3月の「TAKARAZUKA SKY STAGE」お勧
め3作品の見どころ紹介/ホーム・シ
アトリカル・ホーム~自宅カンゲキ1
-2-3 [vol.45] <宝塚編>

おうちをシアトリカルなエンタメ空間に! いま、自宅で鑑賞できる演劇・ミュージカル・ダンス・クラシック音楽の映像作品の中から、演劇関係者が激オシする「My Favorite 舞台映像」の3選をお届けします。(SPICE編集部)
ホーム・シアトリカル・ホーム~自宅カンゲキ1-2-3[vol.45]<宝塚編>
3月の「TAKARAZUKA SKY STAGE」​お勧め3作品の見どころ紹介​ by 藤本真由
【1】『カンパニー-努力、情熱、そして仲間たち-』('18年月組・東京・千秋楽)
【2】『プラハの春』('02年星組・東京)
【3】真彩希帆 1Day Special LIVE『La Voile』('20年)
宝塚歌劇専門チャンネル「TAKARAZUKA SKY STAGE」の3月放送のラインアップより、見逃せない3作品の見どころをご紹介!
【1】『カンパニー-努力、情熱、そして仲間たち-』(2018)
『カンパニー-努力、情熱、そして仲間たち-』('18年月組・東京・千秋楽) ~原作 伊吹 有喜『カンパニー』(新潮社刊)~ (c)宝塚歌劇団  (c)宝塚クリエイティブアーツ
 2021年1月10日から全8回にわたってNHK・BSプレミアムで放映された『カンパニー~逆転のスワン~』は、妻子に捨てられたリストラ寸前のサラリーマン(井ノ原快彦)が、世界的バレエダンサー(宮尾俊太郎)が主演する『白鳥の湖』公演を大入りにするという畑違いのミッションを与えられ、奮闘する物語。劇中で踊られる新解釈の『白鳥の湖』等のバレエ監修を熊川哲也・Kバレエカンパニーが手がけており、本格的なバレエ・シーンも楽しめる作品だった。このドラマと同じ伊吹有喜の小説『カンパニー』を原作にしているのが、月組公演『カンパニー-努力、情熱、そして仲間たち-』である(『BADDY(バッディ)-悪党(ヤツ)は月からやって来る-』と二本立てで上演)。
 脚本・演出を手がけたのは石田昌也。三菱財閥の創業者である岩崎弥太郎を主人公に据えた『猛き黄金の国』(原作は本宮ひろ志の漫画)、吉田茂の懐刀だった白洲次郎が主人公の『黎明の風』など、宝塚においては変化球とも思える題材でたびたび勝負し成功を収めてきている。宝塚版『カンパニー』では、主人公のサラリーマン青柳誠二は妻と死別したという設定になっており、月組トップスター珠城りょうはスーツにリュックサックという姿で登場。みんなが集っての盆踊りのシーンでは、トップ娘役愛希れいかが演じるヒロイン高崎美波が、三波春夫の名唱で知られる「東京五輪音頭」を昭和感たっぷりに歌い上げる。そして、「愛してる」とストレートには言えない日本のサラリーマンに、石田が与えたロマンティックなセリフに大注目! 主人公が無理難題を与えられ、それを何とかクリアすると次の難題が――との描かれ方が毎回おもしろかった連続ドラマ版と、舞台版の盛り上げ方との違いを観るもまた一興。それぞれの作品で流れるチャイコフスキーの「白鳥の湖」の音楽のアレンジの違いも興味深く、ドラマ版を堪能した方も大いに楽しめること間違いなし。
★放送日時:3月23日(23:30)
【2】『プラハの春』('02年星組・東京)
 1968年、チェコスロバキアで起こった変革運動“プラハの春”。自由を求めて闘う人々の姿を見つめる、一人の日本人外交官がいた――。当時、実際に在チェコスロバキア大使館で外交官として勤務していた春江一也は、定年退官後の1997年、自らの体験をもとにした『プラハの春』で小説家デビュー。その作品が原作となっているのが、星組公演『プラハの春』である(『LUCKY STAR!』と二本立てで上演)。脚本・演出を担当したのは谷正純。劇中、チェコスロバキア出身の作曲家ベドルジハ・スメタナの楽曲「モルダウ」も印象的に用い、現代史に刻み込まれた悲劇の一ページをダイナミックに描き出した。星組トップスター香寿たつきが演じる日本人外交官堀江亮介は、反体制活動家のカテリーナ(渚あき)と出逢い、恋に落ちる。学生運動家であるヤン・パラフ(実在の人物)たちの活動も目の当たりにする。だが、堀江はあくまで、異国の地にあって、客観的に見ている他ない外交官である――。そんな男のせつなさを香寿が描き出す。涼やかかつ凛とした声を響かせ、自らの生きる自由を勝ち取りたいと、しなやかな闘いを繰り広げるカテリーナ役渚の好演も光る。“プラハの春”から約20年後の1989年、東ヨーロッパ諸国で共産主義体制が連続的に倒される“東欧革命”が起き、ドイツ・ベルリンの壁は崩壊し、チェコスロバキアでも共産党一党支配が終焉。“カテリーナたち”の闘いはここに終わることとなった。
 ちなみに、この公演の衣装はフランス出身のデザイナー、ジャン=ポール・ゴルチエが担当。マドンナがツアーで着用した“コーンブラ”(ブラジャーの胸の部分がドリルの如く三角形に突き出している)のデザイン等、アヴァンギャルドな作風で知られたゴルチエだが、2020年春夏オートクチュールコレクションを最後に引退を表明している。その彼が手がけたスタイリッシュな衣装をお見逃しなく!
★放送日時:3月13日(14:30)
【3】真彩希帆 1Day Special LIVE『La Voile』('20年)
真彩希帆 1Day Special LIVE『La Voile』('20年) (c)宝塚歌劇団 (c)宝塚クリエイティブアーツ
 2020年、コロナ禍にあって、宝塚歌劇団がホテルにおいて開催するディナーショーも、無観客でのライブ配信を余儀なくされることとなった。その第一弾として昨年9月に配信されたのが、雪組トップ娘役である真彩希帆の1Day Special LIVE『La Voile』である。会場となったのは、昨年6月に新たな地に移転開業した宝塚ホテル。構成・演出は藤井大介が担当している。
 雪組の男役4名と共に登場した真彩は、無観客というハンディを一切感じさせることなく、カメラの向こうの観客に向けて、すばらしい歌と踊り、そしてトークをエネルギッシュに繰り広げていく。『ガイズ&ドールズ』や『ミー&マイ・ガール』、『モーツァルト!』といった名作ミュージカルからのナンバーもあれば、彼女が宝塚音楽学校の試験で歌ったという「松島音頭」の絶唱を披露する場面も。観客からの拍手に促されるということがない中、実にキュートな前振りでアンコール歌唱へとつなげていったシーンも印象に残る。ドレスを着替えるたび、それに合わせて変えてくる髪型&アクセサリーのコーディネートも見事だった。清楚から妖艶まで、聖から俗まで、自由に行き交う真彩の個性が存分に堪能できるこのショーが、今月のタカラヅカ・スカイ・ステージに登場する。
 現在、東京宝塚劇場にて上演中の雪組公演の千秋楽(4月11日)をもって、雪組トップスター望海風斗と共に宝塚を退団する真彩だが、『f f f-フォルティッシッシモ-』では“謎の女”をミステリアスに好演、『シルクロード~盗賊と宝石~』では“宝石”の役どころを演じている。ちなみに、今月のタカラヅカ・スカイ・ステージでは、歴代トップ娘役たちが華やかに繰り広げるディナーショー及びミュージック・サロンが一挙放送されている。トップ娘役たちが、トップスターの隣にいるときとはまた異なる表情、表現を見せる様をお楽しみあれ。
★放送日時:3月21日(21:00)、25日(20:00)、28日(15:00)、30日(24:00) ※4月放送もあり
文=藤本真由(舞台評論家)

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