サザンソウルの完成形とも言える
オーティス・クレイの
圧倒的な傑作『愛なき世界で』
本作『愛なき世界で』について
続くこれまた名曲の「アイ・ダイ・ア・リトル・イーチ・デイ」では、メンフィス・ストリングスが登場(ストリングス・アレンジもミッチェル)し、このスタイルこそがハイ・レコードの特徴的なサウンドである。ジャッキー・ムーアの「プレシャス・プレシャス」はO.V・ライトの名唱が知られているが、クレイのバージョンも負けず劣らずの名演である。ローラ・リーの極め付けの名演で知られる「ザッツ・ハウ・イット・イズ」は、ティーニー・ホッジズのギターとホーンアレンジが素晴らしい。「ホーム・イズ・ホエア・ザ・ハート・イズ」は、シングル曲を集めたクレイの2枚目のアルバム「アイ・キャント・テイク・イット」(’77)にもなぜか収録されている。
ということで、結局どの曲も甲乙付け難い仕上がりとなっていて、これだけレベルの高いアルバムにはなかなかお目にかかれないだけに、聴いたことがない人はぜひ聴いてみてほしい。70年代にこのアルバムと出会った当時の若者たちと同じように、きっとサザンソウルが好きになるはずだ。
代役としての初来日公演
TEXT:河崎直人