね。
小笠原:それもやっぱり自分とは別ベクトル。俺はずっと楽しいだけで歌っていて。今、那由多としての苛烈さを足している最中。だから、イトマサがたどってきたなかで得たようなしんどさだったりとか、苛立ちみたいなものを頑張って追体験して想像して足す作業をしているから、また別なんだよねえ……。
――面白いですよね、本当に真逆。しかも音楽的嗜好も真逆っていう。運命ですね。
伊藤:ほんとそう思います。
小笠原:ほんとに、マジでそれは思いますね。
――曲の話に戻りますが、僕は「Y」をFLOWのTAKEさんが作った楽曲っていうのはすごく新鮮でしたし、「JUNCTION」を最初に聴いたとき、ドラムがエグいって思いました。
伊藤:そういう点でも橋本祥平はすごい。本当に怪物ですね。いま2バスとかも普通に叩いてるんですよ。普通に叩いててすげえなって思って。「いや、まだまだ」みたいな。もう修行僧ですよ。
――本当にパッと聴いた最初の印象が「あれ?これイントロがドラム?タム回しキツくない?」と。すごく爽やかなロックナンバーなんですけど。
伊藤:そうですね。
――各楽器隊がテクニカルだなって。
伊藤:Argonavisの曲はみんなめちゃくちゃムズいですね。
小笠原:「JUNCTION」のサビ前、俺こんがらがったもん。
伊藤:あはは(笑)。
小笠原:もうボーカルしか追えないみたいな。
伊藤:みんなよくあれでキャラを背負ってライブしてるなってメンバーながらに思っていますし、まだまだ満足していないのもすごく刺激になりますし。だからこそボーカルとして自分は何ができる? って考えさせられますよね。
――その、すごいなって思うのは、自分たちで練習はしているけど演奏する曲は「この曲です」ってくるわけじゃないですか。そこは普通のバンドとは違うかもしれないけど、それの難易度がどっちも毎回高いなって。
伊藤:面白いのは「JUNCTION」とかの手数が多い曲ってテクニカルな面が目立ちやすいんですけど、意外と「Y」が難しいんです。
小笠原:へえー。
伊藤:あのミドルナンバーで、ずっとビートを刻むとかっていうほうがしんどいって言ってて。でも、そこのレベルにこの2年3年で達している祥平ちゃんはすごいし、あとは最近変わったなと思ったのは、アコースティックライブの最終公演で森嶋(秀太)さんが夜にゲストで来てくれたんですけど、その時に日向さんと3人でアコースティックで、クリックとかシーケンスもなく、ただ3人の呼吸で合わせるっていうのをやったときに、ほんとうの意味での意思疎通ができたと感じました。もっとシンコペーションの気持ちよさとか、そういう音楽的な面での深い話を自分たち俺もビビらずに話をすることができたというか。だってカッコいいの弾いて欲しいし、楽しいって思ってるんだからそれは腹を割って話そうよせよっていう話で。もう年齢とか事務所とか先輩とか関係なく。そういうことを腹を割ってできたのがすごく強くて。
小笠原:俺「CROSSING」のときに、ステージ裏から「What-if Wonderland!!」を叩いてる橋本祥平君を見てマジ感動したもん。そして俺の十倍感動してたのは宮内告典。
伊藤:同じ楽器だからね……。
小笠原:本当に見たことない真面目な顔で、腕組んで仁王立ちで「すごいよ」って言ってて。それを見てなぜか俺が感動して涙ぐむっていう(笑)。
――宮内さんみたいにずっとバンドをやってらっしゃる方が後ろから見てそう思うっていうのは本当にスゴイ。
小笠原:後ろから見てたからかもしれないんですけど、軽快に「What-if Wonderland!!」を叩いている、あの後ろ姿を下から見上げたときに、すごい背中が頼もしくて。どれだけ普段ドラムに対してまっすぐ向き合っていたらこんなに急成長していけるんだろう、と。
伊藤:すごいよね。「毎回の練習が本番」って思ってたぶん来てるんだろうなってすごく感じるし。あとは、前ちゃんも、ああベーシストだなって思う瞬間があるは。プレイももちろんなんですけど、みんなのこととか演出面をすごく見てたりとか。そこの発想がすごく豊かで。それってバンドの支えだったり。そのポジションにいる人なんだなっていうのはすごく感じますね。
小笠原:前ちゃんもともとベーシストっぽい説あるよね。
伊藤:説ある。すごいある。
小笠原:なんかぽいんだよね、雰囲気がさ。
伊藤:ね。
――両バンドともリズム隊がどっしりしていて安心して観ていられますよね。
小笠原:そうですね。
伊藤:そのドラムがどんどん上手くなって、パワードラマーになっていく。今これAメロだから抑えてもいい?歌いやすい。が今ここなんですよ。こんなところまでいけんだなって。
――最後に、ARGONAVISプロジェクトへの展望や思い、もちろんファンの方にメッセージをいただければなと思うんですが…多分これを最初に読むのはファンの方なんですよ。ただ、SPICEはマルチメディアサイトメディアなので、演劇もクラシックも舞台も音楽も全部のジャンルを内包しています。だからこの記事からARGONAVISに触れる方もいると思うんですよね。僕らはWebメディアとして、皆さんの言葉をアーカイブとしてしっかり残していきたいと思っています。あの時何を言っていたか、にいつでもアクセスできるようになったらいいなと。今のお二人が、これからARGONAVISプロジェクトに触れる方、ファンの方へのメッセージをいただければなと。
小笠原:このARGONAVISプロジェクトに関わっている演者、スタッフの皆さま、制作スタッフの皆さま、本当にみんな同じだけこのプロジェクトを背負ってくれている。誰もが誇りを持って臨んでくださっているし、今までにないことをやってやろうという野心にも満ち溢れている。それはイコール愛だと思いますし。その熱にあてられたスタッフさんだったり、もちろん僕ら演者が、同じだけのそれを超えるだけの情熱、愛で返して。それがどんどんどんどん積み重なっていって、どんどん空に向かって伸びていっている実感がある最中です。絶対にこの先、舞台を経て、劇場版を経て、そして初の野外ライブを経て、100%想像もしなかった変化をもっとしていくはずなんですよ。それがいち演者として、いちバンドマンとしても楽しみだなって言えるまでにバンドとしても成長したし。それをお客さんもできれば同じだけの愛と情熱とで一緒に楽しみにしていただけたらなと思います。このインタビューを見てARGONAVISというコンテンツを知ったよという方は、「そんなに熱くやってんの、ここ? だったら観てやろうじゃないくらいの感じで入ってきてくださったら、絶対にそのままハマらせる自信がありますので。僕らの、アニメでも音楽でもなんでもいいので触れてくださったらなと思います。
伊藤:最後まで読んでいただきありがとうございます。今、仁君が言ってくれたように、本当にみんな人生をかけてこのプロジェクトに取り組ませていただいています。メディアミックスなのでいろんな展開があって、初めての人もいちばん近いところからぜひ入っていただきたいですし、個人の思いとしては、この七星蓮をやりきったら、歌も演技ももうやりきったな、と思えるくらいのつもりで挑んでいます。そんな僕らの本気をぜひ観ていただければなと思っております。
取材:加東岳史 構成:林信行 撮影:池上夢貢

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