[Alexandros]川上洋平、史上初のZoo
mホラー映画『ズーム/見えない参加
者』について語る【映画連載:ポップ
コーン、バター多めで PART2】

大の映画好きとして知られる[Alexandros]のボーカル&ギター川上洋平の映画連載「ポップコーン、バター多めで PART2」。今回は、イギリスで全編Zoomで制作された史上初のZoomホラー『ズーム/見えない参加者』について語ります。
『ズーム/見えない参加者』
結構怖かったですね! 簡単なあらすじとしては、新型コロナウイルスでロックダウン中のイギリスで、男女6人のグループが実際にみんなで集まれないから、ちょっとしたお遊びのノリでZoomで交霊会をやろうよっていうところから始まって。基本的には、その交霊会の参加者のPC画面で展開されていく。そのうちそれぞれの部屋でいろんなことが起こっていくっていう。だから、『search/サーチ』とかに近いですよね。でも『search/サーチ』はかなり作り込まれてましたけど、『ズーム』はインディーズ感がかなりあって。役者さんたちも良い意味で素人感があって、それが逆にリアルでしたね。
『ズーム/見えない参加者』より
■本来の撮影ができない中でも映画を作る熱意が詰まってる
本来の撮影ができない状況でも、火を消さずに何とか映画を作るんだっていう熱意のもとに作られた作品っていうだけで、贔屓目で観てしまいます(笑)。Zoomっていうツールを使って何度も会議をして、キャストもスタッフも安全のために接触せずに撮影を行った。だから、出演者それぞれが撮影監督的な役割も担ったわけですよね。そう考えると、この作品の背景にはものすごいものが詰まってて。[Alexandros]に置き換えると、リモートで作ったアルバム『Bedroom Joule』ですね(笑)。
パンデミックになって『ライト/オフ』とか『シャザム! 』の監督のデヴィッド・F・サンドバーグも、家で奥さんとふたりで過ごす生活を強いられてる中で、家の中だけで3分弱のホラーのショートフィルム『Shadowed』っていう作品を作ったんですよね。主演は俳優でもある奥さんで、セットや演出、編集とかも全部自分たちでやって。そのこじんまりとした感じも好みだったんですが、『ズーム』もそういう手作り感があります。

『ズーム/見えない参加者』より

■ホラー映画にはB級感のある笑いが欲しい
僕はホラー映画が大好きなんですけど、ホラーっていかに絶妙な手法でリアルに見せるかが鍵になってくるジャンルだと思ってるんです。それこそ、クリストファー・ノーラン的なCGを使わず大掛かりな実写撮影をしたから良いってわけでもないし、CGをバリバリに使ってすごく作りこんだ怪物みたいなものが出てくるから良いっていうわけでもない。そういう風にお金をしっかりかけた感じが出てると、僕は逆に冷めちゃったりもするんです。ちょっとチープさのある方が好きで。例えば、僕がすごく好きな『イット・フォローズ』は絶妙なチープ感があってうまいなって思ってたんですけど、『ズーム』もそういう感じがあります。
『カメラを止めるな!』とかは、低予算を逆手に取ってアイディアで勝負したのが良かったわけで。『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』も低予算ならではの良さがありましたよね。あれは続編が作られましたけど、ああいう映画はヒットしたからといって、予算をかけた続編を作らない方が良いと僕は思ってます(笑)。
あと僕は、ホラー映画にはB級感のある笑いが欲しいんです。『ズーム』も、交霊会に招かれた霊媒師の人がいきなり画面から消えた時の「接続のせいじゃない?」ってやりとりだったり、お約束みたいな展開も結構あって。お面を顔認証機能が認証するシーンとか、「なんでそのお面やねん」って感じで笑いたいけど笑えなかったり。そういう安っぽさも含めて楽しめました(笑)。

『ズーム/見えない参加者』より

■ただ怖がらせることを突き通している方が潔い
尺が68分っていうところも良かったです。ホラーってそんなに掘り下げるものでもないと思っていて(笑)。これが1時間半とかになってくると、またいろんな要素が入ってくるんだろうけど、僕はヒューマンドラマの要素は別になくて良くて、ただ怖がらせることを突き通している方が潔くて好きです。
日本の作品でいうと、昔『怪談新耳袋』っていう1話5分くらいのホラードラマがあったんですけど、それも良くて。5分っていう短さなんで「あれは何だったの?」ってもやもやする時間もないくらい、ただ怖いだけでパンッて終わる。そのスピード感が良いんですけど、『ズーム』はその映画版みたいな感じだと思いました。
『ズーム/見えない参加者』より
■説明できないものが相手だとやっぱり怖い
幽霊ってそもそもは動物や人間の霊で。それがなんで人を驚かせようとしてるのかがわかると、腑に落ちたり、親しみが湧く。『呪怨』シリーズとか『リング』シリーズとか、怖いし描写方法もすごいなって思うけど、おばけの正体は元々こういう人間で、こういう理由で恨みを持っていて襲ってくるんだなって納得できたりする。最終的には霊が成仏して、良い話っぽくなる作品もありますよね。
でも無宗教の日本人にとっては、神とか悪魔ってあまり馴染みがない。だから『ヘレディタリー』とか『ミッドサマー』とかは、よくわからない気味の悪さがあって。そういう場合、僕は「神様って良い存在じゃないんだ?」とか思って、圧倒されちゃったりします。魔女とか悪魔が相手だと、何を考えてるのかとか、そもそも感情があるのかないのか想像もつかなくて。だからその存在には感情移入できないし、ただただ恐れおののくって感じで楽しむのは、海外のホラー映画の醍醐味ですよね。
『ズーム』も、その何かを起こしてる正体が霊なのか霊じゃないのかもわからなくて、その正体が明かされない。「これって誰かが作り上げてるの? 何なの?」っていう不気味さがあります。説明できないものが相手だとやっぱり怖いですよね。いくら途中までおもしろくても、最後の最後で異星人の顔や化け物の姿が出てきたりすると、僕は冷めちゃうんですよね(笑)。最後まで何も明かされないところも僕は好きでした。
『ズーム/見えない参加者』より
■霊感が全くないからホラー映画が好きなのかもしれない
比較的最近観たホラーだと、去年観たNetflixドラマの『呪怨:呪いの家』と『透明人間』が良かったですね。『透明人間』は割とお金がかかってると思うんですけど、やり過ぎてない感が良かった。脚本もおもしろいですよね。
僕が今のところ一番好きなホラー映画は、やっぱり『イット・フォローズ』ですね。心理的にすごく怖い。音楽をディザスターピースって元々ゲーム音楽をやっていた人が手掛けてるんですけど、いかにも怖がらせるようなおどろおどろしい曲じゃなくて、シンセが入ったアンビエント系で、神秘的な雰囲気もあるんですよね。それもあって、ちょっとキューブリックっぽいサスペンスタッチも出ていて。形容しがたい怖さをまぶしてくる。
僕は霊感は全くないので、実際に何か霊的な体験をしたことはないんですね。だからこそホラー映画が好きなのかもしれないです(笑)。実際に怖い体験をしてる人は、気軽にホラー映画を楽しめないのかもしれない。

取材・文=小松香里

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