ワッツ・オン・ブロードウェイ?~B
’wayミュージカル非公式ガイド【20
21年春編】
ブロードウェイが史上初の長期閉鎖期間に入って1年が過ぎた。閉鎖初日からちょうど1年後だった3月12日、劇場街の中心で「We Will Be Back」と題されたサプライズイベントが開催。名だたるブロードウェイスターたちが、ミュージカル史に輝く名曲とともにこのために書き下ろされたその名も《We Will Be Back》を高らかに歌い上げ、近日中の再開を誓った。あまりにも希望に満ちたニュースであり、パフォーマンスもよだれが出そうに素晴らしいので、今号では本文とは特に関係なく随所にこのイベントの動画を挿入していく。
「We Will Be Back」より、まずはダイジェスト。
再開の具体的な日程こそ出ていないものの、ここで「Will」という強めの言葉を使っていることからも、また本連載の更新の度に延長されてきていた閉鎖期間が現時点では前号と同じ「5月30日まで」であることからも、その日が近いことは明らか。現在は劇場関係者専用のワクチン接種施設の準備も進んでおり、うまくいけば初夏から稽古が再開され、9月には劇場が開けられるのではないか、というのが大方の予想のようだ。期待…!
ロングラン作品を毎回3本ずつ紹介する、という当初予定していた形の連載に次号からはきっと戻れると信じて、最後のイレギュラー・トピックとして取り上げるのは、米演劇サイトTheaterManiaによる「An Oral History of the Broadway Shutdown(ブロードウェイ閉鎖の口述記録)」という全7回の連載記事(https://www.theatermania.com/tags/an-oral-history-of-the-broadway-shutdown)。タイトルの通り、閉鎖にまつわる劇場関係者の証言をひたすら集めたもので、なかなかに興味深いのでかいつまんで紹介させていただく。
■日本とも重なる“閉鎖前夜”
新旧様々な作品のキャスト・スタッフから、劇場案内係や演劇評論家、果ては演劇ファンに至るまで。実に幅広い関係者約60人の証言が、時系列に沿って、特に編集されることなく並べられていることの迫力がすごいこの連載。第1~3回では、誰もが神経過敏になってはいたがこれほどの大惨事になるとは思っていなかった2020年1~2月から、楽屋口での出待ち対応ができなくなった3月初旬を経て、ひとりの劇場案内係の感染とNBAのシーズン中断の報がコミュニティ全体に大きな打撃を与えた閉鎖前日までの、各々の“その時の思い”が克明に綴られている。パンデミックの足音がひたひたと迫るなか、誰もが不安と戦いながらもなんとか公演を続けようとしていたのは、ブロードウェイも日本も同じだったのだ。
■それぞれの2020年3月12日
そして第4回、テーマはいよいよ、1か月にわたる公演中止が告げられた3月12日当日に。各人の状況・胸の内ともにあまりにリアルで、全体を通して涙なしには読めない記事だが、なかでもやはり、正式な開幕に向けてプレビュー真っ最中だった作品の関係者の証言は胸に迫る。「スタッフがセットと衣裳を片付けるのを見ながら、1年にわたって必死で取り組んできた作品が片付けられていくような気持ちになりました」――ジョー・ディピエトロ(『ダイアナ』脚本家)。「私たちのやっていることは、初日の幕が開いて初めて“仕事”になります。まだ“仕事”になっていなかった時に止まるというのは、とても不思議なことでした」――ブラッド・オスカー(『ミセス・ダウト』キャスト)。「家族が私のために、“祝・ほぼ開幕!”と書かれたケーキを用意してくれました。悲しかったけれど、ブロードウェイデビューは果たしたと思うことにしています」――サマンサ・ポーリー(『Six』キャスト)。彼女のブロードウェイデビュー作『Six』は、まさにこの日に開幕する予定だった。
■再開への思いが募る最終回
いくつかの公演が記録用の舞台収録を慌てて敢行した3月13~16日がテーマの第5回、感染者と国外脱出者が続出した3月下旬がテーマの第6回を経て、連載最終回のテーマは“その後の1年”。いまだ出口が完全には見えていないなかとあって、希望あふれる最終回とはいかないが、ブロードウェイきっての美魔女女優(私見です)、ジェーン・クラコウスキが私たちの気持ちを代弁してくれている。「演者としてだけでなく、いちニューヨーカーとしても劇場が恋しい。ニューヨークの鼓動の大きな一部である劇場が戻ってくる日が待ちきれません。きっとかつてよりも強く、良くなって戻ってくると思います。本当に愛していると気付くために、待つことが必要な時もあるのです」――今はただ、“待つ時”の終わりが本当に近づいていることを願うばかりだ。
「We Will Be Back」より、『ピピン』の《Magic to Do》。垂涎。
【2021-2022シーズンの新作】
*情報は2021年3月24日時点のもの
『1776』2022年春開始予定
1969年のトニー賞受賞作をD・パウラス演出でリバイバル。米国独立宣言の裏側を描く。
https://www.roundabouttheatre.org/get-tickets/upcoming/1776/
1969年のトニー賞受賞作をD・パウラス演出でリバイバル。米国独立宣言の裏側を描く。
https://www.roundabouttheatre.org/get-tickets/upcoming/1776/
『Caroline, or Change』2021年秋開始予定
2004年のトニー賞ノミネート作品の、2018年にロンドンで好評を得たリバイバル版。
https://www.roundabouttheatre.org/get-tickets/upcoming/caroline-or-change/
2004年のトニー賞ノミネート作品の、2018年にロンドンで好評を得たリバイバル版。
https://www.roundabouttheatre.org/get-tickets/upcoming/caroline-or-change/
『David Byrne’ s American Utopia』2021年9月17日開始予定
ミュージカルに近いコンサート。昨シーズンの公演が好評を博しての再演。
https://americanutopiabroadway.com/
ミュージカルに近いコンサート。昨シーズンの公演が好評を博しての再演。
https://americanutopiabroadway.com/
『Flying Over Sunset』2021年秋開始予定
3人の著名人がLSD(当時は合法)を使用していた事実を元にJ・ラパインが創作する新作。
https://www.lct.org/shows/flying-over-sunset/
3人の著名人がLSD(当時は合法)を使用していた事実を元にJ・ラパインが創作する新作。
https://www.lct.org/shows/flying-over-sunset/
『お熱いのがお好き』2022年開始予定
M・モンロー主演の名作映画をC・ニコロウ(『アラジン』)の演出・振付で舞台化。
M・モンロー主演の名作映画をC・ニコロウ(『アラジン』)の演出・振付で舞台化。
「We Will Be Back」より、『ビューティフル』でもお馴染みの《On Broadway》。興奮。
【2019-2020シーズンの新作】
■閉鎖前に開幕していた作品
『Girl From the North Country』
ボブ・ディランの楽曲がちりばめられてはいるが、作りとしては完全にプレイ。要英語力。
https://northcountryonbroadway.com/
ボブ・ディランの楽曲がちりばめられてはいるが、作りとしては完全にプレイ。要英語力。
https://northcountryonbroadway.com/
■プレビュー中に閉鎖期間に入った作品
「We Will Be Back」より、『ウィズ』の《ホーム》。鳥肌。
【ロングラン作品】
■日本で既に上演された/されている作品
■日本未上演の作品
SPICE
SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。