「ワンダフル・トゥナイト」
「レイ・ダウン・サリー」を収録した
エリック・クラプトンの
『スローハンド』
461以降のアルバム
続くライヴ盤『エリック・クラプトン・ライヴ』(’75)は、彼のルーツであるブルースとブラインド・フェイス時代の曲を中心に選曲されているのだが、これは制作側の意図によるものである。このライヴは74年と75年のクラプトン・バンドによる初ツアーの模様を収めたもので、実際には「アイ・ショット・ザ・シェリフ」「レイラ」「クロスロード」「バッジ」なども演奏されている。クラプトンはザ・バンドのロビー・ロバートソンが得意とするピッキング・ハーモニックスを使って弾いている曲もある。
続く『ノー・リーズン・トゥ・クライ』(’76)は、クラプトンがリスペクトするザ・バンド全員やボブ・ディランがゲスト参加したことで大きな話題となったアルバムであるが、他にもジェシ・デイヴィス、ビリー・プレストン、ロン・ウッドら豪華なメンバーが加わっており、内容も素晴らしい。ここにきて、クラプトンは思い描いたサウンドを具象化できるようになったのではないだろうか。
本作『スローハンド』について
本作に収録されているのは全部で9曲。トータルで40分にも満たないが冒頭の「コカイン」から「ワンダフル・トゥナイト」「レイ・ダウン・サリー」と名曲が続き、ライヴ時に人気の高いマーシー・レヴィが歌う「ザ・コア」などが収められている。「ネクスト・タイム・ユー・シー・ハー」や「メイ・ユー・ネバー」といったフォーキーな小品では、リラックスしたクラプトンのヴォーカルがいい味を出している。また、曲によってはキング・クリムゾンのメル・コリンズがサックスで参加しキレの良いプレイを披露している。
プロデュースはストーンズやイーグルスなどイギリスやアメリカを問わず数多くのアーティストを手がけるグリン・ジョンズ、録音はロンドンのオリンピック・スタジオで、ロンドン録音はデビューソロアルバム以来となる。
2012年には本作の35周年記念デラックス・バージョンが2枚組でリリースされた。ところが、ボーナスディスクのライヴ盤は、オリジナル盤がリリースされる前に行なわれたコンサートのため、残念ながら本作収録のナンバーは一曲も収められていない。
TEXT:河崎直人