坂本冬美×泉ピン子「命がけで上演し
ます!」 『坂本冬美芸能生活35周年
記念公演 泉ピン子友情出演』インタ
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坂本冬美は2021年、芸能生活35周年を迎える。これを記念して東京・明治座にて2021年2月26日(金)から特別公演を開催する。1部は橋田壽賀子作、石井ふく子の演出の芝居「かたき同志」、そして2部ではヒットソングを歌い上げる華やかなコンサートを披露する。今回の公演も2019年の特別公演と同様、友情出演に泉ピン子を迎えて行われる。

今回の公演について坂本と泉がコロナ禍の影響も含めつつ、ざっくばらんに語り合ってくれた。
ーーお二人での共演は2019年の『坂本冬美特別公演 泉ピン子友情出演』以来ですね。
泉:あれ、もう2年前か。こんな事になるなんて誰も想像つかなかったわよね。
坂本:ええ、本当に。大阪公演の後、明治座でやらせていただいて。ついこの間のような気がしますね。
坂本冬美
泉:コロナ禍の影響で公演を中止にした人、さらには役者を辞めた人もたくさんいます。でも誰かが先陣を切って進んでいかないと本当にエンタメが無くなってしまいますから、私たちも命がけで、万全の状態にして上演をしていかないとね。
他の方の公演についてもいくつかご招待をいただくことがあったんですが、私2月から公演があるから、もしどこかで感染してしまったら、公演が中止になってしまいかねないですし、すべて断ってなるべく家から外に出ないようにしていました。ものすごく神経を使います。
坂本:本当に2年前と比べたら全く世の中が変わってしまいましたから。以前なら今日のお客様の入りは~って話をしていましたけれど、今はもう一人でも来ていただけたらありがたいって思いでいっぱいです。この公演をやらせていただけること自体に感謝ですし。ピン子さんがおっしゃっていましたが、私たちも命がけでやっていますが、お客様も命がけで観に来られるんですからね。
泉:なかには今わざわざ観に行かなくても、って話になった時。「泉ピン子はもう歳だからもう観れないかも」っていって観に来る方もいらっしゃいますけどね(笑)。今も家に帰ると除菌を徹底的にしていますから。夫にもはい服全部脱いで、お風呂入れて、家の中でもマスクをして、寝る時も換気扇を常時回して……。昨年は本当に何も楽しいことがなかったです。ずっと家にいたのでインターネット通販を利用することを学びました(笑)。冬美の「ブッダのように私は死んだ」を買って周りの人に配ったりしたわ。
(左から)泉ピン子、坂本冬美
ーー前回の公演についてインタビューをした時は、2部の歌謡ショーのところは「私は出ないから。司会をするだけだから」ってピン子さんがおっしゃっていたのに、いざ本番になったら歌を歌っていらしたので驚きました(笑)!
坂本:あの時「絶対歌わない!」って言うと思っていたんですが、譜面を用意していたんですよ(笑)。
泉:血が騒いじゃってね(笑)。2部にも出ないとお客さんも寂しいと思ったんです。だから今回もお邪魔にならない程度で何らかの形で出ますよ。歌は歌わないけど! 本当は「ブッダのように~」を歌いたいけど、それはこの人が歌うでしょう(笑)?
ーー確かにその曲は坂本さんが歌わないと(笑)。先ほどステイホーム中にネット通販を覚えたって話をしていましたが、他に新しく始めたことってありますか?
泉:YouTubeを見るようになりましたね。「ブッダ」も何万回も再生されているって知ったし、radikoで桑田佳祐さんの番組を聴けることも知ったし、また「夜遊び(桑田佳祐のやさしい夜遊び)」も聴くようになっちゃった! ファンクラブにも入りましたからね。本名で入ったのでバレないと思うけど(笑)。あとはNetflixも観るようになったわね。『愛の不時着』『梨泰院クラス』を見て……あれはダメね。見始めると他のことが何もできなくなっちゃう(笑)。
坂本:このお正月休みは2月からの舞台の台本を覚えなければならないのに、ピン子さんが「今ハマっているものがあるの」って連絡をくださるので「ダメですよ! 台本覚えてくださいね!」って阻止するんですが、私自身もちょっと覚えるのに行き詰まると、気分転換したくなるんです。で、ちょっとNetflixを(笑)。でも私なんか何か月もかけて台本を覚えていかないと身体に台詞が入っていかないのに、ピン子さんは橋田先生の作品のコツがあるのか、簡単に覚えてしまうんです。
泉:それは経験の差ですよ。当時、私は木曜日に『渡る世間は鬼ばかり』の本番があって、金土日に別の2時間ドラマを収録していたんです。そして日曜に帰ってきて、その夜に台本を全部覚える生活をしていたんです。切羽詰まるとやれるタイプなんです。でも橋田先生も同じタイプらしくてお尻に火がつかないと書き始めない人なんです(笑)。
坂本:私は全く逆のタイプですね。準備して準備して……ってしないとできないんです。
(左から)泉ピン子、坂本冬美
ーーさて、そんなお二人が今回出演する舞台について聞かせてください。
泉:この「かたき同志」は以前私が出演した作品なんです、当時と同じ役を今回もやるんですよ。おかめの役を。
坂本:最初ピン子さんが「今回はあなたがおかめをやって、私がお鶴をやったらおもしろいんじゃない?」っておっしゃってくださったんです。それもおもしろそうだなって思ったんですが……。
泉:でも改めて思うと、このお鶴の綺麗なお着物は綺麗な冬美が着なきゃねえ。私ではこの着物は着こなせないわって(笑)。お鶴は呉服問屋のお内儀さんで、のほほんとした性格なので冬美そのまんまですから。おかめは飲み屋のおかみさんでちゃきちゃきしているからやっぱり私がやるほうがいいなって。
ーーこの作品はお互いの息子と娘が恋仲になって親から反対されるという、どこか『ロミオとジュリエット』のようなところもありますね。
泉:確かに。でも本当は子離れがテーマにあるんです。そして橋田先生の作品には本当の嫌な奴は出てこないんですよ。『おしん』も『渡る世間』もそうでしょ?
橋田先生は稽古場や本番には「私行きませんから」って今から宣言しているんです。だって95歳でしょ。何かあったら怖いじゃない? 演出家の石井ふく子先生も94歳ですが。私自身も今回は70歳以上の知り合いには「舞台を観に来なくていいから」って言っているんです。
坂本:劇場も幕間に換気をするなど、きちんとやるべきことはやっているんですけどね。花道も今回ないですし。
泉:以前なら冬美の楽屋に行ってお菓子出してもらってお茶してましたけど、今回はそれもなくなるわねぇ。朝ごはんも別々で食べることになるんでしょうね。あとお客様には検温をしたり、手指の消毒をお願いしたり……劇中に笑ったり、掛け声もかけたらいけないんでしょ?
泉ピン子
坂本:ええ。でも昨年はコンサートを4本しかできなかったんですが、ファンの方も何とか心のキャッチボールをしたいと思ってくれたのか、ボードに「頑張って!」「冬美ちゃん!」ってメッセージを書いて見せてくださるんです。すると不思議と声を出してないのにその方の声が聞こえてくるんです。毎回声をかけてくださる方の声はちゃんと覚えているので、これはあの人の声、これはこの方の声だなって。だから舞台のほうもガッハッハって笑えないけど、マスクの下で笑ったり泣いたりする「声」はきっと聴こえると思うんです。
コンサートの時は手拍子で「パン・パン・パン! パン・パン・パン!」と「ふ・ゆ・み! ふ・ゆ・み!」ってコールしてくださっていたんです。そして、ステージに出ると感染対策で30%から50%の客入れになっていても「こんなにも来てくださって」って感謝の気持ちしかなかったんです。
泉:ようやくコンサートが出来るようになったときの公演のDVDを見たんですが、この人ステージで土下座してましたからね。それを見て思わず感涙してしまいましたよ、気持ちが伝わって。観に来てくださった方々に本当に頭が下がりますよね。ありがたいって。
ーー今回の公演は坂本さんにとって35周年という節目の公演でもありますね。
坂本:通過点のひとつでしかないかもしれませんが、何かお客さまに忘れられないように、そして注目していただけるように命がけでやらせていただきたいと思っています。
泉:千穐楽まで気を抜けないわよね。うがい薬と石鹸を山ほどおいておくわ(笑)。芝居の中でもソーシャルディスタンスを考えて変えていかないとならない演出もあるでしょうし。傍に寄ってはいけないから、二人の立つ、座る位置とか考えないと。とにかく「命がけで」やらないと。私も冬美もコロナに罹らないように気を付けて過ごさないとね。私は自宅のある熱海でも東京でも一人大人しく暮らしますわ(笑)。
(左から)泉ピン子、坂本冬美
取材・文=こむらさき  撮影=寺坂ジョニー

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