【LAID BACK OCEAN インタビュー】
パンクロックから始まった俺が歌う
繊細な歌を俺自身が聴きたがっている
10 周年のアニバーサリーイヤーを迎えたLAID BACK OCEAN がベストアルバム『色+色』(読み:イロトイロ)をリリースする。既発曲の現メンバーによる新規録音に加えて、新曲「COLOR COLOR」、未発表曲まで収録したCD2枚組全30曲。本作から垣間見れる彼らの軌跡と、今見据えている光景をYAFUMI(Vo)に訊いた。
LAID BACK OCEANでは
JELLY→とは違うものをやりたかった
まずはものすごく基本的なことを抑えておきたいのですが、LAID BACK OCEANが鍵盤奏者をバンドに迎えたのはどうしてだったんですか?
やっぱり大前提としては、JELLY→をやっていて、それが突然終わってしまったと。ただ、そこで終わるわけにいかず、新しいことを始めようとした時に圧倒的に強いものにしたかったんですよね。だから、実はヴォーカルももうひとり入れようとしてて、活動を始める半年前まではツインヴォーカルだったんです。表には出ていないし、最初のライヴの時にはもういなくなっていたんですけど、最初の1年間くらい、曲作りをしている時はもうひとりヴォーカルがいて…まぁ、喧嘩別れみたいになっちゃったんですけど、そのもうひとりのヴォーカルが辞めていく時に“YAFUMIくんは結局、君が持っている重たい荷物を半分持ってくれる人が欲しかったんだと思う。だけど、この1年間一緒にいて、きっとその荷物はYAFUMIくんがヴォーカルとしてひとりで背負わなきゃいかないものだと思ったんで、俺はいないほうがいい”って言われて。だから、JELLY→とは違うものをやりたかったんでしょうね。
なるほど。10数年前は4人編成のバンドが主流だったとは思いますが、考えてみれば、RCサクセションにも↑THE HIGH-LOWS↓にもキーボーディストがいましたし、海外のHR/HMバンドは当たり前のように鍵盤奏者を抱えていましたから、キーボードはもともとロックバンドには必要なものではあったでしょうね。
そういう意味では、すごく新しいスタイルではないけれども、3コードではなく…JELLY→の後期はわりと難しいことをやってきてたんで、その延長線上で、コードのテンションをもう少し細かく追っていけるような楽器を入れることによって、より内面を掘り下げた歌詞を書いていきたいというのが同時にあったんですよね。
今となってみれば、鍵盤に着目するのは早かったですよね。
そうなんですよ。その頃はピアノロックみたいなものはあんまりなかったんですけど、そのあとでゲスの極み乙女。とかが出て来たりして。“あっ、この波に乗れるかも!?”と思ったけど、そうでもなく(笑)。まぁ、それは冗談で、そこは表現するものが本質的に違うんで。
はい。新しいサウンドを模索する上で鍵盤が必要だったというか、鍵盤があったほうが、表現が膨らむという感じだったんでしょうね。
そうですね。JELLY→との差別化ですね。最初の意味合いはそうです。
分かりました。そのLAID BACK OCEANが結成10周年を迎え、2枚組全30曲収録のベストアルバム『色+色』がリリースされます。こうして10年間から30曲をチョイスしますと、必然的にバンドの特徴や個性、さらには軌跡もよく分かりますよね。そんな中、歌のメロディーは、いい意味で変わっていない。全部が全部そうだとは言いませんが、基本はメロディアスでキャッチーです。
そうですね。歌のメロディーの玉数を異様に増やしたりとか、そういう方向には行けなかったのかもしれない。メロディーを複雑にしていったりとか、ヒップホップの要素を入れたり…まぁ、そういうアプローチもあったんですけど、そこら辺はなかなか“変えることができない”という言い方が正しいかもしれないですね。“変えなかった”というよりも。
身体に染み込んでいるものをやるしかないというか。
この10年間、JELLY→(LAID BACK OCEANの母体となった前身バンド)からの流れでよく感じていたことは、ひとりのミュージシャンが大きく何かを変えて表現するのはなかなか難しいと。それは思想も含めて。どんなに違うテーマで歌っていても、こうして並べてみたりすると、やっぱり同じことを歌っているんですよ。それは変わりようがないんだなと。人間はそういうものなのかもしれないですけど、そういうことをすごく感じましたね。
ただね、キャッチーではあるものの、若い頃にはなかった叙情性のようなものは出てきている印象はあります。少し憂いを秘めた感じと言いますか、間違っても米国西海岸のようにはならないですよね。
うん。ならないですよね。それは何なんだろう? 俺の性質なのか、バンドが進んできた道ゆえなのか、それは分かんないなぁ。