【ヒトリエ インタビュー】
“3人で初めて作った曲”
ということを大事にしたいと思った
3人体制になって初のアルバム『REAMP』から4カ月。続くニューシングル「3分29秒」の表題曲は、TVアニメ『86-エイティシックス-』のOPテーマとして書き下ろされた。“3分29秒”というタイトルに込めた想いも含め、制作の舞台裏を語ってもらった。
コロナ禍になってしまったことで
発表の順番が変わってしまった
ひょっとしたらとは思うのですが、“3分29秒”というタイトルの由来から教えていただけないでしょうか?
シノダ
あぁ、これはですね…単純に曲の長さなんですよ。曲が3分29秒で終わるからっていう(笑)。
やはりそうですよね(笑)。
シノダ
実を言うとこの曲は、今年2月にリリースした『REAMP』というアルバムをレコーディングする前には録り終えていて。
えっ、そうだったんですか!?
シノダ
この3人で初めて作って、レコーディングした曲なんです。3人で初めてパッケージングした音源の長さが3分29秒だったから、それをタイトルにしようと思って。サブスクリプションによっては3分30秒とか、31秒とかになるんですけど。
私のプレイヤーでは3分31秒でした(笑)。
シノダ
スタッフから“それでも大丈夫?”と訊かれたんですけど、“それでもいいから、これでいかせてください“って。
つまり、その3分29秒という時間が3人にとってとても大事だったわけですね。
シノダ
僕はそう考えています。“3人で初めて作った曲”ということを大事にしたいと思いました。
とはいえ、TVアニメ『86-エイティシックス-』のOPテーマじゃないですか。“そのタイトルはちょっと…考え直してほしい”とアニメサイドから言われたらどうしましたか?(笑)
シノダ
その時は…まぁ、考え直したかもしれないですけど。
ゆーまお
タイトルを“あれにしようこれにしよう”って会話は、『REAMP』の時にもあったので、考え直してくれと言われても、シノダはめげずに別のタイトルを考えたと思います(笑)。
シノダ
ただ、今すぐには出てこないよー。時間をくれればって話だから。でも、僕の中では“3分29秒”が一番しっくりきてたので。
そうですね。これしかあり得えない意味深いタイトルになったと思います。ところで、「3分29秒」はTVアニメ『86 -エイティシックス-』OPテーマとして書き下ろしたのですか?
アニメサイドからはどんなリクエストがありました?
シノダ
僕らが4人体制で最後に作ったアルバム『HOWLS』(2019年2月発表)に「LACK」という曲があるんですけど、そういう感じでというオーダーはありました。「LACK」もストレートかつ、ちょっとハードな部分がある曲なので、そういう曲を作ればいいのかなと、なんとなく気にしながら作ったら全然違うものが出来上がりましたね。
イガラシさんとゆーまおさんは、この曲を最初に聴いた時はどう感じたのでしょうか?
イガラシ
ヒトリエ以前にシノダが書いていた曲を聴いたことがあって、久しぶりにそれを彷彿させる“シノダ全開”みたいな曲を新曲として聴いたから、懐かしさもありつつ、すごく新鮮でした。
ゆーまお
テンポがハーフになって、ちょっとお洒落な感じにしたい…と(笑)。“あぁ、シノダだな”って。
ゆーまお
ぶってるっていうか、お洒落でいいじゃん(笑)。あの感じはシノダだなって思いました。
そういうふうに言われて、シノダさんはいかがですか?
シノダ
そういうことなんでしょうね(笑)。でも、ヒトリエの曲として世に出さなきゃいけないので、“ヒトリエ感みたいなものってどういうことなのかな?”というのは結構考えましたよ。
ゆーまお
あっ、ごめん! そこまで考えてくれたのにシノダっぽいとか言って(笑)。
シノダ
一蹴したよね(笑)。でも、そういうことでしょう。どれだけ俺が頭の中でこねくり回しても、結局出てくるものって。
ヒトリエらしさを考えて変えたり加えたりした部分があるのですか?
シノダ
速い曲を作るのがあまり得意じゃないんですよ。緩い曲のほうがバンバンできるんで、こういうハードな曲を作る時って“速い8ビートのロックって作る難しさがあるな”と思ってしまうんです。だから、そこを頑張ったというか、どうやったらカッコ良くなるのか悩んだところはありますね。憧れみたいなものがすごくあるから構えちゃうんですよ。8ビートの速い曲こそがロックの一番の正義だと思っていて、結構信仰している節があって…だからこそ、作るならカッコ良いものを作らなきゃいけないっていう。レジェンドと言われる曲たちに並ぶようなものを作らなきゃいけない。ビビってるんでしょうね。そこに立ち向かうみたいな姿勢になっちゃうんです。
その速い曲に立ち向かって苦手意識は克服できました?
シノダ
フックみたいなものをいっぱい用意したので、実はしっかり8ビートってところはあんまりないんですよ。そうやってうまいことかわしたって感じはあります(笑)。ギミックを散りばめることによって、ベタな8ビートをちょっと回避した節がありますね。
確かにTVアニメのオープニングで流れる最初の90秒にヒトリエらしいとも言える、あらゆるエッセンスを詰め込んだ印象があります。そのかわしていくやり方もひとつの方法だと思うのですが、もちろんいつか真正面から速い8ビートに立ち向かってみようという気持ちもあるんですよね?
シノダ
それが『REAMP』に収録されている「ハイゲイン」なんです。あれは真っ向勝負しましたね。
そうでした! 「3分29秒」のほうが『REAMP』よりも前でしたね。そんな「3分29秒」に対して、イガラシさんとゆーまおさんは、どんなふうにアプローチしたのでしょうか?
イガラシ
ベースはシノダからもらったデモに対して自由に弾き直しました。かなり変えたよね?
イガラシ
自由にして良さそうなところは自由に弾いて、キメはデモを生かして…みたいにやったんですけど、これまでと地続きのアレンジを加えたいと思ったから、wowakaとやってきた中でよく使ってきたアプローチを足したんです。
なるほど。シノダさんが作ったシノダさんらしい曲に地続きのアレンジを加えたと。
イガラシ
そうですね。誰が気づくか気づかないかって領域の話ではあるんですけど、これまで曲を作りながらやってた、“こういう展開でこう来た時はこうだよね”って方法論を思い浮かべながら、この曲にも入れ込んでみようという感覚はありました。
ゆーまお
僕はイガラシとは逆で、シノダが作ってきたデモをトレースしました。シノダは器用にドラムやベースのフレーズも作れる人なんですよ。最初は崩してもいいのかなと思ったんですけど、シノダが作ったデモのフレーズを叩いてみた時、そのままやってほしいんだろうなってなんとなく分かったんです。キメがすごく多いってこともあるんですけど、そのキメも含めフレーズが決め打ちとして曲に組み込まれていることが分かったので、これはそのままやろうと思いました。でも、シノダが作ったフレーズが身体に入ってくるまで時間がかかりましたね。