ニューエイジ音楽の輪郭が分かる『ニ
ューエイジ・ミュージック・ディスク
ガイド』|EDITOR'S SELECT 013
第13回:書籍『ニューエイジ・ミュージ
ック・ディスクガイド』 by 石丸
ニューエイジ・ミュージックとは
西洋社会における「キリスト教」とも「近代合理主義」とも違う新しい文化原理を探求するカウンターカルチャー、サブカルチャー的思想が大元にあるが、例えば日本では企業の“自己啓発”に繋がっていったり、元々消費社会へのアンチテーゼとして生まれたニューエイジ音楽が、”ヒーリング・ミュージック“シリーズとしてダイソーで100円で売られて大量に商用消費されてしまうなど、このニューエイジ・ミュージックの扱いを追うだけでも、産業社会とそれに対峙、或いは飲み込まれていった概念の縮図が見えてくる。
ディスクガイドの内容
そういった膨らみのある過去をもつニューエイジ・ミュージックを「世界のニューエイジ」「日本のニューエイジ」「テン年代のニューエイジ」「ルーツ・オブ・ニューエイジ」、さらには「俗流アンビエント」「森とニューエイジ」「アニメ・サントラ/イメージ・アルバム」の全7項目に分けてアーカイブしているのがこのディスクガイドだ。
王道のニューエイジ・ミュージックはもちろん、例えば先ほども触れた100円ショップのために大量生産された作者不明のアンビエントCDは近年生まれた新しいカテゴリ「俗流アンビエント」に入れられ、2010年以降Vaporwaveなどのインターネットカルチャーと共鳴して再評価、最新作のリリースが進んでいるニューエイジ・リバイバルは「テン年代のニューエイジ」にまとめられている。
第1チャプターである『世界のニューエイジ』がまず最初に知りたい王道ではあるのだが、本来のニューエイジ思想から大きく離れていわば“ゾンビ”のようになった「俗流アンビエント」は、本流とは違う趣きがあったり、実は一番興味をそそられる存在であったりもした。
また、各チャプターの間には細野晴臣と岡田拓郎の対談、尾島由郎とスペンサー・ドラン(Visible Cloaks)へのインタビューが挿入。更には『「ニューエイジ・ミュージックの」始祖を探して』(江村幸紀)や、『「チル」と「ニューエイジ」の距離、オルタナティブR&B勃興とニュースエイジ/アンビエント再評価の底流』(TOMC)、『クラブシーンで起きたニューエイジ・リバイバル』(動物豆知識bot)などのコラムも掲載されており、ニューエイジの成り立ちから、クラブ、ストリーミングサービスとの組み合わせによって進んだ再評価の背景を探ったり、膨大な視点からニューエイジを知ることができる必見本となっている。
サウンドはシンプルで、しかも歌のあるポップソングとは違ったインストゥルメンタルな音楽という特性上、ジャンル全貌の輪郭の掴みにくいニューエイジだからこそ、このディスクガイドの活字を読んで各作品をマッピングしながら、脳にインプットすることをオススメする。
コロナ禍以降、音楽の趣味が変わった人が多いという話をよく耳にする。自宅で聴きたい音楽を今も探している方や、これを読んで“アンビエント””ニューエイジ”というキーワードに惹かれている方は、是非一度手に取ってみてはどうだろうか。
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