藤原さくら、新曲「Kirakira」制作の
キッカケとなった生活の変化とはーー
「何事も捉え方次第で良い方向に持っ
ていける」

4月9日(金)に新曲「Kirakira」を配信リリースした、藤原さくら。「何気ない日常を楽しむ気持ち」をテーマに制作された同曲。しかし新型コロナウィルスの影響で、わたしたちが感じる「何気ない日常」は大きく変化した。ほとんどの人は生活のルーティンが変わったはず。目にするもの、触れるものにも違いが出てきたのではないか。藤原はこの状況について、「これまでの日常がいかに特別なものだったか、あらためて気づいた」と語った上で、「だけどどんな状況になってもそれに合わせて流動的に、しなやかに生きるのが大切」と自分なりの日々の過ごし方を見つけ出したという。今回は、そんな「現在の生活」から生まれてきたような「Kirakira」について話を訊いた。

藤原さくら 撮影=ハヤシマコ
――「Kirakira」は「何気ない日常を楽しむ気持ち」で作ったそうですね。
もともと2021年1月に予定していたライブが新型コロナウィルスの影響で4月に延期となり「せっかくならみんなが聴いたことがない新曲を発表したい」という話になったんです。しんどいな、と感じる状況は誰にでもあるはずだけど、捉え方次第で良い方向に持っていけるんじゃないかな。いろんな仕事に挑戦させていただいたり、私生活では引越をしたり、自分自身のことを見つめ直す機会がたくさんあるなかで、そういう考え方が生まれてきました。
――大変な状況だけど、立ち止まらずにいろんなことをやって状況を好転させるということですね。
良くないことをずっと引きずっても仕方がないじゃないですか。だったら「次に行こう」と。人生はこれからも続くわけだし、生活も続く。コロナ禍でも、全部をあきらめるわけにはいかないと思うので、この曲では「何事も捉え方次第だよ」と伝えたかったですね。
――大きなキッカケとしては、やはりコロナ禍の影響があったのですね。
去年の2月、3月に舞台をやっていて、その日までは開催できていたのに、突然「明日から公演休止」と言われたときはショックでした。ライブの延期などについてもスタッフのみんなと話し合ったりして。一方で、これからは、流動的なやり方というか。こういう状況だからこうしようとか、形を決めずにやっていくことにしました。「強く」ではなく、「しなやか」にできるようになった方がこれから良いんだろうなと。「Kirakira」はそういうことを歌った曲な気がします。
――今までは「芯を強く持って、信じた方向に向かっていこう」という気持ちが大切だとされてきましたが……。
会社でも何でも良いのですが、「一度そこに入ったら、ずっとそこでやっていく」という考え方はまだまだ根強かったはず。でも今の若者はすぐに辞めるじゃないですか(笑)。それって皮肉でもなんでもなく、「ここは違う」と感じれば別のルートを模索して良いということ。もちろん、違和感を持ちながらそこで頑張るのも良いこと。自分で柔軟にジャッジして、ちゃんと責任を全うすれば良いんじゃないかな。
――先ほど、藤原さんご自身「引越も自分を見つめ直す機会になった」とおっしゃっていましたね。引越は、流動的な生き方の話と繋がる気がします。
引越は私のなかで大事な出来事でした。以前の家に4年くらい住んでいたんです。で、引越の際にそれまで使っていたものを全部捨てて、新しいものに取り替えました。新居は陽のあたる家ですごく気持ちが良い。陽を燦々と浴びる生活が自分は向いている。コロナ禍で仕事が落ち着いていた時間を、ずっと家探しに使っていて、とても有意義でしたね。
藤原さくら 撮影=ハヤシマコ
――藤原さんの楽曲は、「Kirakira」をはじめとして生活や日常の歌が多いですよね。
生活がすべてなんですよね。曲を書く自分、ライブで歌っている自分。それらはすべて生活があってこそ生まれてくるもの。私自身、生活のなかでないがしろにしていた部分も今までいっぱいあった。それこそ去年は昼夜逆転していて、ずっとゲームばかりして過ごしていた時期もありました。それはそれで毎日が夏休みのような気分で楽しかったけど、でもやっぱりちゃんと朝起きて、運動して、夜寝るのが一番。最近は朝、友だちと近所の公園をランニングすることもありますが、充実度が違います。「今日も1日、頑張ろう」という気持ちになります。
――「Kirakira」はまさに「朝」から曲がスタートします。藤原さんの曲には、朝、夜がよく出てきますね。
そうそう、かなりあります。モーニング、ナイト、朝、夜というワードは相当出てきていて。自分のなかでとても重視しているものなんです。夜は不思議な力を感じるし、時にはその闇のなかにグッと引きずりこまれそうになる。余計なことを考えすぎるときは引きずられる前に寝る。朝になったら考えごとが晴れるので。あと夜に書いたメールやLINEで、「あんな文章、送らなければ良かった」と後悔することはないですか?
――それは誰もが経験があると思います。
ですよね。歌詞を作るときも、時間帯によって出てくるものが違うんです。
――「Kirakira」は夜を過ぎて朝を迎え、<チクタク時計が 明日も進んで チクタクわたしは 前よりやさしくなる>と前に進んでいく様子が描かれています。
優しい人と出会うと嬉しくなるし、「私もこういうふうになりたい」と思うんです。人に対しても、自分に対しても優しくなるというのは人生のテーマ。当たり前ですが、意地悪な人とは一緒にはいたくないじゃないですか。「こういう考え方ができる人と一緒にいたい」と思われたい。この歌詞の部分はそういう気持ちをあらわしました。
――前段でも<一番大事にされてたいわ 誰でもなく自分に>と願望を綴っています。ボーカルにエフェクトもかかっているので、非常に印象深く聴こえます。
「他人にこうして欲しい、とばかり願って生きていたらしんどいじゃん」という想いを詰め込んでます。「どうしてこの人は、こうしてくれないんだろう」みたいに、他人に幸せを委ねる生き方ではなく、自分で切り開く生き方が幸せなんじゃないかな。そういう精神状態を作るには、やっぱり心身が健康じゃなきゃいけない。
藤原さくら 撮影=ハヤシマコ
――昨年は昼夜逆転するなど不摂生もあったけど生活がガラッと変わり、心身が健康になって、そして「Kirakira」のような楽曲を生み出すことができたわけですね。生活が変化した理由はなんだったのですか?
これはみなさんに言えることかもしれませんが、コロナがあっていろんな関わり合いがプツンと途切れる瞬間があった気がするんです。ひとりで過ごす時間が増えたからこそ、自分と向き合う機会ができました。
――確かにそうですね。
たとえば普段から他人のことばかり気にしちゃいがち。SNSでも、誰かが誰かの悪口を言っていて、それが自然と目に入ったり、悲しい出来事を見てしまったり。他者に関する情報が多すぎて溺れてしまう。そんななかで、私自身も静かに自分を見つめることができていなかった。
――誰もがSNSを見ている時代ですから、いろんなことに振り回されてしまいますよね。
そうそう。「自分の機嫌は自分でとる」とよく言いますが、そういうことだと思うんです。コロナで私も相当つらかったし、「どうやったらライブができるんだろう」「あの仕事をどうしよう」とたくさん悩みました。いろんなことも目に入る。でもやり方や考え方を変えて、機転を利かせたら生活が楽しくなりました。
――4月19日(月)には大阪・なんばHatchで『Sakura Fujiwara Live 2021 “SUPERMARKET” at Osaka』が開催されます。とても良い状態で公演に臨めそうですね。
重厚な音のなかで歌うという、とても贅沢なライブをさせていただきます。昨年10月にアルバム『SUPERMARKET』ができたけど、でもずっとライブで届けられていなかった。そのためていた熱を公演でぶつけたいです。
取材・文=田辺ユウキ 撮影=ハヤシマコ

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