HYDE、ニューシングル「LET IT OUT」
と来るツアーについて語るオフィシャ
ルインタビュー 「自分が嫉妬するよ
うな曲をリリースしていきたい」

ZEPP HANEDA(TOKYO)にて9月に開催された有観客&生配信ライヴ『HYDE LIVE 2020 Jekyll & Hyde』(9月5~7日はAcoustic Day、11~12日はRock Dayと全5公演)を大成功に収めるなど、コロナ禍収束の見通しが未だ立たない状況下ではあるものの、着実に活動の歩を進めるHYDE。そんな彼から11月25日、約8ヵ月ぶりとなる待望のニューシングル「LET IT OUT」が届いた。ヘヴィかつストリート感溢れるサウンド、ライヴでの熱い一体感を彷彿させる、この新たなアンセムの誕生は全ロックファンの心を奮い立たせるに違いない。はたして今作に込められたHYDEの想いとは? 来年2021年にはソロ活動20周年を迎えるHYDEが見つめる先を追ってみたい。

――11月25日に2020年第二弾となるニューシングル「LET IT OUT」がリリースされます。 9月にZEPP HANEDA(TOKYO)で開催された有観客&配信ライヴ『HYDE LIVE 2020 Jekyll & Hyde』のRock Dayで初披露されてもいましたね。
はい。有観客でのライヴ自体がとても久しぶりでしたし、なんとか新曲を届けたかったんですよね。昨年リリースした最新アルバム『ANTI』の流れは年末に幕張メッセで開催した『HYDE LIVE 2019 ANTI FINAL』で自分のなかでは区切りをつけていたので、長い自粛期間明けに新曲をやらないというのはインパクトが無いと思っていて。ただ、すでに曲はできていたんですけど、ライヴ用の準備はまったくしていなかったので、バンドリハーサルは大変でしたね(笑)。
――いつ頃、作られた曲なんですか。
完成したのはたしか8月くらいかな。この曲は久しぶりのシングルにしたかったので気合入ってました。声のニュアンスで印象が変わるから何回もレコーディングしたり、気に入らないところは何度もやり直して。ミックス作業はロサンゼルスのエンジニアと何度もとやり取りしました。時差もあるし音の詳細をメールでやりとりするのは大変でした。それこそリモートワークって感じでしたね。
――今回はHYDEさん、Kuboty(G./ ex.TOTAL FAT)さん、Ali(B./ MONORAL)さん、hico(Key./ 堀向彦輝)さんが楽曲制作者クレジットに名を連ねていらっしゃいます。Aliさん、hicoさんはライヴのバンドメンバーでもありますが、Kubotyさんとは初めてのコラボですよね。
そうですね。何人かの作曲陣に曲をお願いしているんですけど、Kubotyもその1人で。去年の11月頃に彼から届いたデモを形にしていって完成したのが「LET IT OUT」なんです。そのときは僕も忙しかったのですぐには手をつけられなくて、今年になってから「これはいい曲になりそうだな」と思って作業を始めて。もともとは僕のイメージからかゴシック寄りなニュアンスもあったんですけど、構成を大きく変えたことでデモよりもかなりストリート感が出たんですよ。あとメロディも今の自分好みにして、そんなにたくさんやり取りしたわけではないけど、僕のオーダーをKubotyが清書してくれた感じでした。レコーディングでもギターを弾いてもらって。それ以外の細かいところ、ハーモニーだったりドラムのフィルだったりのアレンジは主にhicoにやってもらいました。
――Kubotyさんから届いたデモのどこにいちばん惹かれたんですか。
ギターリフですね。欲しかった雰囲気の曲になりそうだなと思いました。あとコード進行がカッコいいから、メロディー作るのも楽でした。みんなで叫べるような曲でアンセム的な雰囲気が似合うなと思って。
――結果、前シングル「BELIEVING IN MYSELF / INTER PLAY」とはまた、まるでベクトルの異なる曲に仕上がりました。
前回はタイアップもあったので、そのイメージを自分なりに解釈して作ったんですけど、今回はタイアップもないし、とにかくストレートに自分がやりたい曲、自分が海外で挑戦したいと思う曲を作ろう、と。
――これをシングルとしてリリースするというところにもHYDEさんの覚悟と本気を見る思いがします。
僕の覚悟というよりも、レコード会社の覚悟かな(笑)。でも現状、できている曲のなかで今いちばん表現したい曲だと思ったんですよ。アルバムでも1曲目にしたい曲で。だから歌詞の一発目が“Wake it up(目覚めろ)”なんですよね。ひょっとしたら1曲目じゃなくなるかもしれないけど、今のところそういうつもりで作ったので。
――先ほどデモから構成を大きく変えたとおっしゃっていましたが、たしかにちょっとトリッキーですよね。1番と2番ではずいぶん印象が変わって感じられるのが面白くて。
それはリズムの影響でしょうね。1番と2番はメロディは一緒なんだけど、リズムがガラッと変わるんですよ。だから違う印象を受けるんじゃないかな。
――アンセムというキーワード以外で、この曲についてHYDEさんがイメージしていたことなどはあるんでしょうか。
自分以外のバンドメンバーはマスクをしているので、その雰囲気に合う曲を作りたかったっていうのはありますね。正体不明な怪しいルックスなのに「BELIEVING IN MYSELF」みたいな曲を演奏してるのが似合わないというか(笑)。だから「BELIEVING IN MYSELF」のMVにはメンバーの演奏シーンがないんですけど。
――そういうことだったんですね。
もちろんライヴではやるんですけど、セットリストのメインに置きたい楽曲はやっぱりマスクマンがいながらもカッコよく聴こえる曲にしたかったんです。僕のイメージではストリート系でヘヴィ系。
――ホラー感は違うんですか。
マスクをしていて、おどろおどろしいというのは自分のセンスでは違うんですよね。それはSlipknotに任せて(笑)、ライヴ用のマスクを自分でデザインしているときからできあがっていたイメージなんです。ストリート的に怖い感じっていうのは。その感じに似合う音楽でありたいなと思って。なので基本的にはマスクマンが似合う曲っていうのが前提なんです。全部が全部、そうというわけにはいかないですけど。
――つまりマスクマンは今のHYDEさんにとって、とても重要なコンセプトなんですね。
わりと前からアイデアはあったんですよ。やっぱりアメリカのフェスに出るときにはインパクトがほしいじゃないですか。僕らが普通に出ていっても、あとで「ああ、日本人もいたかもね」ぐらいできっと誰も覚えてくれないだろうけど、マスクマンだったらもっと強力なインパクトを残せると思うんですよ。しかもウチのマスクは光るから(笑)、「マスクマン、いたね! 光ってたね!」って。僕からすればマスクマンってある意味、舞台装置なんですよ。海外じゃ大した演出できるわけじゃないからね。アメリカのマネージメントからは「マスクが光っていたら、客はそっちに目が行ってHYDEのことを見ないんじゃないか?」って言われたりもしたけど「いや、俺は負けないから」って(笑)。で、そうなったら音楽もそのバンドに似合ったものであってほしいじゃない? タイアップの関係とかでキャッチーな曲も作るけど、基本的にはこういう曲が僕の王道であって、こういう曲たちでライヴを構成したいなと思ってるんですよね。
――やっぱり一番に考えるのはライヴですか。
はい。
――「LET IT OUT」の歌詞もHYDEさんのライヴの現場を彷彿させるようなものになっていますよね。これはどのように書き進められたのでしょう。
まず僕が言いたいことをバーッと書いて、Aliが英訳してくれるっていういつものパターンですね。そこからどんどんやり取りして、今回も仕上げていきました。
――この歌詞でいちばんHYDEさんが言いたかったことは?
やっぱりタイトルにもなっている「LET IT OUT」(吐き出せ、の意)ですね。僕はタイトルがキャッチーじゃないとイヤだし、タイトルの言葉が楽曲のいい場所に出て欲しい。だから、歌詞の“Just let it out”は結構こだわりました。それこそ、このフレーズだけでメロディが何回も変わりましたから。ここはいちばんのこだわりポイントですね。
――すごく刺さるフレーズですし、コロナ禍という今の状況にもすごく響く言葉だなと思うのですが、そのへんは意識されたのですか。
もちろん意識してます。いろいろ溜まっているだろうから、この曲で声を出して吐き出してほしいっていう気持ちもあるし、コロナ禍が明けてこの曲を演奏したときに「まだ胸は痛いかもしれないけど、辛い状況を乗り越えてきた今、そういうのは全部ここで吐き出そうぜ」「俺たち、一緒に乗り越えたぜ!」ってエモーショナルな一体感を分かち合えるような、そういうアンセムでもあってほしいと思っていて。
――“You are ready now / Gonna start again(準備はいいか / もう一度始める)”にもそうしたHYDEさんの想いが込められていると感じました。ここからもう一回、やり直そうって。
僕自身、何回もやり直してますからね(笑)。だから、やり直すこと自体、なんとも思ってないんですよ。そのたびに僕は何かを掴んで立ち上がるので。コロナもそう。今は僕たち、ダメージを受けていますけど、そんな状況でも何かしらできることはあるし、そこからまた別の何かを始めるチャンスでもある。
――そうしたら、そこからまた始めればいい。
僕は人生、何回でもやり直せると思ってますよ。僕ぐらいの年齢になると、もう歳だからって言う人もいっぱいいるけど、「いやいや、50歳からでも70歳からでもいつでも何でも始められるよ」って。だって30歳で「もう年だからできないや」って思っても40歳の自分から見れば全然そんなことなかったし、それをずっと繰り返していて、僕は始めることにもう終わりがないって結論づけたんです。だからいつだってスタートできるし遅いことはない。
――ちなみに“Better drive this groove that'll make me drop(俺が落ちるぐらいのグルーブをドライブさせてみろ)”と歌詞にありますけど、HYDEさんが落ちるグルーヴってどういうものでしょうか。
なんでしょうね、やっぱりこういう曲じゃないですかね。だって、この曲を誰か他の人にやられたら悔しいもん。「うわ、やられた! カッケぇ〜!」って絶対思う。自分が嫉妬するような曲をリリースしていきたいです、これからも。
――“With your voice aflame(声に炎を灯しつつ)”という一節もHYDEさんならではの表現だなと思いましたが、実際、この曲はそういうイメージで歌われたんでしょうか。
正直言うと、英詞を歌うときはシビアでね。発音と自分の理想とのせめぎ合いですよ。昔に比べたらずいぶん効率はよくなったけど、それでも全パート録るのに1曲に6時間はかかりますからね。この曲に関していえば、もっとかかりましたよ。1日目は6時間で歌い終わっても、あとから聴いて「やっぱりここがイヤ」「ここをもっとこうしたい」ってちょこちょこ、ずっと直していて。結局、4回ぐらい歌い直したのかな? それぐらい曲に思い入れもあったので。あと、この曲って声が妙に目立つんですよ。他の曲はやり直したとしても、そこまでじゃないんですけど、この曲は声がカッコよくないと完成しない曲だったというか。なのでカッコよくなるまで録り直しましたね。
――HYDEさんの思う“カッコいい声”の集大成が今、私たちの聴いているこの歌声なんですね。
そうです、僕の限界です(笑)。でも本当に気に入っていますよ。
――今回のカップリングは中島美嘉さんへの提供曲「GLAMOROUS SKY」をフェス仕様にアレンジしてのセルフカバーですね。
はい。カップリングではちょっと遊ばせてもらうというか……僕にとって海外で勝負したいというのが今いちばんの目標だから、どうしてもそういう曲がメインになるんですけど、そればっかりだとつまらないっていう人もいると思うので、カップリングでは日本のファンが喜んでくれそうなことをやりたいなと思って。これからもそういう要素は大事にしていきたいって考えてます。
――MVも拝見しましたが、かなりザラッとした質感の、まさにストリート色全開な映像が新鮮でした。
MVはもう、いかにウチのバンドメンバーがワルいヤツらかってことを表現したかった(笑)。それだけです。僕はやっぱりロックは悪くあってほしいので、その感じを存分に味わってもらおう、と。
――映像監督のISSEIさんとは初タッグですね。
僕はラップはできないけど、ああいったヒップホップ系の要素は音楽的に入れたいんですね。そういう匂いが少しでもあるとストリート感じも出しやすいので、ふだんからよく聴いてはいるんですよ。ISSEIさんはそういうヒップホップ系のアーティストをメインに大阪中心に活動している方で。いろんな方の映像作品を拝見したなかでもすごくよかったので、この人にお願いしてみたいなと思ったんです。真夏のめちゃめちゃ暑い時期に倉庫みたいなエアコンもないスタジオで撮ったんですけど(笑)、すごくいいものができましたね。ISSEIさん自身がカメラを回して撮った映像なんですけど、これまでにない雰囲気があると思います。
――さて2021年はソロ活動20周年のアニバーサリーイヤーを迎えられますが、その幕開けとしてツアー『HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE』の開催が告知されました。神奈川・ぴあアリーナMMを皮切りに7都市11公演でアコースティックライヴを行なうそうですね。
ぴあアリーナMMを今年開催予定だったツアーのファイナルにしようと思って、押さえておいたんですよ。コロナ禍でツアーがなくなってからも、そこだけはキープしていたんです。“HYDE LIVE 2020 Jekyll & Hyde”も無事成功しましたし、せっかくだから、ぴあアリーナMMで“Jekyll & Hyde” Acoustic Dayの拡大版みたいなライヴができればなって。“Jekyll & Hyde”のときは東京在住以外の人は来られなかったけど、感染対策をしっかりすれば他の地方でもやれるという手応えも得られたので、急遽地方の会場も探してもらってツアーという形を取ることにしたんです。
今回のツアーは、映画でいう『Episode.0(エピソードゼロ)』っていう設定で、この『Episode.0(エピソードゼロ)』から物語は始まり、『Episode.1』となる“ANTI”につながっていく。ここから僕たちは始まったんだ、という、つまり僕の世界観の始まりの物語が今回のツアーなんです。ツアータイトルの“ANTI WIRE”は、アンプラグドと同じで、“アンチ・ワイヤー=コードレス”という意味です。
そして、今回のライヴでみんなに感じてもらいたいのは、アコースティックだからって静かな曲ばっかりじゃなく、声を出さなくてもここまで騒げるんだ、というところ。たぶん、他のアコースティック・ライヴではこんなに騒げないと思うから、“声を出さずに騒げるアコースティック”、そこを観て、体感して欲しいですね。あえて着席して観てもらうことを選んだのでこれまでスタンディングで来れなかった人にもお勧めします。
――楽しみです。他にも20周年記念で何か構想されていることなどは?
とはいえ、まだこの状況下ではやれることは限られてくるでしょうね。でも次のアルバムに向けて曲は作っているので、例えば毎月1曲ずつ新曲を発表するとか、そういうことをやりたいなとは考えているんですけど。
――それは実現してほしい! 次にどんな曲が届くのか、すでにとても楽しみですが。
次はたぶん王道っぽい、もうちょっとHYDEっぽさを感じる曲になるんじゃないかな。
――でも“HYDEさんっぽさ”ってかなりバリエーション豊富じゃないです?
そうかもね。でも「LET IT OUT」は僕の曲のなかでもちょっと新しいんじゃないかな。ヘヴィなギターがメインで合唱系というのは。
――たしかに。今のところ楽曲はどれぐらいできているんでしょう。
曲自体はあと2~3曲でアルバムは揃うんですけど、レコーディングがまだできてないんですよ。
――レコーディングは日本でなさるんですか。
そうなるでしょうね。この状況だとアメリカでやるのは難しいかな。
――でも日本でレコーディングして、アメリカに対抗できるサウンドが作れたらカッコいいですね。
そこがいちばん重要なところですよね。そうしたいと思って今、頑張っているところなので、ぜひ楽しみにしていてほしいと思います。
取材・文=本間夕子

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