[Alexandros]川上洋平、数々の映画賞
にノミネートされたバカンス満喫型タ
イムループ・ラブコメディ『パーム・
スプリングス』について語る【映画連
載:ポップコーン、バター多めで P
ART2】

大の映画好きとして知られる[Alexandros]のボーカル&ギター川上洋平の映画連載「ポップコーン、バター多めで PART2」。今回は、ゴールデングローブ賞をはじめ、数々の映画賞で大絶賛された全く新しいタイムループ・ラブコメディ『パーム・スプリングス』について語ります。
『パーム・スプリングス』

本当は先月この連載で取り上げるはずだったんですが、タイミングが合わなくて観られず……やっと観れた作品だったんですが、すごくおもしろかったですね! 眠るか命を落とすとまた同じ日に戻ってしまうっていうタイムループもので。なんとなく内容は知ってたので、途中までは割とふわっとした気持ちで観てました。でも全く予想してなかった展開が途中にあって、そこで「こういうことなんだ!」って思って、そこからはのめりこむようにして観ましたね。

『パーム・スプリングス』より

■タイムループから抜け出す方法を科学的に学んでいくところが新鮮
主人公のサラがアメリカにある砂漠のリゾート地、パーム・スプリングスで行われた妹の結婚式でナイルズっていう男性に出会って。そのふたりがタイムループにハマるっていうストーリーなんですけど、サラより先にタイムループにハマってたナイルズはもう既にそこから抜け出すことを諦めてるような状態で。でもサラは、やがてなんとかそのタイムループから逃れようとするっていう、その様がおもしろかった。『ハッピー・デス・デイ』っていう2019年に続編も公開されたタイムループものの映画があって。主人公の女子大生が自分の誕生日に殺人鬼に殺され続けるっていう話で、やがて主人公は自分が殺される前にその殺人鬼を殺そうってなるんだけど。その作品を思い出しながらも、『パーム・スプリングス』はタイムループから抜け出す方法を科学的に学んでいくっていうところが新鮮で良かったですね。
『パーム・スプリングス』より
■同じような日々を繰り返してるって感じた時点で嫌な気持ちになる
僕だったらいくら好きな相手と一緒だったとしても、タイムループからは絶対に抜け出したいです。ちょっとはその特殊な状況を楽しむかもしれないけど、すぐ無理になると思う。毎日予定が違うほうが良いんですよね。同じような日々を繰り返してるって感じた時点で嫌な気持ちになるんです。ミュージシャンにも、日本だと1年か2年のスパンでアルバムを出してプロモーションして、そこからリリースツアーがあって、夏と年末はフェスがあって、っていうスパンがある。それを長い目で見て「これをずっと繰り返してくのかな」って思った瞬間、絶望的な気持ちにもなったりするんですよね。そういうループ感というか、ルーティンが嫌でこの職業を選んだのに「何やってんだろう?」って。それほど「抜け出せない」って言うことに対して、窮屈を感じてしまう人間なんですよね。
でも、この映画の舞台のパーム・スプリングスはLAから車で2時間くらいで行ける実際にある土地で、広大な土地の雰囲気がそこまで窮屈な感じにさせないところも良かったです。あと、とにかく服がおしゃれだし、美術が『スイス・アーミー・マン』とかやってるジェイソン・キスヴァーディっていう人なんだけど、完璧でしたね。砂漠に囲まれたリゾート地なので、美術がしっかりしてないと『バクダッド・カフェ』みたいな渋さが出てしまってこの作品には違うと思うから。ナイルズがプールでピザの形をした浮き輪に寝そべってるビジュアルも良くて、こういうくつろぎ方をしたいなって思いましたね。僕もコロナ前はよくハワイでこういう感じでしたけど(笑)。
『パーム・スプリングス』より
■説明があまりないからこそのんびりくつろぎながら観れる
サラとマイルズが夜の砂漠でキャンプをしている時に恐竜を目撃するんですけど、結局あの恐竜が何だったのかはわからなくて。監督のインタビューを読むと、「あれは僕が『ジュラシック・パーク』が好きだから登場させたとも言えるし、あの場所に恐竜がいることがすごく正しかったと感じてるんだよね」っていう風に答えてて。わかるようなわからないようなはぐらかし方をしてて、結局謎っていう(笑)。でもああいう謎な存在を登場させることで、タイムループっていう非現実的な出来事に引っ張られ過ぎないようにしてるのかも。「恐竜が出てくるくらいなんだから、不思議なことって起こるよね」っていう雰囲気にさせるっていうか。サラとマイルズも恐竜を見たことに対してそこまでびっくりしてなかったし、特に追究もしてなかった。その説明があまりない感じも好きでしたね。例えばクリストファー・ノーランのちょっと小難しさを売りにしたような徹底的に考察させるような手法じゃなくて、「設定上こうなんですよ」っていうレベルにとどめているところに好感が持てたし、だからこそのんびりくつろぎながら観れる映画っていうかね。
『パーム・スプリングス』より
■コロナ禍において何か新しいことがあることの尊さを教えてくれる
制作費とスケジュール上の理由でパーム・スプリングスではない場所で撮影されたそうですけど、実際のパーム・スプリングスはコーチェラが開催されている場所でもあって。今フェスにもなかなか行きづらいし、リゾートもなかなか楽しめない世の中になってしまいましたよね。緊急事態宣言の影響とかで映画館で観れなかったとしても、例えば家でカウチでポップコーンやタコス片手に観る映画として素晴らしいと思いますね。以前より毎日家にいて同じようなことの繰り返しを強いられている人は多いと思うけど、その中でも何か新しいことがあることの尊さを教えてくれるような映画でもある。コロナ禍におけるすごく良い気分転換になると思います。あと、マンネリのカップルや、コロナ離婚の危険性をはらんでいるご夫婦とかにも是非観てもらいたいですね(笑)。
取材・文=小松香里

※本連載や取り上げている作品についての感想等を是非 spice_info@eplus.co.jp へお送りください。川上洋平さん共々お待ちしています! 

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