『サラ・オレイン Symphonic Concer
t 2021』ライヴ・レポートが到着~時
空を超えた、夢見(Dreaming)の世界へ

2021年4月4日(日)サントリーホール 大ホールにて開催された『サラ・オレイン Symphonic Concert 2021』のオフィシャルレポートが到着した。

サラ・オレインが構成・脚本・演出を担うシンフォニック・コンサートの第二弾がサントリーホール大ホールで開催された。コロナ禍で当たり前な日々が失われ、物事に敏感になり、誰もが共感できる生きてる故の苦しみや喜び、夢や奇跡を音と映像で表現したい、というサラ。
サラの故郷オーストラリア大陸の先住民アボリジナル・オーストラリア人の楽器ディジュリドゥ(Didgeridoo)の音色とサラの語りが時空を超えた空間を創り出す。
過去、現在、未来という概念、始まりも終わりも無いタイムレスな「夢見(Dreaming)」の世界の始まり。
コンサートの幕開けは巨匠エンニオ・モリコーネの名曲〈Nella Fantasia〉。イーリアン・パイプスの郷愁を誘う響きのなか、「私の夢では公正な世界を思い描く。そこでは全ての人たちは平和に、誠実に生きている。空を舞う雲のように、常に自由な魂を夢見る。人間性にあふれる、魂を」とのサラのメッセージが心に残る。
続いてアイリッシュの流れ&復活祭のお祝い、春を愛でるケルト音楽、ダンス音楽の〈Riverdance – Drowsy Maggie〉。サラのヴァイオリンが躍動する。観客の皆様も複雑なリズムをいとわず変拍子に果敢にチャレンジ。完璧な手拍子で盛り上げる。〈Animus〉は女性の中の男性的な面を表現した本人作のヴァイオリン曲。今宵はオーケストラをバックに、ヴァイオリン協奏曲のような響きと躍動感で、サラのヴァイオリニストとしての才能が花開く。
(c)N.Ikegami 
4月4日は、サラにとって色々なアニバーサリーDay。
TOKYO FM, FM Osakaでオンエア中の「Peace of Mind~土曜の朝のサラ・オレイン」が6周年を迎えた。ファンの皆さまの変わらぬサポートを感謝。そしてしばしばトークで登場する「鬼ママ」こと「サラ・ママ」のBirthday !「鬼ママ」=愛情に満ちた母上の誕生日を娘がサントリーホールで祝うとはこれ以上ない親孝行。
さらに、名画『男はつらいよ』フーテンの寅さんを愛するサラならではの、「オリジナル・マスク」紹介の口上は寅さん流に。披露したワケは......昨年NHK「戦争童画集~75年目のショートストーリー~」でご一緒させていただいた山田洋次監督がコンサート会場にいらしてくださった故。「あの日のことを、絶対に忘れない」という思いとともに、この作品は2020年、サラの活動のハイライトとなった。
ヴァイオリン曲が続く。サラの故郷、オーストラリアの第2の国歌ともいわれる〈Waltzing Matilda〉にオーストラリアが生んだ世界的スターAC/DCの〈Thunderstruck〉をマッシュアップした斬新なアレンジにこだわったという。ピアニスト・アレンジャーの宮本貴奈氏のサポートが光る。
続いて1stアルバム『Celeste』に収録された、クラシックの名曲、エルガー作曲チェロ協奏曲に歌詞を付けヴォーカル曲にアレンジした〈Breathe in Me〉。オーケストラのチェロ・ソロによる哀愁に満ち、且つ力強い旋律にリードされたオーケストラの豊饒な響きに乗って、メジャー・デビューの直前に天国へ旅立った父を想い、「あなたは私の中で息づいている」と歌い上げる様は圧巻のひとこと。本公演のハイライトのひとつとなった。
サラが歌手としての第一歩を踏み出したきっかけを与えてくれた作曲家、光田康典氏による『クロノ・クロス』からサラが英語歌詞も手掛けた〈Radical Dreamers〉。「夢見」のテーマに繋がるクロノ・クロスのセリフに合わせた、GOMA氏のディジュリドゥとヴァイオリンを演奏しながらのスキャットのセッションは初の試み。
一部の最後はイギリスの名門レーベルDeccaより依頼を受けた ITVラグビーワールドカップ2019日本大会放送 テーマ曲〈World In Union〉。「こんな時代だからこそ世界がひとつになって、新しい時代に乗り込もう!」というメッセージで前半を終了。
(c)N.Ikegami 
毎回新しい楽器演奏に挑戦するサラの今回のお題は「タイプライター」。ルロイ・アンダーソンが1950年に作曲した、その名も〈タイプライター〉。「あなたの人生の脚本家は誰?」という哲学的なテーマをユーモラスに表現したかったというサラ。自身の人生の脚本をタイプして行く本人だが、次の曲ではコントロールがつかない意外な展開へ。
続いてサラは指揮者にも挑戦。ハイドンの交響曲第45番《告別》のアダージョ。エステルハージ侯への訴えとして次第に舞台袖に消えていく団員たち・・・作品誕生時の逸話を生かしたユーモアあふれる演出。オーケストラの演出や小道具はサラがディレクション。多彩なプログラムを柔軟にサポートする、マエストロ鈴木織衛と東京シティ・フィルハーモニックが、ここではさらにユーモア溢れる演技力をみせてくれた。
(c)N.Ikegami 
(c)N.Ikegami 
ふたたびDidgeridooの神秘的な音色に続いて、海外でも大人気のアニメ『約束のネバーランド』から〈メインテーマ〉と〈イザベラの唄〉。サラ作曲の『軍艦島 世界遺産登録推進映画テーマ曲』〈Shadows of Time〉では、サラが奏でるピアノ演奏とともに、この日のために新たに制作した映像作品を披露。環境問題から現代のヘイトクライムなど、「時の影」を映像と音で表現。
(c)N.Ikegami 
(c)N.Ikegami 
続いては雰囲気を変えて、自由・幸せを歌い上げるジャズ・メドレー〈Feeling Good〉〈Spain〉。〈Spain〉では、本年2月9日に天国へ召されたジャズ界のレジェンド、チック・コリアへ、ヴォーカルの超絶技巧を駆使しオマージュを捧げた。「生きている喜び、この奇跡、この出会いに感謝」の思いを込めて〈Joyful, Joyful〉~ベートーヴェンの第九《歓喜の歌》のソプラノ・パートを熱唱。
(c)N.Ikegami 
RnBからラップ、最後はオペラ歌手顔負けの技巧を披露。そしてプログラム最後は、「あなたはあなたの人生を悔いなく歩んでいますか?」、「自分の人生の脚本家は自分」というメッセージが会場ひとりひとりの心に響く〈My Way〉。オーケストラの壮大な響きが名曲を彩り、感動は最高潮に。
(c)N.Ikegami 
鳴りやまぬ拍手に答えてアンコールは3曲。
美しい桜の映像とともに贈る〈Somewhere Far Away〉。
世界中で愛される坂本龍一の美しい音楽、映画『戦場のメリークリスマス』に英語歌詞をつけ、イギリスのディーヴァ、キャサリン・ジェンキンスとコラボした曲を披露。「どこか遠くで、私たちが知らないだけで、最前線で戦っている人がいる」という内容の歌詞に、医療従事者への感謝を込める。サラが最も好きだという日本語「縁」を歌った〈糸〉、そしてフィナーレは〈Time To Say Goodbye〉。
壮大なテーマ「森羅万象、時、運命、宿命、夢見」そして「ユーモア」を音楽で表現したシンフォニック・コンサートは感謝とともに、再会を願いつつ幕を閉じた。
(c)N.Ikegami 
文=川内寛

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