LUNA SEA バンドとオーディエンスが
一つになって生み出した音楽ライブの
未来、モンスターバンドが見せた渾身
の一撃


2021.3.28 さいたまスーパーアリーナ
LUNA SEAが、昨年12月に真矢(Dr)の新型コロナウイルス陽性判明により延期となっていた『LUNA SEA -RELOAD-』の振替公演を3月27日、28日の2日間にわたって埼玉・さいたまスーパーアリーナにて実施。有観客及び、Streaming +とZAIKOを通して全世界に向けて生配信されたこの公演の2日目の模様をレポートする。
「LUNA SEA、気づけば結成から30年。絶対にまだまだ何かやらなきゃいけないバンドなんだよ」。
第1部の終盤、RYUICHI(Vo)はそうつぶやいた。5人は、強い覚悟を持って今回のステージに立っていた。それは、ロックバンドのライブ、演者とオーディエンスが音楽で一つになって、そのときにしか生まれない劇的な瞬間的空間芸術を体感できる音楽ライブを、絶対に絶やしてはいけないという思いだ。そのためにLUNA SEAが、コロナ禍で止まってしまったかのようないまの音楽シーンの“トリガー”となる。そんな思いのもと、新しい音楽ライブのスタイルに初めて挑戦した1日目。以前のような形でライブができなくても、瞬間的空間芸術が生み出すあの感動をみんなで共有することは可能なんだ。その奇跡的瞬間に、LUNA SEAは2日目にして到達してみせた。名演だった。圧巻だった。さすが、では収まりきらない感動とミラクルを体感した素晴らしいアクト。これがLUNA SEAが“モンスターバンド”と言われる所以。LUNA SEAの歴史を紐解くと分かるのだが、このバンド、苦境にはめっぽう強い。これは、音楽ライブ、エンタテインメント全体が未曾有の困難に直面し、実際にメンバーがコロナ陽性判明で動けなくなるという苦境に立たされた彼らが見せた“渾身の一撃”だ。
「昨夜、隣の人と肩が組めなくても一つになれると分かったから」というRYUICHIの言葉に即され、終演後に最後を締めくくるLUNA SEA恒例の手つなぎジャンプを“エア手つなぎジャンプ”に代えて、みんなで一つになった彼ら。闘いを終え、感極まった真矢はボロボロの男泣き。それにいち早く気づいたINORAN(Gt)が他のメンバーに声をかけると、5人は自然と肩を組み、いままで見たことがないような清々しい、くしゃくしゃな笑顔を見せた。この笑顔が、音楽ライブの未来だと思う。
2日目、第1部。昨日と同じようにメンバー登場は真矢から。みんなが心配していた真矢が長めにスポットを浴びる、このちょっとした演出。他のメンバーやスタッフの深い愛を感じる部分だ。5人が揃ったところで、ライブは「LUCA」で幕開け。「Dejavu」が始まると、観る側も手探りだった1日目とは確実になにかが違う。最初から楽しもうとしている空気が会場を満たし、熱気を生み出している。
場内の映像、配信映像も変わった。観客がサビでジャンプをするとき、心の声で歌うときはカメラは客席を、SUGIZO(Gt)が吹き上がる風と白煙を浴びながらギターを弾きまくる場面などでは、頭上と床下に仕込んだカメラがその姿をダイナミックにとらえていく。前日からまだ24時間も経っていないのに、カメラのアングル、スイッチワークなど、視覚的によりエモーショナルな“ライブ感”を体感できるようにと、新たなライブスタイルに合わせアップデートしてきたところはチームLUNA SEAの凄いところ。
そうして、第1部は昨日と同様、延期になった最新アルバム『CROSS』のツアーをコンパクトにまとめて再現していった。1日目にプレイしなかった「You're knocking at my door」は、オクターブ下でINORANがハモりを入れる上で、RYUICHIが2本のマイクを使い分けてボーカルにエフェクトを加えたり、「PHILIA」ではJ(Ba)が曲中にベース以外にピアノを弾き、「静寂」ではそのJがRYUICHIの歌のバックにポエトリーリーディングを入れるなど、『CROSS』で一段階上のステージに到達した最新のバンドアンサンブル、パフォーマンスをさらにライブで見せつけ、ツアー再開を待ち望むファンの心を大いに高ぶらせていった。
そのなかで「昨日もメンバーと話したんだけど。俺たちとみんなの結びつきは(コロナ禍のなかで)より強固になったなって」と、ふいに観客に向かって話しかけたRYUICHIが「みんなの思いは届いてるから。マスク越しでもさ、“くしゃくしゃ”ってなってるのが分かるんだよな。それ見たら泣きそうになるよ」と新しいライブスタイルを受け入れてくれたファンへの想いを吐露するシーンもあった。そのひと言で、声が出せなくても、暴れられなくても、メンバーにこの思いは届いているんだと、オーディエンスの心が満たされていくのが分かった。
LUNA SEA史上もっとも長い壮大な交響詩「THE ONE -crush to create」のボーカルレスバージョンをBGMに換気休憩を挟んで、ニューバージョンの「月光」をバックにメンバーが再びオンステージ。最新型で攻めた第1部に対して、歴代の代表曲だけでセットリストを構成した第2部が始まった。
オープニングはSUGIZOのトリプルネック、INORANの12弦が織りなすイントロがLUNA SEA屈指の幻想美を生み出す名曲「LOVELESS」。このライブでは2日間とも、あのドイツ語のカウントのあとに見えたものが愛を渇望する世界ではなく、“愛でこの世界は救える”と希望ある未来へ躍動していく、そんな特別な「LOVELESS」だった。そこから「BELIEVE」へ。RYUICHIとINORANが体を近づけて呼吸を合わせ、たっぷり時間を使って合唱できないファンの想いをアクトに込めて披露する。続いて、真矢の“もっといくぞ!”という気迫のこもったドラムでバンドインすると、場内の熱狂は最上級まで駆けのぼる。それでも、新しいスタイルのライブでは場内に歓声は響かない。だが、それを覆すようにRYUICHIが興奮気味に「こんなに静かな会場でも、すっごい熱いんだよね」とこれまでのライブ体験とは違う“熱さ”について伝えると、自分たちもそうだといわんばかりに客席からはひときわ大きな拍手がわき起こった。
この新しいスタイルで、“まだまだいける”、場内がそんな空気に包まれ、みんなでそれをつかみ取ろうと「DESIRE」では下手でJとINORAN、上手でRYUICHIとSUGIZOが熱い掛け合いを繰り広げる。次いで、SUGIZO、INORAN、Jがキャッチーなバックコーラスを入れる「SHINE」では、観客たちがが懸命に腕を伸ばして大きなハンドウェーブを作り、それぞれがいまできるアクションで会場の熱狂をどんどん後押し。「gravity」、「I for You」という美曲を通じて、心の奥底までしっかりと通じあったあと「精神的に壊れちゃう? はみ出してみようか! 埼玉!」というRYUICHIの新しい煽り文句から必殺曲「ROSIER」を投下。しかし観客は“ロージーア!”を歌えない。決して今まで通りではないこの状況下、それでも俺たちなら突破できるという気迫溢れるプレイで5人が爆走モードに入ると、客席が大きく揺れ出す。後半、真矢のドラムブレイクがトリガーとなり、さらに熱狂が増したところで突入した「TONIGHT」。そこに待ち受けていたのは、心揺さぶられる感動空間だった。軽快なギターリフにのせ、ステージを走りまくるメンバーの笑顔。床をバウンスさせながら、必死に手を伸ばすオーディエンス。《感じてるなら 世界の果てで 一つになれる》。――いまこの瞬間、確実にさいたまスーパーアリーナは一つにつながっている。そんな、音楽ライブにしかできない瞬間的空間芸術がもたらす絶頂の至福まで到達してしまった彼らの熱演に、感動で涙が止まらなかった。こうして、LUNA SEAが苦境を見事にはねのけたところで第2部は終了を迎えた。
アンコールが始まっても、LUNA SEAとオーディエンスのつながりは続いていた。SUGIZOがサビを手話で届ける最新曲「Make a vow」は、スマホで青い光を灯す客席も一体となって、医療従事者や最前線で働くフロントワーカーズに向けて感謝の気持ちを届けた。
続いて、メンバー紹介のコーナーが始まると、真矢は自身のコロナ感染体験を通して、いま人類を支えている医療従事者の方々には「頭が上がらない」と話し、続けて「自分はメンバー、スタッフ、みんなの温かいコメントに支えられて助かったので、これからみんなに感謝を返したい」と誓った。Jは、こうしてバンドでライブをやれたことで「止まっていた時間を進めることができたと感じてます。ここから明るい未来に向かって一緒にロックしていこう」と伝えた。SUGIZOは「みんなが灯してくれた青い光、美しかったよ」とファンを讃えたあと「昨日やってつくづく思った。ライブがないと、LUNA SEAのライブがないと生きていけない。もう一つ。命あることに感謝。RYUも真矢も生還してきたけど、俺らもいついなくなるか分からないから」とまくしたてるように言葉を放ち「だからこそ、今この瞬間を完璧に生きましょう。そうして、今はいろいろ困難はあるけど、ここにいるみんなと俺らで、新しい音楽を引っぱっていきましょう」と告げた。それに続けて、INORANは「いろいろあるけど、明るい未来のために音楽は必要。そのためにも俺たちファミリーは全力で音楽鳴らし続けます」と高らかに宣言。そして最後にRYUICHIが「みんな、心の声まだ出しきれてないでしょ?」とやさしく語りかけたあと、「全員でかかってこーい!」と大きな声で叫び、曲は「WISH」へ。いつもの銀テープがなくとも、シンガロングがなくても、音楽で未来に立ち向かおうというメンバーの熱い思いと、それに賛同するファンの思いが、この夜は過去最高に希望感溢れる「WISH」の名演を生み出したのだ。そんなミラクルで観る者の感涙を誘い、音楽に未来の希望があることを刻み込んだあと、今回のライブは「so tender...」で感動的に幕を閉じた。
コロナ禍でのライブの変化にともない、派手な演出や配信ならではの作り込んだギミック、コメント欄を通してのトークなどでファンとの一体感を求めるアーティストが多いなか、今回のライブで、そんなものがなくても、新しいライブスタイルでブレイクスルーを引き起こせることを証明してみせたロックバンド、LUNA SEA。その功績は計り知れない。新しい音楽ライブに未来はあると確信した彼らが終演後、ステージで肩を組んだ姿は本当に頼もしかった。そして、その姿は、世の中の全バンドに、ライブを愛する音楽ファンに「あきらめんな」といっているようにも思えた。
LUNA SEAとしては、これが新しいライブの始まりの一歩。このあと延期していた全国ツアーが再開したら、どんなことになるのか。期待は高まるばかりだ。
彼らが新しい音楽ライブでブレイクスルーしていった『LUNA SEA -RELOAD-』2日目のライブは、3月31(水)までアーカイブ視聴が可能。
また、WOWWOWでは『LUNA SEA -RELOAD-』2日目の模様を再構築した番組が6月にオンエアされることが決定。こちらでは5月から2カ月連続WOWOW✕ LUNA SEA月間として、メンバーの最新インタビュー特番、MV特集、各メンバーのソロライブなどの番組が次々とオンエアされるので、こちらも注目していてほしい。
取材・文=東條祥恵
撮影=田辺佳子、横山マサト

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