指揮者・栗田博文が語る『ファンタジ
ア』の魅力~開幕間近の映画公開80周
年記念『ディズニー・ファンタジア・
コンサート2021』
1940年の初公開から80年の時を経て開催される『ファンタジア・コンサート2021』。『ファンタジア』は今尚イマジネーションの源泉のような作品であり、観る者に想像的構想力を湧き上がらせ、90年代のディズニー・ルネッサンス期を経て制作された『ファンタジア2000』もまた、ウォルト・ディズニーの遺産がしっかりと息づいていることを現代的なアップデートによって証明して見せてくれた。
いよいよ来週開催する東京公演のマエストロ、栗田博文に「ファンタジア」に魅力を語ってもらった。
中でもやはり『魔法使いの弟子』。他のナンバーはアニメーターやクリエーターの手腕に唸らせられるようなものばかりでしたが、デュカスの作品はもともとストーリー性の高いもので、その音楽に逆らうことなくミッキーがあのように大活躍するのは面白かった!
今になって見返してみても、子供向けというよりは、クリエイターの独特な世界があり、まさしく『ファンタジア』ですね。
幼稚園から小学校に上がる頃にテレビが白黒からカラー映像に変わったんですよ。今まで白黒で観ていたものがカラーで観られるようになって、それでテレビが大好きになってしまって。映画館でも同じことが起こっていて、フィルムが総天然色になり、モノラルサウンドもステレオ効果で聴けるようになって、驚きました。
現代では更に映像も綺麗になり、サウンドも鮮明になった。しかも今回のコンサートは生のオーケストラによる演奏であり、非常にスリリングだと思います。
(1965年7月、日本武道館での公演。ビートルズよりも1年早く、ストコフスキーは武道館に初めて出演した外国人音楽家であった)。
レヴァインの指揮はとてもスマートかつストレート。一方でストコフスキーは割り切れないような、個性的な演奏です。対照的なふたりの音楽の要素を上手く取り入れて、お客様に味わってもらいたいという強い想いがあります。
ご存知の通り、オーケストラという形態は非常に多くの楽器と演奏家を必要とします。これだけ多くの楽器が一斉に奏でられる/コラボレーションするというのは唯一無二であり、同じオーケストラが同じ演奏を再現できないくらい複雑な表現だと思います。
ストコフスキーやレヴァインの演奏を聴きながら映画を観てきた人が違和感を覚えないようにしたいのですが、オーケストラが自由度を保って、息苦しさを感じないように演奏できるポイントを見つけたいです。映像と音楽がリンクするポイントごとの着地点は合わせないといけないので、オーケストラの個性を見極めつつどう演奏するのかというのはドン・キホーテのような気分ですね。やってみないと分からない(笑)。でもトライするのは面白いですよ。
願わくは、このコンサートで初めて『ファンタジア』を体験する人からこれまで何度となく観てきた人までが「今日来て良かった」と思ってもらえるコンサートにできればと思っています。
1988年、第23回東京国際音楽コンクール指揮部門において第1位優勝を果たし、翌年、国内主要オーケストラを指揮しデビュー。1989年に渡欧。同年、第1回アントニオ・ペドロッティ国際指揮者コンクール(イタリア)に入賞し国際的な評価を確立。1995年、第1回シベリウス国際指揮者コンクール(フィンランド)の最高位に輝く。同年、フィンランド放送交響楽団より招かれ、ヨーロッパデビューを果たし大好評を博す。国内外の活発な指揮活動とともに、国立音楽大学客員教授を務め、後進の指導にも力を注いでいる。クラシック音楽の古典から現代作品まで、幅広いレパートリーを持つほか、様々なジャンルとのコラボレーションも積極的に行っている。
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